アレキサンダーの戦い

桂圭人

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アレキサンダーVSガシャレル

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暗く、重い空気が渦巻く禁忌の図書館。最奥の円形ホールでは、赤い炎が無数の書架を舐め、ページが勝手にめくれ続ける。中央に立つのはガシャレル――白金の王冠から無数の眼孔が開閉し、白髪の先端が赤く燃え、触れるだけで「理解した気になる」という甘い毒を撒き散らす歪王。
対峙するのはアレキサンダー。銀警察署長の制服は血と灰で汚れながらも、背筋は微塵も曲がらない。
アレキサンダーの首元で、アレサンドサイトのペンダントが静かに脈打っていた。
銀色の鎖が微かに震え、淡い白銀の光が宝石の表面を走る。ガシャレルの赤い炎が図書館全体を染め上げる中、その光だけが異質に冷たく、純粋だった。
ガシャレルが嘲るように唇を歪める。

「その小賢しい玩具で、僕の知識を切り裂けると思っているのか?」

アレキサンダーは答えず、ただ右手でペンダントに触れる。

瞬間――

キィィン……

金属が歌うような高音が響き、ペンダントの鎖が一気に解け、銀の粒子が渦を巻いて広がる。宝石が爆ぜるように輝き、白銀の光が奔流となってアレキサンダーの右腕を包み込む。
鎖が蛇のように伸び、瞬時に刃の骨格を形成。中心の宝石が回転軸となり、無数の白銀の歯が次々と生み出され、ガチガチガチッ! と噛み合いながら高速で回り始める。
ペンダントの形状は完全に失われ、代わりに現れたのは巨大なチェーンソー型大剣――刃渡り2メートルを超える、白銀一色の凶器。回転する歯が空気を引き裂き、甲高い唸りを上げながら赤い炎を弾き返す。
変形完了の瞬間、アレキサンダーが大剣を軽く振るうだけで、周囲の空気が爆ぜ、近くの書架が一瞬で粉々に砕け散った。

「は???」

アレキサンダーの声は低く、静かだ。だがその瞳には一切の揺らぎがない。

「これは壁だ。僕が守るべきものを、絶対に越えさせないための――」

チェーンソーの回転音が一気に跳ね上がる。

ギィィィィン!!

白銀の刃が赤い炎を切り裂きながら、ガシャレルに向かって真っ直ぐに振り下ろされる。
ガシャレルがサガーレバを構え、槍を突き出す。赤と銀が激突し、衝撃波が図書館の天井を抉る。

ガァァァン!!

刃と槍が火花を散らし、互いに押し合う。チェーンソーの歯が槍の表面を削り取り、白金の破片が飛び散るたび、ガシャレルの表情がわずかに歪む。

「――この回転、この純粋な破壊力……面白い。実に、実に面白い!」

ガシャレルが笑いながら後退し、ガルサバリエルを連射。知識の弾丸が雨のように降り注ぐ。
アレキサンダーは大剣を盾のように構え、回転する刃で弾丸を次々と粉砕。白銀の歯が赤い残滓を噛み砕くたび、金属の悲鳴のような音が響く。

(コイツ危ない…一刻も早く消し去らないと!)

アレキサンダーが一歩踏み込み、大剣を大きく振りかぶる。チェーンソーの回転が最大出力に達し、空気が白く熱を帯びる。

ズガァァァァン!!

大剣が横薙ぎに振り抜かれ、ガシャレルの防御を強引に突破。白銀の刃が赤い外套を切り裂き、血のような炎の粒子が爆ぜて舞い上がる。
ガシャレルが初めて後ずさり、胸を押さえる。無数の眼孔が痛みに震えながらも、なお狂喜の色を浮かべる。

「……素晴らしい変形だ。だが、まだだ……まだ、僕の知識は尽きない……!」

アレキサンダーが最後の突進をかける。チェーンソー大剣を両手で握り、最大回転。

「これで、終わりだ!」

ギィィィィン―――ッ!!

白銀の刃が、ガシャレルの胸を貫く。
赤い炎が爆ぜ、書物が一斉に燃え上がり、図書館全体が震える。
ガシャレルはゆっくりと膝をつく。無数の眼孔が次々と閉じ、白金の王冠が傾く。

「……素晴らしい秩序だ……だが、覚えておきなさい……僕の炎は……消えない……」

最後の言葉を残し、ガシャレルの身体が赤い粒子となって崩れ落ちる。
アレキサンダーは剣を下ろし、静かに息を吐く。
周囲は灰と燃えカスだけ。だが、彼の背中はなお、折れていない。
銀の壁は、ここでもまた、決して崩れなかった。
――勝利は、アレキサンダーのものだ。
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