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その17
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「あの噂はほぼ間違いないようですね」
西の空が朱に染まり頃、ローザは通りを歩くサージの左腕へ自身の身体に押し付けながら彼の耳元で囁いた。あの噂とはジェダと公爵令嬢との縁談話のことである。
彼らはこれまで情報収集のために、商材を売り込む体を装って町の各地を回っていた。監視の眼はあるが、旅商人なら訪れた町で商機となる噂を集めるのは当たり前の行動だ。むしろ宿屋で縮こまっている方が不自然だろう。
この調査によってサージ達は町の衛兵の大まかな数と手配場所、そして問題のジェダと公爵令嬢との縁談話が信憑性の高い噂であることを確認している。これはこの国が大いなる脅威に晒されていることを意味していた。
「そのようだ。さっさと片付けてしまうに限るな!」
「頼もしいことです」
サージの返答にローザは期待を込めて頷く。正直に言えば彼女はサージの実力を測りきれていなかった。彼が極めて高い魔法適性を持つことまでは理解出来たが、それがどの程度なのかは未知だった。あまりに自分と実力差がありすぎて感覚が掴めないのである。
それがこの男に惹かれた理由でもあるのだが、断言出来る評価としては、ミリアがサージを同格かそれ以上と認めているので、マイスター級の実力を持っているのは間違いないということだ。
もっとも、マイスター級二人掛かりでも〝緋色のジェダ〟討伐は、荷が重いと言わざるを得ない。バンパイアは死を超越した存在であり、物理的魔法的にも強靭ながら、更に厄介なのは眷属を増やすことで組織的に活動し〝数〟の力も保有していることだ。
そのために自分とリーザはジェダの警戒網に掛からないギリギリの位置で監視を続けていたのである。いつかギルドが打倒ジェダに動くその時に、少しでも有利となる情報を手に入れるために。
そんなジェダ討伐をサージはまるで裏庭の粗大ゴミを処分するように言い放っている。これは歳月と心血を注いで監視を続けていたローザ姉妹にとっては下手をすると侮辱に聞こえる可能性があった。
しかし、ローザはサージの言葉に憤ることなく自然に受け入れていた。良く分からないが、この男なら本当にそんな程度なのかもしれないと。
「ちょっと、あんた! お姉さまの前だからって何調子に乗ってんのよ!」
だが、リーザの方は黙って見過ごすことが出来なかったようだ。二人の後に付いていた彼女はサージの言葉を質の悪い冗談として詰問する。
「別に調子になど乗っていない。何なら今から俺一人で始めてしまうか・・・それが一番手っ取り早いしな!」
「い、いえ! それにはおよびません! 予定通りと行きましょう! リーザ! 無駄な勘繰りは無用です!」
サージの呟きにローザが慌てて宥めるように説得する。この男の言葉に冗談はないのだ。
「・・・とはいえ、あっちがその気ではな!」
ローザの言葉にサージはどこか楽しげに背後に視線を送る。彼らがこれまで歩んでいたのは町の大通りだったが、気付けば周囲の人影はすっかり消えている。更に日没にはまだ猶予があるはずだったが、遠くの山が影となって周囲は夜の帳が一足早く降りつつあった。
「早く宿に戻り・・・」
サージの警告によって異常を理解したローザはミリアとの合流を示唆しようとするが、それを遮るように通りの辻から黒い人影が現れる。フード付きのマントで顔を隠しているが、体格は並の人間を上回っており、零れ出る敵意は剥き出しだった。
西の空が朱に染まり頃、ローザは通りを歩くサージの左腕へ自身の身体に押し付けながら彼の耳元で囁いた。あの噂とはジェダと公爵令嬢との縁談話のことである。
彼らはこれまで情報収集のために、商材を売り込む体を装って町の各地を回っていた。監視の眼はあるが、旅商人なら訪れた町で商機となる噂を集めるのは当たり前の行動だ。むしろ宿屋で縮こまっている方が不自然だろう。
この調査によってサージ達は町の衛兵の大まかな数と手配場所、そして問題のジェダと公爵令嬢との縁談話が信憑性の高い噂であることを確認している。これはこの国が大いなる脅威に晒されていることを意味していた。
「そのようだ。さっさと片付けてしまうに限るな!」
「頼もしいことです」
サージの返答にローザは期待を込めて頷く。正直に言えば彼女はサージの実力を測りきれていなかった。彼が極めて高い魔法適性を持つことまでは理解出来たが、それがどの程度なのかは未知だった。あまりに自分と実力差がありすぎて感覚が掴めないのである。
それがこの男に惹かれた理由でもあるのだが、断言出来る評価としては、ミリアがサージを同格かそれ以上と認めているので、マイスター級の実力を持っているのは間違いないということだ。
もっとも、マイスター級二人掛かりでも〝緋色のジェダ〟討伐は、荷が重いと言わざるを得ない。バンパイアは死を超越した存在であり、物理的魔法的にも強靭ながら、更に厄介なのは眷属を増やすことで組織的に活動し〝数〟の力も保有していることだ。
そのために自分とリーザはジェダの警戒網に掛からないギリギリの位置で監視を続けていたのである。いつかギルドが打倒ジェダに動くその時に、少しでも有利となる情報を手に入れるために。
そんなジェダ討伐をサージはまるで裏庭の粗大ゴミを処分するように言い放っている。これは歳月と心血を注いで監視を続けていたローザ姉妹にとっては下手をすると侮辱に聞こえる可能性があった。
しかし、ローザはサージの言葉に憤ることなく自然に受け入れていた。良く分からないが、この男なら本当にそんな程度なのかもしれないと。
「ちょっと、あんた! お姉さまの前だからって何調子に乗ってんのよ!」
だが、リーザの方は黙って見過ごすことが出来なかったようだ。二人の後に付いていた彼女はサージの言葉を質の悪い冗談として詰問する。
「別に調子になど乗っていない。何なら今から俺一人で始めてしまうか・・・それが一番手っ取り早いしな!」
「い、いえ! それにはおよびません! 予定通りと行きましょう! リーザ! 無駄な勘繰りは無用です!」
サージの呟きにローザが慌てて宥めるように説得する。この男の言葉に冗談はないのだ。
「・・・とはいえ、あっちがその気ではな!」
ローザの言葉にサージはどこか楽しげに背後に視線を送る。彼らがこれまで歩んでいたのは町の大通りだったが、気付けば周囲の人影はすっかり消えている。更に日没にはまだ猶予があるはずだったが、遠くの山が影となって周囲は夜の帳が一足早く降りつつあった。
「早く宿に戻り・・・」
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