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アレキサンダーVSガルシェバル
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夜の白銀荘、その最深部に位置する「銀の回廊」
巨大な円形の闘技場のような空間に、冷たい月光が鉄と大理石の床を青白く染めていた。
中央に立つのは、282cmの巨躯。 燃えた白金のような肌が、わずかに揺らめく熱気を放ち、周囲の空気を歪ませている。 ガルシェバル=ヴォル=カデス。熾烈王。
彼の前に、静かに佇む一人の男。
白髪。白い瞳。銀色の制服に身を包んだ長身の男——アレキサンダー。 銀警察署長にして、白銀荘の絶対的な統治者。 首から下げたアレサンドサイトのペンダントが、微かに銀光を放っている。
「…………君か」
アレキサンダーの声は低く、氷のように澄んでいた。
「戯言(愛)を語りながら、灰にするだけの化け物が。僕の街に、僕の民に、赤い毒を撒き散らすだけの……穢れた炎の怪物が」
ガルシェバルはゆっくりと微笑んだ。 その笑みは優しく、しかし底知れぬ熱を孕んでいる。
「君の言う『秩序』は、とても冷たいね。僕の炎は……もっと、温かいよ」
瞬間——
ガルシェバルの背で、二対の灰翼が赤く燃え上がった。 同時に両腕に絡みついていた焼け残りの鎖が、情念の炎を纏って解け、蛇のように宙を舞う。
《焼灼の鎖》
鎖の先端が、アレキサンダーの心臓を狙って飛んだ。
だが、次の瞬間。
ガキィィンッ!
銀色の閃光が空を裂く。
アレキサンダーの右手がペンダントを握り潰すように引きちぎり—— 一瞬で巨大なチェーンソー型白銀大剣へと変形した。
刃が回転を始め、甲高い金属の咆哮を上げる。
鎖は大剣の歯に弾かれ、火花を散らして弾き返される。
「…………無駄だ」
アレキサンダーは一歩踏み込み、距離を詰めた。
その動きは重厚でありながら、異様な速さだった。
ガルシェバルが拳銃《ガル=ガボス》を構えるより早く—— 白銀のチェーンソーが、横薙ぎに振り抜かれる。
ズガアアアアッ!
刃がガルシェバルの左腕を掠め、白金の肌に浅い銀の傷を刻んだ。
傷口から、赤黒い煙が立ち上る。
「……っ、はぁ……」
ガルシェバルが初めて、甘く震える吐息を漏らした。
「痛い……でも、気持ちいい……君の刃は、こんなにも純粋に、僕を『拒絶』している……」
彼の瞳が、狂おしいほどに輝いた。
《狂熱の審判》
空間が歪み、紅蓮の情念が爆ぜる。
アレキサンダーの視界が一瞬、赤く染まった。
心臓が、強制的に高鳴る。 体温が急上昇し、血管が熱を持つ錯覚。
だが——
アレキサンダーは白い瞳を細めただけだった。
「…………ふん」
彼は大剣を振り上げ、回転する刃を最大出力で唸らせた。
そして、一気に踏み込む。
ガルシェバルが《燃焼支配》を発動させようとした瞬間—— 白銀のチェーンソーが、真正面から巨躯の胸板を抉った。
ギィィィィンッ! ズガガガガガガッ!
金属と肉が引き裂かれる、悍ましい音。
ガルシェバルの法衣が千切れ、焦げた金属紋章が宙を舞う。
それでも彼は笑っていた。
「素晴らしい……君は、僕をこんなにも強く、拒む……愛してるよ、アレキサンダー……」
両腕の鎖が、最後の力を振り絞ってアレキサンダーの首を狙う。
だが、その鎖は——
バキィィン!
白銀の大剣に完全に両断された。
鎖の破片が灰となって散る。
ガルシェバルが、ゆっくりと膝をついた。
胸に穿たれた巨大な傷口から、赤黒い炎が溢れ、しかしそれは次第に弱まっていく。
《灰の抱擁》を発動させようとした指先が、力なく震える。
アレキサンダーは無言で大剣を振り上げ—— 最後の回転を止めた。
刃先を、ガルシェバルの額に突きつける。
「終わりだ」
静かな宣告。
ガルシェバルはゆっくりと顔を上げ、琥珀と血の瞳でアレキサンダーを見つめた。
「……君に、灰にされるなら……それは、それで……美しい……」
最後に、彼は小さく、甘く笑った。
「愛してるよ……僕を、こんなにも冷たく、殺してくれる君を……」
次の瞬間、白銀の刃が、一閃。
ガルシェバルの巨躯が、音もなく前のめりに倒れた。
燃え尽きた灰の翼が、静かに崩れ落ちる。
回廊に、ただ冷たい風だけが吹き抜けた。
アレキサンダーは大剣をゆっくりと下ろし、変形を戻してペンダントに戻した。
白い瞳に、わずかな疲労の色が浮かぶ。
「……赤は、所詮、赤だ」
彼は静かに背を向け、回廊の闇へと歩き出した。
背後で、熾烈王の残骸は、ゆっくりと灰となって風に溶けていった。
——終わり。
巨大な円形の闘技場のような空間に、冷たい月光が鉄と大理石の床を青白く染めていた。
中央に立つのは、282cmの巨躯。 燃えた白金のような肌が、わずかに揺らめく熱気を放ち、周囲の空気を歪ませている。 ガルシェバル=ヴォル=カデス。熾烈王。
彼の前に、静かに佇む一人の男。
白髪。白い瞳。銀色の制服に身を包んだ長身の男——アレキサンダー。 銀警察署長にして、白銀荘の絶対的な統治者。 首から下げたアレサンドサイトのペンダントが、微かに銀光を放っている。
「…………君か」
アレキサンダーの声は低く、氷のように澄んでいた。
「戯言(愛)を語りながら、灰にするだけの化け物が。僕の街に、僕の民に、赤い毒を撒き散らすだけの……穢れた炎の怪物が」
ガルシェバルはゆっくりと微笑んだ。 その笑みは優しく、しかし底知れぬ熱を孕んでいる。
「君の言う『秩序』は、とても冷たいね。僕の炎は……もっと、温かいよ」
瞬間——
ガルシェバルの背で、二対の灰翼が赤く燃え上がった。 同時に両腕に絡みついていた焼け残りの鎖が、情念の炎を纏って解け、蛇のように宙を舞う。
《焼灼の鎖》
鎖の先端が、アレキサンダーの心臓を狙って飛んだ。
だが、次の瞬間。
ガキィィンッ!
銀色の閃光が空を裂く。
アレキサンダーの右手がペンダントを握り潰すように引きちぎり—— 一瞬で巨大なチェーンソー型白銀大剣へと変形した。
刃が回転を始め、甲高い金属の咆哮を上げる。
鎖は大剣の歯に弾かれ、火花を散らして弾き返される。
「…………無駄だ」
アレキサンダーは一歩踏み込み、距離を詰めた。
その動きは重厚でありながら、異様な速さだった。
ガルシェバルが拳銃《ガル=ガボス》を構えるより早く—— 白銀のチェーンソーが、横薙ぎに振り抜かれる。
ズガアアアアッ!
刃がガルシェバルの左腕を掠め、白金の肌に浅い銀の傷を刻んだ。
傷口から、赤黒い煙が立ち上る。
「……っ、はぁ……」
ガルシェバルが初めて、甘く震える吐息を漏らした。
「痛い……でも、気持ちいい……君の刃は、こんなにも純粋に、僕を『拒絶』している……」
彼の瞳が、狂おしいほどに輝いた。
《狂熱の審判》
空間が歪み、紅蓮の情念が爆ぜる。
アレキサンダーの視界が一瞬、赤く染まった。
心臓が、強制的に高鳴る。 体温が急上昇し、血管が熱を持つ錯覚。
だが——
アレキサンダーは白い瞳を細めただけだった。
「…………ふん」
彼は大剣を振り上げ、回転する刃を最大出力で唸らせた。
そして、一気に踏み込む。
ガルシェバルが《燃焼支配》を発動させようとした瞬間—— 白銀のチェーンソーが、真正面から巨躯の胸板を抉った。
ギィィィィンッ! ズガガガガガガッ!
金属と肉が引き裂かれる、悍ましい音。
ガルシェバルの法衣が千切れ、焦げた金属紋章が宙を舞う。
それでも彼は笑っていた。
「素晴らしい……君は、僕をこんなにも強く、拒む……愛してるよ、アレキサンダー……」
両腕の鎖が、最後の力を振り絞ってアレキサンダーの首を狙う。
だが、その鎖は——
バキィィン!
白銀の大剣に完全に両断された。
鎖の破片が灰となって散る。
ガルシェバルが、ゆっくりと膝をついた。
胸に穿たれた巨大な傷口から、赤黒い炎が溢れ、しかしそれは次第に弱まっていく。
《灰の抱擁》を発動させようとした指先が、力なく震える。
アレキサンダーは無言で大剣を振り上げ—— 最後の回転を止めた。
刃先を、ガルシェバルの額に突きつける。
「終わりだ」
静かな宣告。
ガルシェバルはゆっくりと顔を上げ、琥珀と血の瞳でアレキサンダーを見つめた。
「……君に、灰にされるなら……それは、それで……美しい……」
最後に、彼は小さく、甘く笑った。
「愛してるよ……僕を、こんなにも冷たく、殺してくれる君を……」
次の瞬間、白銀の刃が、一閃。
ガルシェバルの巨躯が、音もなく前のめりに倒れた。
燃え尽きた灰の翼が、静かに崩れ落ちる。
回廊に、ただ冷たい風だけが吹き抜けた。
アレキサンダーは大剣をゆっくりと下ろし、変形を戻してペンダントに戻した。
白い瞳に、わずかな疲労の色が浮かぶ。
「……赤は、所詮、赤だ」
彼は静かに背を向け、回廊の闇へと歩き出した。
背後で、熾烈王の残骸は、ゆっくりと灰となって風に溶けていった。
——終わり。
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