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その18
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「は、はくしゃぐ様が・・・あなだ方と・・・お、お会いしたいと・・・も、申されていま・・・ず」
ローザ達を隠すように前に出たサージにマントの人影は慇懃に伝える。もっとも内容こそ丁寧だが、その声はたどたどしく、酷く擦れており耳障りである。蛙のげっぷの方がまだましだろう。
「ふっ、客として招きたいなら、もっとましな使者をよこすべきだろう。犬をよこすなんて俺でもしないぞ!」
「ガッフゥゥ!!」
サージの嘲笑を交えた返答に人影は怒りの唸り声を上げると、もう隠す必要はないとばかりにマントを脱ぎ捨てる。そいつの身体は全身を剛毛で覆われており、頭部には狼のそれが巨大な顎を備えて生えていた。
爛々と黄色に光る双眸が印象的で、そこには知性を否定するような狂気に満ちている。一見すると大柄な狼が後ろ脚だけで立っているようにも見えるが、肩と上半身の造りは人間に似ており、純粋な狼とは異なる姿をしていた。
この狼と人間の中間的存在は、一般的に狼男と呼ばれる怪物である。いち早く、その正体を看破したサージはそれ故に犬と蔑んだのだ。
「そろそろ準備は整ったか?」
既に長剣を抜いて身構えていたサージは狼男にからかうように告げる。元々、体格に優れる人影だったが、正体を現わしたことで内側から溢れるように筋肉が盛り上がり、今では小山のような大きさとなっている。常人からすれば、長剣もこの狼男を前にしてはペーパーナイフ程度に見えたことだろう。
「グルアァァ!!」
自分からすれば矮小な人間に〝コケ〟にされたと受け取った狼男は雄叫びを上げる。主人であるジェダからはサージ達を連れて来いと命令されていたが、標的は三人である。一人くらいは食い殺しても構わないと判断したのだ。
「サージさん!!」
「来た!!」
「ふっ! 離れていろ!」
見守っていたローザとリーザの悲鳴を合図にして、狼男は五尋もの間合いを一瞬で詰めるとサージに食らいつこうと襲い掛かる。それに彼は短い笑みで答えると、縦一文字に長剣を振り被る。姉妹もサージの警告を受けて、素早く後ろへと飛び退いた。
次の瞬間、雷光にも似た一刀は敵の質量に負けることなく狼男の頭を溶けかけたバターのように両断し、その巨体を地面にひれ伏させた。
「これで死んでないのか・・・頑丈だな。まあ、俺には丁度良い・・・ワーグの時は首を落とすのを横取りされてしまったからな!」
敵の巨体を避けるためというよりは、返り血を嫌って前回り受身で距離を取ったサージは首元まで真っ二つにされながらも立ち上がろうとする狼男に告げる。
「ア、ガッ!!!」
本能的に狼男はこの場から逃れようともがくが、それが許されるはずもなくサージによって野太い首が長剣によって落とされる。血に飢えた獣の黄色く光る瞳孔は即座に黒く鈍り、更には小山のような身体も徐々に縮んでいき、後には裸の男の遺骸が残された。
狼男はライアンスロープとも呼ばれる怪物で〝混沌〟の加護あるいは呪いを得た人間が変化した存在である。本来なら非常に高い肉体再生能力を保有しており、その身体を傷付けるには魔法か銀の武器が必要とされているのだが、サージは自身の魔力で肉体だけでなく獲物である長剣も強化している。そんな怪物も彼の前には脅威とはなり得なかった。
「・・・強い・・・」
恐るべき狼男をほぼ一太刀で屠ったサージに対して、リーザは感じたままの事実を口にする。これまでは現実を見ずに大口を叩く男だと思っていたが、視野が狭いのは自分の方だったと思い知らされたのである。
「この程度の相手で感心されてもな・・・ふふ」
リーザの言葉にサージは狼男など朝飯前とばかりに鼻で笑いながら答える。
「・・・」
「サージさん、ありがとうございます。お見事でした! ですが、ここでのんびりしているわけには!」
狼男の脅威から救われたことに感謝しながらも、ローザはサージに次の行動を促す。彼女は絶句するリーザとは違い、サージの実力を未知数ながらも信じていたので、目の前で繰り広げられた圧倒的な勝利と大言にも順応出来たのである。
「そうだな、こちらの正体がバレているようだし、このままに一気にジェダを討ち取りに行くぞ!」
「い、いえ! 違います! まずはマイスターミリアと合流を!!」
その実力のためか、常識から外れているサージの考えをローザは慌てて訂正する。策が失敗したのなら戦力の収束を図るのは基本中の基本と言えた。
「ん!? ミリアなら一人でも大丈夫だろう?」
「・・・実は・・・ジェダとマイスターミリアには因縁があるのです! まずは彼女の安否を確保しましょう! お願いします!」
「た、頼むよ! サージ!」
サージからすればミリアを信用しての発言だったが、ローザは説得するために切り札を出し、リーザも素直に懇願する。
「・・・そう言えば・・・そんなことを言っていたな。まあ、良いだろう!」
「既にご存じでしたか! お願します!」
「ありがとう! サージ!!」
ミリアがジェダとの因縁をサージに打ち明けていたのはローザ達にとっては初耳だったが、当のサージはあっさりと受け入れる。ミリアの身を案じたというよりは、どのような因縁なのか興味を持ったのだと思われた。
もっとも、姉妹からすればサージが協力的になってくれたのである。不満などあるはずもなく感謝を口にする。
「では、ミリアと合流するとしよう! 遅れるなよ!」
「もちろんです!」
「了解!」
目的が決まればサージは迅速だった。〝錬体術〟を駆使して宿屋に向けて走り出して、その後ろにローザ達も続く。諜報活動がメインの姉妹だが、それでも〝スレイヤー・ギルド〟の正規メンバーである。サージの速さになんとか食いついて行った。
ローザ達を隠すように前に出たサージにマントの人影は慇懃に伝える。もっとも内容こそ丁寧だが、その声はたどたどしく、酷く擦れており耳障りである。蛙のげっぷの方がまだましだろう。
「ふっ、客として招きたいなら、もっとましな使者をよこすべきだろう。犬をよこすなんて俺でもしないぞ!」
「ガッフゥゥ!!」
サージの嘲笑を交えた返答に人影は怒りの唸り声を上げると、もう隠す必要はないとばかりにマントを脱ぎ捨てる。そいつの身体は全身を剛毛で覆われており、頭部には狼のそれが巨大な顎を備えて生えていた。
爛々と黄色に光る双眸が印象的で、そこには知性を否定するような狂気に満ちている。一見すると大柄な狼が後ろ脚だけで立っているようにも見えるが、肩と上半身の造りは人間に似ており、純粋な狼とは異なる姿をしていた。
この狼と人間の中間的存在は、一般的に狼男と呼ばれる怪物である。いち早く、その正体を看破したサージはそれ故に犬と蔑んだのだ。
「そろそろ準備は整ったか?」
既に長剣を抜いて身構えていたサージは狼男にからかうように告げる。元々、体格に優れる人影だったが、正体を現わしたことで内側から溢れるように筋肉が盛り上がり、今では小山のような大きさとなっている。常人からすれば、長剣もこの狼男を前にしてはペーパーナイフ程度に見えたことだろう。
「グルアァァ!!」
自分からすれば矮小な人間に〝コケ〟にされたと受け取った狼男は雄叫びを上げる。主人であるジェダからはサージ達を連れて来いと命令されていたが、標的は三人である。一人くらいは食い殺しても構わないと判断したのだ。
「サージさん!!」
「来た!!」
「ふっ! 離れていろ!」
見守っていたローザとリーザの悲鳴を合図にして、狼男は五尋もの間合いを一瞬で詰めるとサージに食らいつこうと襲い掛かる。それに彼は短い笑みで答えると、縦一文字に長剣を振り被る。姉妹もサージの警告を受けて、素早く後ろへと飛び退いた。
次の瞬間、雷光にも似た一刀は敵の質量に負けることなく狼男の頭を溶けかけたバターのように両断し、その巨体を地面にひれ伏させた。
「これで死んでないのか・・・頑丈だな。まあ、俺には丁度良い・・・ワーグの時は首を落とすのを横取りされてしまったからな!」
敵の巨体を避けるためというよりは、返り血を嫌って前回り受身で距離を取ったサージは首元まで真っ二つにされながらも立ち上がろうとする狼男に告げる。
「ア、ガッ!!!」
本能的に狼男はこの場から逃れようともがくが、それが許されるはずもなくサージによって野太い首が長剣によって落とされる。血に飢えた獣の黄色く光る瞳孔は即座に黒く鈍り、更には小山のような身体も徐々に縮んでいき、後には裸の男の遺骸が残された。
狼男はライアンスロープとも呼ばれる怪物で〝混沌〟の加護あるいは呪いを得た人間が変化した存在である。本来なら非常に高い肉体再生能力を保有しており、その身体を傷付けるには魔法か銀の武器が必要とされているのだが、サージは自身の魔力で肉体だけでなく獲物である長剣も強化している。そんな怪物も彼の前には脅威とはなり得なかった。
「・・・強い・・・」
恐るべき狼男をほぼ一太刀で屠ったサージに対して、リーザは感じたままの事実を口にする。これまでは現実を見ずに大口を叩く男だと思っていたが、視野が狭いのは自分の方だったと思い知らされたのである。
「この程度の相手で感心されてもな・・・ふふ」
リーザの言葉にサージは狼男など朝飯前とばかりに鼻で笑いながら答える。
「・・・」
「サージさん、ありがとうございます。お見事でした! ですが、ここでのんびりしているわけには!」
狼男の脅威から救われたことに感謝しながらも、ローザはサージに次の行動を促す。彼女は絶句するリーザとは違い、サージの実力を未知数ながらも信じていたので、目の前で繰り広げられた圧倒的な勝利と大言にも順応出来たのである。
「そうだな、こちらの正体がバレているようだし、このままに一気にジェダを討ち取りに行くぞ!」
「い、いえ! 違います! まずはマイスターミリアと合流を!!」
その実力のためか、常識から外れているサージの考えをローザは慌てて訂正する。策が失敗したのなら戦力の収束を図るのは基本中の基本と言えた。
「ん!? ミリアなら一人でも大丈夫だろう?」
「・・・実は・・・ジェダとマイスターミリアには因縁があるのです! まずは彼女の安否を確保しましょう! お願いします!」
「た、頼むよ! サージ!」
サージからすればミリアを信用しての発言だったが、ローザは説得するために切り札を出し、リーザも素直に懇願する。
「・・・そう言えば・・・そんなことを言っていたな。まあ、良いだろう!」
「既にご存じでしたか! お願します!」
「ありがとう! サージ!!」
ミリアがジェダとの因縁をサージに打ち明けていたのはローザ達にとっては初耳だったが、当のサージはあっさりと受け入れる。ミリアの身を案じたというよりは、どのような因縁なのか興味を持ったのだと思われた。
もっとも、姉妹からすればサージが協力的になってくれたのである。不満などあるはずもなく感謝を口にする。
「では、ミリアと合流するとしよう! 遅れるなよ!」
「もちろんです!」
「了解!」
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