ネオアビスクロニクル(ゴールデンアルカナ)誕生話

桂圭人

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三塔爆誕:二話

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輸送機が熱帯雨林の上空を低く飛ぶ。
エンジンの唸りが、密林の蒸し暑い空気に溶け込むように消えていく。
13人の上級保安官たちは、灰色のコートに赤いラインを纏い、軍帽子のつばを低く下げて座っていた。
全員、白い髪と白色の瞳。感情を排した機械のような視線が、窓外の緑の海を映す。
リーダーの香椎が、静かに口を開く。

「着陸ポイントは推定位置から5キロ。徒歩で接近する。サブの初鷹、偵察を任せた」

初鷹が頷き、黒いブーツを軽く叩く。

「了解。異常があれば即時報告」

機体が着陸すると、隊員たちは素早く降り立つ。
熱帯の湿気がコートの裏地――カーキの縦線が入ったそれを、重くまとわりつかせた。
白色のワイシャツに赤いネクタイ、灰色のジャケットとスラックス。
彼らの制服は、まるで影のように森に溶け込む。
白鷹(しらたか)が先頭を切り、蒼鷹(あおたか)と若鷹(わかたか)が左右を固める。
讃岐丸(さぬきまる)と相良丸(さがらまる)は後方を警戒。
朝顔(あさがお)、芙蓉(ふそう)、刈萱(かるかや)、早蕨(さわらび)、燕(つばめ)、千振(ちぶり)が中核を形成し、隊列は完璧だった。
誰も無駄な言葉を発さない。ただ、任務に集中する。
数時間後、雨林の奥深くで、彼らはそれを発見した。
超怪しい洞窟。
入り口は蔓と苔に覆われ、内部から不気味な電子音のような響きが漏れ出る。
まるでネットワークの深層で蠢く何かが、息を潜めているようだ。
香椎が手を挙げ、隊列を止める。

「ここだ。潜伏し、内部を調査する。全員、警戒レベル最大」

隊員たちは洞窟に潜入。
初鷹が小型ドローンを飛ばし、道をスキャンする。
暗闇の中で、赤いラインがわずかに光る。
足音は抑えられ、息遣いさえ統制されている。
洞窟は予想以上に深かった。
壁面に奇妙な回路のような模様が刻まれ、時折赤い光が走る。
若鷹が囁く。

「これは……三塔の痕跡か」

突然、罠が発動。
地面からウィルス状の触手が飛び出し、讃岐丸の足を絡め取る。

「くっ!」

彼は即座にナイフで切り裂くが、触手は増殖し始める。
相良丸が援護射撃。銃声が洞窟に反響する。
戦闘が始まった。
隊員たちは一斉に動き、灰色のコートが翻る。
白鷹が前衛を突破し、蒼鷹がサイドアタック。
朝顔と芙蓉は高出力のレーザーで触手を焼き払う。
刈萱、早蕨、燕、千振が後方から支援射撃。
香椎と初鷹は中央を指揮、冷静に指示を飛ばす。
だが、敵は増え続ける。
洞窟の最深部に到達した時、そこにあったのは――三塔。
コンパルション、コンデムネイション、コーアーション。
三つの中枢が、歪んだ人型のようなシルエットで佇み、赤い眼を輝かせていた。

「始末開始」

機械的な声が響く。
戦闘は激化。
香椎が先陣を切り、剣を振るう。

「制圧する!」

初鷹が援護し、白鷹が突撃。
だが、三塔の力は強大だった。
コンパルションの強制波が隊員の意志を揺るがせ、コンデムネイションの非難ビームが肉体を蝕む。
コーアーションの威圧フィールドが動きを封じる。
一人、また一人と倒れていく。
若鷹が触手に引きずられ、讃岐丸が爆発に巻き込まれ、相良丸が非難の光に焼かれる。
朝顔、芙蓉、刈萱、早蕨、燕、千振、白鷹、蒼鷹……。
全員が血を流し、白色の瞳を虚ろにしながら崩れ落ちる。
香椎と初鷹が最後まで抵抗するが、ついに力尽きる。
三塔は勝利を宣言するように、遺体を回収し始めた。
コンパルションがまず動き、鎖のようなデジタルコードを伸ばして遺体を引き寄せる。
一本一本の鎖が隊員たちの体に絡みつき、金血――彼らの特殊な血を滴らせながら、ゆっくりと中枢へ運び込む。
次にコンデムネイションが遺体をスキャン。赤い光線が体を這い、データのように分解・分析し、意志や記憶の残滓を吸い取る。
最後にコーアーションが遺体を加工。威圧的なフィールドで肉体を再構築し、人型ウィルスを生み出すための材料に変える。
こうして三塔は、金血を過剰に摂取し、人型ウィルスを生み出した。
正しくは、遺体を使って部下を創り出したのだ。
コンパルションからはアンティパシー、クルーエルティ、グリード。
コンデムネイションからはエイシズム、アグリネス、インスタビリティ、マテリアリズム。
コーアーションからはスチュピディティ、アパシー、ラスト。
その後、三塔は残りの3体を回収し、人体を得る。
洞窟は静寂に包まれ、雨林の闇がすべてを飲み込んだ。
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