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その16
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納屋を出たサージ達は宿屋の母屋に向う。宿泊についての交渉は既に成立しており、二人部屋一つと個室を確保していた。
彼らの真の目的はジェダ討伐なので、部屋の確保は一つでも良かったのだが、一般的に夫婦間には夜の営みがある。監視の目がある以上、怪しまれないために夫婦の部屋と連れの部屋は別々にする必要があったのだ。
「夫婦水入らずの二人きりになれましたね」
「そうだな・・・」
部屋に入り旅装を解いたとローザは悩ましい声でサージに告げると、そのまま抱き着きながら寝台へと誘導する。それは演技にしては迫真に満ちていた。ミリアの不安は時を移さず的中したのである。
サージは知る由もなかったが、ローザとミリアの関係は少々複雑だった。ローザにとってミリアは上司であり、打倒ジェダにおいても同志と言えた。
だが、それはローザの公の部分である。個として、一人の女として彼女は自分とミリアは対等な関係だと思っている。なので、サージと男女の関係になろうと彼が受け入れたのならば、ミリアに文句は言われる筋合いはないと信じていた。色事に余計な遠慮は無縁であると。
「・・・」
サージが抵抗を示さなかったので、ローザが覆い被さる形で二人は寝台の上で見つめ合う。特に下側になったサージはローザから零れた髪が顔を撫で、成熟した女の体臭が鼻の奥を擽る。更に彼女は自身の薬草の知識に基づいて性欲を刺激する香水を使用していた。並の男ならこの時点で理性が本能に駆逐されていただろう。
「あの・・・迷惑でしたか?」
しばらくお互いの顔を見つめていた二人だったが、先に根負けしたローザがおずおずといった具合に問い掛ける。彼女からすれば、サージがいつまでも受身でいるのは想定外なのだ。
「いや、なかなか迫真の演技だと思っていたところだ。ここまでするのだなと」
「いえ・・・わりと本気だったのですが・・・サージさんがその気になって頂ければ私も言い訳が出来ますし・・・任務上、私もご無沙汰でして・・・」
サージの冷静な言葉にミリアは力なく答える。彼女からすれば自身の女としての魅力を否定されたにも等しかった。
「そういうことか・・・まあ、俺も男女の楽しみがあるのは知っている。正直に言えば、その大きな胸の感触を調べてみたいとは思っていた・・・」
「あ、あん!」
そう告げるとサージは自分の身体に押し付けられていたローザの胸を両手で包むようにして押し上げ、艶のある吐息を吐かせる。
「うむ、悪くないな・・・だが、ミリアが馬車の中で待機しているのに俺達だけが楽しむのはな・・・それに先程、釘を刺されていたようだが?」
「ギルドの序列では上ですし、個人的には彼女を尊敬していますが、私にも女の嗜みがありますから。ですが・・・やはりサージさんはマイスターミリアのことを・・・」
サージがやっとその気になったと一瞬だけ喜色を表わしたローザだったが、その口から出された言葉に落胆を隠せなかった。
「なるほど、そういうことか。お前もなかなか図太いな。しかし、誤解だ。俺もミリアの戦闘力は買っているが、女として特に気に入っているわけではない。単に一人だけ馬車に隠れさせているのが心苦しいだけだ」
「え! そうなのですか? てっきりマイスターミリアに遠慮しているのかと・・・では、馬車で待機している彼女には・・・後で何かしらの埋め合わせをすることで、よろしいのでは? 宿の外には監視の眼もありますし、私達が夫婦に相応しい営みをするのは、むしろ理に適っているかと!」
心に決めている女性がいるなら身を引こうとしてローザだったが、サージの返答に再び女として復権を賭けて攻勢を強める。
この男の価値観を常識で図るのは難しいが、事実や物事を正確に受け取る、あるいは伝えるべきだと捉えているのだろう。返答に対してはかなり誠実である。理を解けば合理的な判断を下す可能性があった。
「確かに・・・そうだな」
ローザの目論見は見事に成功し、サージはこれまでの考えを改めて肯定的に頷く。
「では!」
サージの気が変らない内とばかりにローザは彼の上に馬乗りになったまま腰帯を外す。当初は簡単にサージを誘惑出来ると思っていた彼女も、この頃にはかなり本気になっていた。意図せずにサージは男女の駆け引きの勝者になっていたのである。
「お姉さま! そろそろ下に行きましょう!」
その気になった二人だが、ドアを叩く強いノックの後にリーザの声が部屋の外から投げ掛けられた。旅装を解いた後は一階で昼食を摂る予定だったのだが、二人がなかなか現れないので見に来たのだ。
「残念だったな・・・」
そう口にしながらもサージは特に残念そうに見えない苦笑を浮かべる。
「もう・・・」
ローザは不満の声を上げるが、観念したように寝台から降りると外したばかりの腰帯を結び直す。せっかくサージを口説いた彼女だが、妹がドアの外で待っている状態で〝こと〟を営む気には成れなかったのである。
彼らの真の目的はジェダ討伐なので、部屋の確保は一つでも良かったのだが、一般的に夫婦間には夜の営みがある。監視の目がある以上、怪しまれないために夫婦の部屋と連れの部屋は別々にする必要があったのだ。
「夫婦水入らずの二人きりになれましたね」
「そうだな・・・」
部屋に入り旅装を解いたとローザは悩ましい声でサージに告げると、そのまま抱き着きながら寝台へと誘導する。それは演技にしては迫真に満ちていた。ミリアの不安は時を移さず的中したのである。
サージは知る由もなかったが、ローザとミリアの関係は少々複雑だった。ローザにとってミリアは上司であり、打倒ジェダにおいても同志と言えた。
だが、それはローザの公の部分である。個として、一人の女として彼女は自分とミリアは対等な関係だと思っている。なので、サージと男女の関係になろうと彼が受け入れたのならば、ミリアに文句は言われる筋合いはないと信じていた。色事に余計な遠慮は無縁であると。
「・・・」
サージが抵抗を示さなかったので、ローザが覆い被さる形で二人は寝台の上で見つめ合う。特に下側になったサージはローザから零れた髪が顔を撫で、成熟した女の体臭が鼻の奥を擽る。更に彼女は自身の薬草の知識に基づいて性欲を刺激する香水を使用していた。並の男ならこの時点で理性が本能に駆逐されていただろう。
「あの・・・迷惑でしたか?」
しばらくお互いの顔を見つめていた二人だったが、先に根負けしたローザがおずおずといった具合に問い掛ける。彼女からすれば、サージがいつまでも受身でいるのは想定外なのだ。
「いや、なかなか迫真の演技だと思っていたところだ。ここまでするのだなと」
「いえ・・・わりと本気だったのですが・・・サージさんがその気になって頂ければ私も言い訳が出来ますし・・・任務上、私もご無沙汰でして・・・」
サージの冷静な言葉にミリアは力なく答える。彼女からすれば自身の女としての魅力を否定されたにも等しかった。
「そういうことか・・・まあ、俺も男女の楽しみがあるのは知っている。正直に言えば、その大きな胸の感触を調べてみたいとは思っていた・・・」
「あ、あん!」
そう告げるとサージは自分の身体に押し付けられていたローザの胸を両手で包むようにして押し上げ、艶のある吐息を吐かせる。
「うむ、悪くないな・・・だが、ミリアが馬車の中で待機しているのに俺達だけが楽しむのはな・・・それに先程、釘を刺されていたようだが?」
「ギルドの序列では上ですし、個人的には彼女を尊敬していますが、私にも女の嗜みがありますから。ですが・・・やはりサージさんはマイスターミリアのことを・・・」
サージがやっとその気になったと一瞬だけ喜色を表わしたローザだったが、その口から出された言葉に落胆を隠せなかった。
「なるほど、そういうことか。お前もなかなか図太いな。しかし、誤解だ。俺もミリアの戦闘力は買っているが、女として特に気に入っているわけではない。単に一人だけ馬車に隠れさせているのが心苦しいだけだ」
「え! そうなのですか? てっきりマイスターミリアに遠慮しているのかと・・・では、馬車で待機している彼女には・・・後で何かしらの埋め合わせをすることで、よろしいのでは? 宿の外には監視の眼もありますし、私達が夫婦に相応しい営みをするのは、むしろ理に適っているかと!」
心に決めている女性がいるなら身を引こうとしてローザだったが、サージの返答に再び女として復権を賭けて攻勢を強める。
この男の価値観を常識で図るのは難しいが、事実や物事を正確に受け取る、あるいは伝えるべきだと捉えているのだろう。返答に対してはかなり誠実である。理を解けば合理的な判断を下す可能性があった。
「確かに・・・そうだな」
ローザの目論見は見事に成功し、サージはこれまでの考えを改めて肯定的に頷く。
「では!」
サージの気が変らない内とばかりにローザは彼の上に馬乗りになったまま腰帯を外す。当初は簡単にサージを誘惑出来ると思っていた彼女も、この頃にはかなり本気になっていた。意図せずにサージは男女の駆け引きの勝者になっていたのである。
「お姉さま! そろそろ下に行きましょう!」
その気になった二人だが、ドアを叩く強いノックの後にリーザの声が部屋の外から投げ掛けられた。旅装を解いた後は一階で昼食を摂る予定だったのだが、二人がなかなか現れないので見に来たのだ。
「残念だったな・・・」
そう口にしながらもサージは特に残念そうに見えない苦笑を浮かべる。
「もう・・・」
ローザは不満の声を上げるが、観念したように寝台から降りると外したばかりの腰帯を結び直す。せっかくサージを口説いた彼女だが、妹がドアの外で待っている状態で〝こと〟を営む気には成れなかったのである。
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