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喫煙所にて
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「なあ、お前ほんまに逃げてきたんやな。誰にも言わず」
タイヤが地面にこすれる音が、かすかに耳に届くほどに静かな車内。その沈黙を破った男の声はそれまでと変わらず落ち着いた低い声だった。その質問に答えは返ってこない。
「絶賛誘拐中の俺が言うのもなんやけど、急におらんなったら心配してる人もいてるんちゃうか?」
「心配なんてしてるわけないじゃない! どうせあの人たちは、私じゃなくて私から獲れるお金にしか興味ないんだから」
それだけを言うと、朱音は何やら一人でぼそぼそと呟きはじめた。
「朱音、大丈夫か?」
「なんで、なんでもうニュースになってるの」
同じようなフレーズを繰り返している朱音の姿勢は、座席の上に縮こまり、非常に窮屈そうだ。
「なあって、聞いてるんか?」
「騙されたの? 彼女だけは信頼できると思ってたのに。やっぱり私なんて、どうせ誰にも……」
「朱音!」
男の張り上げた声が朱音を現実へと引き戻した。我に返った朱音の視線が、突き刺すほどの恨めしさを伝えている。男はそのとげとげしい感情に対し、包み込むような語り口で言葉を続けた。
「何があったんや、話してくれるか?」
運転中の男と朱音の視線が合うことは無い。それでも。男の持つ温かい空気は朱音に届いているようだった。
「私ね。中学を卒業するころに女優として活動するようになったの」
窓の外から鈍く響いている、ワゴンアールのエンジン音に対抗するかのような声で、朱音は自らについて語り始める。
「へえ、そうやったんか。そしたらもう何年になるんや?」
「十年、かな。友達と街で遊んでた時に事務所の人に声をかけられて、気が付くと自分がテレビや映画に出てた」
「スカウトってやつやな」
「うん。はじめの頃は楽しかったんだよ」
「はじめの頃は、か」
二人が乗る車の右側を、巨大なコンテナを積んだトラックが通り過ぎていく。二人の前に出たトラックはそのまま車線を左に動かし、それまで見えていた様々な光景が単一のものになった。
「うん。楽しかったのははじめだけ」
マスクをつけていることで声はくぐもり、小さな声が余計に聞き取りづらくなる。
「それなりに有名になった私の周りにいたのは、私のことを金の成る木としか思っていないような人だけ。事務所の人や友達、両親まで、誰のことも信じられなくなった」
「そうか」
車のフロントガラスに一粒の水滴が落ちてくる。その粒は次第に数を増していき、たくさんの雨粒に覆われたガラスが二人の視界を遮る。男が左手を軽く動かすと、その粒はいとも簡単に拭き取られた。
「今回の撮影中にね、私はどこかで逃げだすことに決めていたの。もう女優として生きるのには疲れたから」
雨音が段々と強くなってきたが、打ち付ける雨粒がフロントガラスを覆うことはもうない。
「そしてそれはマネージャーにだけ話してた。体調が悪くなったからしばらく休むことにして、その間に私は身を隠す予定だったの」
「なにも逃げること無かったんちゃう? 若いのに引退ってのも珍しくないやろうし……」
「薬漬けはいやだもの」
「は?」
雨が降っているためか、はたまた標高が高くなったからか、車内の温度が急激に低下する。「クスリヅケ?」男は前を向いたまま、その言葉の羅列をただ繰り返した。
「私はまだ何もされてないけどね。見なかった? 少し前に俳優が薬物を使用してたってニュース。あの人、私と同じ事務所の先輩なの」
「やってた。そのニュース見た気がするわ。なんでこんな有名人が薬物なんて、って思った記憶がある」
車がサービスエリアを出てから初めて、朱音はその顔をほころばせた。微笑えんだ口元が、「ごめんね」と音の無い許しを請う。
「有名人だから、かもしれないね。一件の仕事を受けるだけで、事務所には多額のお金が入ってくる。どうせ稼げるのはほんの数年、それならできる限り稼がせた方が得なんだろうね」
「そのために薬まで使うんか? そんなん訴えられるやろ」
前方にいたトラックが高速道路の出口へと向かう。そのトラックを見送るように首を動かした男の視界の端に、朱音の顔がかすかに写る。
「それが訴えられないのよ。自分が使用したことも事実だから刑罰は免れないし、仮に訴えても途中で揉み消されちゃうみたい」
勢いを増し続ける雨の音が、二人の声を自然と大きくさせる。道路にできた大きな水溜まりを、灰色のワゴンアールが激しく通り過ぎていった。
「すまん」
前方から目を切らさない程度に、男が小さく頭を下げる。
「なんであなたが謝るの?」
「簡単に引退すればいいなんて言ってもうた。できるんやったらやってるよな」
「別にいいよ、仕方ないことだし」
車はトンネルの中へと入り、さっきまで聞こえていた雨音は完全に消え去った。言葉を無くした二人の会話を、トンネルの壁に反射して何倍にもなった走行音が、かろうじて成立させていた。
定期的に現れる大きな送風機が、大型動物のような唸り声を上げる。高い位置に合わせていた対向車のライトが男の目を眩ませた。
「なんやあいつ、ハイビームにするなよな」
漏れ出たような男の言葉は、一瞬で置き去りにされる。その言葉以降、トンネルを抜けるまでの間。目まぐるしく回転する頭とは対照的に、互いの口が動くことは無かった。
トンネルに入ったときには随分と先に見えていたワンボックスカー。その背にピタリと追いつく頃、雨音が盛大に二人を出迎えた。
「そんで、これからどうするんや? 直に携帯のGPSとかで見つかるんか?」
わざとらしく他人事のように話す男の口調が、この状況下ではむしろ親身に考えているように聞こえる。
「携帯は置いてきた。カード類が入った財布もね。何かのドラマで、お金を引き出したことで居場所が見つかってたことがあったから、どうせ使えないかと思って。あっ、でもね」
朱音は自分が履いていた靴を脱ぎ、その中から小さく折りたたんだ一万円札を数枚取り出した。
「今持ってるのはこれだけ。だから見つかるようなことは無いと思う。私の体に何か埋め込まれてさえいなければね」
「プレミア付きそうやな」
「えっ?」
「いや、なんでもない、忘れてくれ。そうか、そしたらどないする? ある程度の所までやったら乗せてったるわ」
朱音は数分の間黙りこみ、喉を唾が通り抜けるのを合図に口を開いた。
「誰も私を知らないところ」
「え? なんて言ったんや?」
雨は激しさをひたすらに増し、ひっきりなしに動いているワイパーですらその全てを拭きとることはできなくなっていた。朱音の声も雨音にかき消され、途切れ途切れにしか男に届かない。
「あそこで止まるから、そこで話そうや」
視界に入っていたパーキングエリアの看板を顎で示す。車は左側の道路に流れていき、その先で停車した。
「ふう。煙草吸いながらでもいいか? 後ろに傘あるから二本取ってくれ。足元やわ」
「わかった」
朱音は体を捻ると、視線を下げて手を伸ばす。手に取った一本を男に渡すと、二本目を手にするため再び体を捻った。
「ん、ありがと」
差し出されたビニール傘を受け取った男が運転席のドアを開くと、風に煽られた雨が車内に入り込んでくる。
「冷たっ」
ほとんど無意識的にそう発しながら、半分ほど開いた状態のドアから徐々に体を押し出す。
「よっと」
完全に体を外に出した男が、後ろ手にドアを閉めたのと同じタイミングで、朱音のドアを閉める音が重なった。
「誰もおらんなあ」
逃げるようにそこを離れたさっきのサービスエリアとは違い、小さな囲いに申し訳程度の屋根がつけられた喫煙所と、公園にあるような古びたトイレしかないパーキングエリア。
二人の乗ってきた車を除くと、一台の大型トラックが停まっているだけだった。
透明度が微妙に異なる二本の傘が、斜めに並びながら歩いていく。男の少し後ろを歩く朱音の顔は、地肌の部分がほとんど見えないくらいに様々な物で隠れていた。
「さて、さっきはなんて言ってたんや?」
あちこちのポケットを手で叩きながら、男が朱音に尋ねる。朱音はサングラスを外すと、男の目を真っすぐ見返した。
「私のことを誰も知らない場所まで連れて行って欲しいって言ったの。どう? お願いできる?」
「聞き間違いじゃなかったか」
ズボンの右ポケットから煙草の箱を取り出した男は、その中から一本を取り出すと口に咥え、上着の内ポケットから出したライターで火をつけた。
「鈴木桜花を知らんところか。そりゃあちょっと大変やな。芸能人にさほど興味のない俺ですら、顔を見ただけでわかったぐらいやからなあ」
男の吐き出す白い息が、薄暗く光る灯りに照らされる。二本の指で固定された煙の元が、男の指から伝わる衝撃で灰を落とした
「そう。そうよね」
朱音は謙遜するわけでもなく、ただ事実としての難しさを嘆く。
「それこそこんな山奥とかじゃないとな」
茶化すような声で男が言う。
「それなら愛媛県がいい」
「愛媛?」
朱音が頷く。
「小さい頃はそこで過ごしてたの。この世の汚いところを何も知らない状態でね。どうせいずれ見つかるなら、それまでに行きたい」
朱音の言葉には、地方特有の癖を微塵も感じさせない。男もその疑問を感じたようだったが、特に触れることなく飲み込んでいた。
「確か愛媛は鯛めしが美味いんやっけ」
口に煙草を咥え込んだままゆっくりと深呼吸をした男は、否定も肯定もすることなく言葉を発する。
「そこまで乗せてくれるの? もちろん、お礼はきちんとする」
「礼なんてええ。これも何かの縁やし只の気まぐれや。ちょうど雨も止んだし、行こうや」
喫煙所に置いている縦長の灰皿。先端に灰が残る煙草をその隙間に差し込む。
ここから遠く離れた場所である愛媛の地。そこまで気軽に向かうと言った男に対して、朱音はいまいち信を置けないでいた。
「本当に連れて行ってくれるの? 途中でやめたなんて言わないでよね」
「言わん言わん」
「本当?」
「ああ、ほんまや。さすがに信用できひんか。やめとくか?」
朱音の存在に特に執着している様子の無い男。決断を迷っていた様子の朱音は、二人の間に明確な利害関係を発生させることを選んだ。
「ねえ、決めごとをしない? 約束って言った方が綺麗かな」
「約束?」
「そう、あなたは私を愛媛まで連れて行ってくれる。私はあなたに相応の金額を支払う。これでどう?」
「どうって言われても。俺は別に」
「なら約束して」
あくまで強気な朱音の様子に男は気が抜けたのか、息を抜くように笑った。
「わかったわかった、約束する。これでいいか?」
「うん、ありがとう。あなたって優しいのね」
さっきまでの強気な様子とは打って変わり、落ち着いた態度で礼を言った朱音。対する男は照れ隠しのように言葉を返す。
「仲の良いやつには厳しく、どうでもいい人には優しく、ってのがモットーやからな」
笑いながらそう言う男を見て、朱音も同じように笑った。
「何よそれ、優しくないわね」
「うるさい、はよ行くぞ」
二本の閉じた傘を持った一組の男女が、元来た道を車へと歩いていく。肩を並べて歩く二人ともが、どこか安心したような背中をしていた。
タイヤが地面にこすれる音が、かすかに耳に届くほどに静かな車内。その沈黙を破った男の声はそれまでと変わらず落ち着いた低い声だった。その質問に答えは返ってこない。
「絶賛誘拐中の俺が言うのもなんやけど、急におらんなったら心配してる人もいてるんちゃうか?」
「心配なんてしてるわけないじゃない! どうせあの人たちは、私じゃなくて私から獲れるお金にしか興味ないんだから」
それだけを言うと、朱音は何やら一人でぼそぼそと呟きはじめた。
「朱音、大丈夫か?」
「なんで、なんでもうニュースになってるの」
同じようなフレーズを繰り返している朱音の姿勢は、座席の上に縮こまり、非常に窮屈そうだ。
「なあって、聞いてるんか?」
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「朱音!」
男の張り上げた声が朱音を現実へと引き戻した。我に返った朱音の視線が、突き刺すほどの恨めしさを伝えている。男はそのとげとげしい感情に対し、包み込むような語り口で言葉を続けた。
「何があったんや、話してくれるか?」
運転中の男と朱音の視線が合うことは無い。それでも。男の持つ温かい空気は朱音に届いているようだった。
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「十年、かな。友達と街で遊んでた時に事務所の人に声をかけられて、気が付くと自分がテレビや映画に出てた」
「スカウトってやつやな」
「うん。はじめの頃は楽しかったんだよ」
「はじめの頃は、か」
二人が乗る車の右側を、巨大なコンテナを積んだトラックが通り過ぎていく。二人の前に出たトラックはそのまま車線を左に動かし、それまで見えていた様々な光景が単一のものになった。
「うん。楽しかったのははじめだけ」
マスクをつけていることで声はくぐもり、小さな声が余計に聞き取りづらくなる。
「それなりに有名になった私の周りにいたのは、私のことを金の成る木としか思っていないような人だけ。事務所の人や友達、両親まで、誰のことも信じられなくなった」
「そうか」
車のフロントガラスに一粒の水滴が落ちてくる。その粒は次第に数を増していき、たくさんの雨粒に覆われたガラスが二人の視界を遮る。男が左手を軽く動かすと、その粒はいとも簡単に拭き取られた。
「今回の撮影中にね、私はどこかで逃げだすことに決めていたの。もう女優として生きるのには疲れたから」
雨音が段々と強くなってきたが、打ち付ける雨粒がフロントガラスを覆うことはもうない。
「そしてそれはマネージャーにだけ話してた。体調が悪くなったからしばらく休むことにして、その間に私は身を隠す予定だったの」
「なにも逃げること無かったんちゃう? 若いのに引退ってのも珍しくないやろうし……」
「薬漬けはいやだもの」
「は?」
雨が降っているためか、はたまた標高が高くなったからか、車内の温度が急激に低下する。「クスリヅケ?」男は前を向いたまま、その言葉の羅列をただ繰り返した。
「私はまだ何もされてないけどね。見なかった? 少し前に俳優が薬物を使用してたってニュース。あの人、私と同じ事務所の先輩なの」
「やってた。そのニュース見た気がするわ。なんでこんな有名人が薬物なんて、って思った記憶がある」
車がサービスエリアを出てから初めて、朱音はその顔をほころばせた。微笑えんだ口元が、「ごめんね」と音の無い許しを請う。
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「そのために薬まで使うんか? そんなん訴えられるやろ」
前方にいたトラックが高速道路の出口へと向かう。そのトラックを見送るように首を動かした男の視界の端に、朱音の顔がかすかに写る。
「それが訴えられないのよ。自分が使用したことも事実だから刑罰は免れないし、仮に訴えても途中で揉み消されちゃうみたい」
勢いを増し続ける雨の音が、二人の声を自然と大きくさせる。道路にできた大きな水溜まりを、灰色のワゴンアールが激しく通り過ぎていった。
「すまん」
前方から目を切らさない程度に、男が小さく頭を下げる。
「なんであなたが謝るの?」
「簡単に引退すればいいなんて言ってもうた。できるんやったらやってるよな」
「別にいいよ、仕方ないことだし」
車はトンネルの中へと入り、さっきまで聞こえていた雨音は完全に消え去った。言葉を無くした二人の会話を、トンネルの壁に反射して何倍にもなった走行音が、かろうじて成立させていた。
定期的に現れる大きな送風機が、大型動物のような唸り声を上げる。高い位置に合わせていた対向車のライトが男の目を眩ませた。
「なんやあいつ、ハイビームにするなよな」
漏れ出たような男の言葉は、一瞬で置き去りにされる。その言葉以降、トンネルを抜けるまでの間。目まぐるしく回転する頭とは対照的に、互いの口が動くことは無かった。
トンネルに入ったときには随分と先に見えていたワンボックスカー。その背にピタリと追いつく頃、雨音が盛大に二人を出迎えた。
「そんで、これからどうするんや? 直に携帯のGPSとかで見つかるんか?」
わざとらしく他人事のように話す男の口調が、この状況下ではむしろ親身に考えているように聞こえる。
「携帯は置いてきた。カード類が入った財布もね。何かのドラマで、お金を引き出したことで居場所が見つかってたことがあったから、どうせ使えないかと思って。あっ、でもね」
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「えっ?」
「いや、なんでもない、忘れてくれ。そうか、そしたらどないする? ある程度の所までやったら乗せてったるわ」
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「誰も私を知らないところ」
「え? なんて言ったんや?」
雨は激しさをひたすらに増し、ひっきりなしに動いているワイパーですらその全てを拭きとることはできなくなっていた。朱音の声も雨音にかき消され、途切れ途切れにしか男に届かない。
「あそこで止まるから、そこで話そうや」
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「ふう。煙草吸いながらでもいいか? 後ろに傘あるから二本取ってくれ。足元やわ」
「わかった」
朱音は体を捻ると、視線を下げて手を伸ばす。手に取った一本を男に渡すと、二本目を手にするため再び体を捻った。
「ん、ありがと」
差し出されたビニール傘を受け取った男が運転席のドアを開くと、風に煽られた雨が車内に入り込んでくる。
「冷たっ」
ほとんど無意識的にそう発しながら、半分ほど開いた状態のドアから徐々に体を押し出す。
「よっと」
完全に体を外に出した男が、後ろ手にドアを閉めたのと同じタイミングで、朱音のドアを閉める音が重なった。
「誰もおらんなあ」
逃げるようにそこを離れたさっきのサービスエリアとは違い、小さな囲いに申し訳程度の屋根がつけられた喫煙所と、公園にあるような古びたトイレしかないパーキングエリア。
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「聞き間違いじゃなかったか」
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「本当?」
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