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その19
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「ふん!」
ミリアと合流すべく宿屋へ急ぐサージだったが、突如の建物の二階から襲って来た人影の一つを長剣で薙ぎ払った。先程の狼男とは異なり外見は平凡な人間と大差ないが、赤い瞳と鋭く伸びた犬歯がその正体を物語っている。
「キシャアァァ!!」
「くそが!!」
返す刀で奇怪な声を上げて襲い掛かる二体目の首を刎ねたサージだったが、通りの前方から道を塞ぐほどの群衆がこちらに向っているのに気付くと悪態を吐きながら足を止める。自分一人ならともかく、後ろにローザ達を引き連れている状態でこのまま突っ込むのは、彼女達の安否の保証が出来ないからだ。
「これらはジェダの眷属です!」
サージが叩き落とした一体目の胸に短剣で止めを刺しながら、ローザは襲って来た者の正体を告げる。眷属とはジェダをルーツにバンパイアとなった、言わば子や孫にあたる下位のバンパイアのことである。
〝スレイヤー。ギルド〟では〝混沌の神々〟のいずれかに魅入られて直接バンパイアに転生した存在を真祖、その真祖によってバンパイア化された者を眷属と呼んでいる。眷属の方はレッサーバンパイアとも呼び、オリジナルのバンパイアとは明確に区別している。なぜなら、その実力、すなわち人間に対する脅威に雲泥の差があるからだ。
眷属達もバンパイアとしての能力を幾分か備えているが〝混沌の神々〟から直接的な加護を得ているわけではない。それ故に魔法やそれに準ずる攻撃で致命傷を与えればバンパイアとしての活動を終了させることが出来た。
サージが首を刎ねた眷属はもちろんのこと、ローザが止めを刺した一体目も急速にミイラのように干からびて、その活動を終了させる。
ローザとリーザは純粋な戦闘要員ではないが、戦いに備えて魔法で強化された短剣を用意していた。このように対策さえ取っていれば、レッサーバンパイアは彼女達でも倒せる敵だった。もっとも、それは常識的な数に限っての話である。
「後ろからも迫ってる!!」
リーザが絶望的な警告を発し、サージは後方を確認する。彼女の言葉通り、後ろからもジェダの眷属達が押し寄せつつあった。その合計は前方と合わせると五十体を下らないだろう。
一体程度なら少々手強い程度のレッサーバンパイアもこの数になると恐るべき脅威となる。そして数の暴力による脅威はジェダ討伐において、墓所の所在と並ぶ懸案の一つだった。サージ達は完全に後手に回ったことを意味していた。
「ふふふ・・・仕方ないな・・・」
自分達の置かれた状況にサージは自虐的に呟く。
「し、仕方ないって?! サージ! 強いんだろなんとかしてくれよ!」
その呟きを観念したと勘違いしたリーザが怒ったように懇願する。
「仕方ないとは・・・俺の好みに反するという意味だ。直接戦って敵の首を刎ねるのが、俺なりの敵へ敬意だったからな。お前達、足手纏いがいなければ剣だけで相手したんだが・・・」
リーザの誤解に説明を施しながらサージは左手を前方に向けて精神を集中させる。その途端に彼の身体に秘められていた魔力がその一点に凝縮された。あまりに魔力が濃いため、左手が光り出すほどである。その姿は堰き止められたダムが水量の限界を超える瞬間を思い起こさせた。
先頭を走る亡者達の爪がサージに到達しようする寸前、彼は魔力を解放させた。
圧倒的な光の奔流がリーザの視界を埋め尽くした。更に僅かに遅れて凄まじい轟音が彼女の鼓膜を震わせる。咄嗟に身を縮め両手で頭部を保護するが、それでもリーザは腕の隙間から自分の目の前で起きた現象を正確に認識していた。サージは魔力を質量のある光として具現化し、レッサーバンパイアの群に放ったのである。
リーザが防御体制を解いた時には、前方の亡者達は跡形も無く消えていた。いや、眷属だけではなく通りを挟んで立つ建物の一部と地面の表面が抉られように消えている。あの光に晒された部分が丸ごと消滅したと見て間違いないだろう。
「・・・」
「こ、これは・・・」
声を出すことも忘れたリーザの代わりにローザがサージに問い掛ける。
「余った魔力をエネルギー固体として形成しながら射出した。群れたことが仇になったようだな」
そう答えながらもサージは踵を返してローザ達の前に出ると、今度は後ろに向けて同じように魔力で作り出した光の塊を放出する。
この二回の魔法攻撃によりサージ達を取りこんでいたレッサーバンパイアの群は物理的に消え去った。
ミリアと合流すべく宿屋へ急ぐサージだったが、突如の建物の二階から襲って来た人影の一つを長剣で薙ぎ払った。先程の狼男とは異なり外見は平凡な人間と大差ないが、赤い瞳と鋭く伸びた犬歯がその正体を物語っている。
「キシャアァァ!!」
「くそが!!」
返す刀で奇怪な声を上げて襲い掛かる二体目の首を刎ねたサージだったが、通りの前方から道を塞ぐほどの群衆がこちらに向っているのに気付くと悪態を吐きながら足を止める。自分一人ならともかく、後ろにローザ達を引き連れている状態でこのまま突っ込むのは、彼女達の安否の保証が出来ないからだ。
「これらはジェダの眷属です!」
サージが叩き落とした一体目の胸に短剣で止めを刺しながら、ローザは襲って来た者の正体を告げる。眷属とはジェダをルーツにバンパイアとなった、言わば子や孫にあたる下位のバンパイアのことである。
〝スレイヤー。ギルド〟では〝混沌の神々〟のいずれかに魅入られて直接バンパイアに転生した存在を真祖、その真祖によってバンパイア化された者を眷属と呼んでいる。眷属の方はレッサーバンパイアとも呼び、オリジナルのバンパイアとは明確に区別している。なぜなら、その実力、すなわち人間に対する脅威に雲泥の差があるからだ。
眷属達もバンパイアとしての能力を幾分か備えているが〝混沌の神々〟から直接的な加護を得ているわけではない。それ故に魔法やそれに準ずる攻撃で致命傷を与えればバンパイアとしての活動を終了させることが出来た。
サージが首を刎ねた眷属はもちろんのこと、ローザが止めを刺した一体目も急速にミイラのように干からびて、その活動を終了させる。
ローザとリーザは純粋な戦闘要員ではないが、戦いに備えて魔法で強化された短剣を用意していた。このように対策さえ取っていれば、レッサーバンパイアは彼女達でも倒せる敵だった。もっとも、それは常識的な数に限っての話である。
「後ろからも迫ってる!!」
リーザが絶望的な警告を発し、サージは後方を確認する。彼女の言葉通り、後ろからもジェダの眷属達が押し寄せつつあった。その合計は前方と合わせると五十体を下らないだろう。
一体程度なら少々手強い程度のレッサーバンパイアもこの数になると恐るべき脅威となる。そして数の暴力による脅威はジェダ討伐において、墓所の所在と並ぶ懸案の一つだった。サージ達は完全に後手に回ったことを意味していた。
「ふふふ・・・仕方ないな・・・」
自分達の置かれた状況にサージは自虐的に呟く。
「し、仕方ないって?! サージ! 強いんだろなんとかしてくれよ!」
その呟きを観念したと勘違いしたリーザが怒ったように懇願する。
「仕方ないとは・・・俺の好みに反するという意味だ。直接戦って敵の首を刎ねるのが、俺なりの敵へ敬意だったからな。お前達、足手纏いがいなければ剣だけで相手したんだが・・・」
リーザの誤解に説明を施しながらサージは左手を前方に向けて精神を集中させる。その途端に彼の身体に秘められていた魔力がその一点に凝縮された。あまりに魔力が濃いため、左手が光り出すほどである。その姿は堰き止められたダムが水量の限界を超える瞬間を思い起こさせた。
先頭を走る亡者達の爪がサージに到達しようする寸前、彼は魔力を解放させた。
圧倒的な光の奔流がリーザの視界を埋め尽くした。更に僅かに遅れて凄まじい轟音が彼女の鼓膜を震わせる。咄嗟に身を縮め両手で頭部を保護するが、それでもリーザは腕の隙間から自分の目の前で起きた現象を正確に認識していた。サージは魔力を質量のある光として具現化し、レッサーバンパイアの群に放ったのである。
リーザが防御体制を解いた時には、前方の亡者達は跡形も無く消えていた。いや、眷属だけではなく通りを挟んで立つ建物の一部と地面の表面が抉られように消えている。あの光に晒された部分が丸ごと消滅したと見て間違いないだろう。
「・・・」
「こ、これは・・・」
声を出すことも忘れたリーザの代わりにローザがサージに問い掛ける。
「余った魔力をエネルギー固体として形成しながら射出した。群れたことが仇になったようだな」
そう答えながらもサージは踵を返してローザ達の前に出ると、今度は後ろに向けて同じように魔力で作り出した光の塊を放出する。
この二回の魔法攻撃によりサージ達を取りこんでいたレッサーバンパイアの群は物理的に消え去った。
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