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三塔爆誕:一話
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白城島総合事務所、最上階。
全面ガラス張りの壁越しに広がるのは、鉛色の海と、絶え間なく打ち寄せる波の白泡だけだった。
室内は無音に近い。空調の微かな唸りと、土佐の指が金のモノクルを軽く叩く乾いた音だけが響く。
デスクの上に並ぶのは、十数件の緊急通報記録。
すべて「三塔」関連。
内容は多岐にわたるが、共通するのは「異常なウィルス拡散」「不可解な迷惑行為の連鎖」「ネットワークの深層で蠢く何か」だ。
土佐は白い髪を後ろに流し、金のモノクルを右目に押し当てた。
白色の瞳が、スクリーンに映る赤い警告アイコンを冷たく映し出す。
「またか……」
彼の声は低く、感情がほとんど乗っていない。
まるで機械がログを読み上げるようだった。
通報元はバラバラだ。
民間セキュリティ企業、複数の国家機関、匿名ハッカー集団、さらには闇サイトの管理人まで。
共通するのは「白城にしか対処できない」という一文。
土佐はゆっくり息を吐き、左手でデスクの端を叩いた。
瞬間、部屋の照明がわずかに暗くなり、壁面全体がホログラムディスプレイに変わる。
そこには、白城島上級保安官のリストが浮かび上がった。
全員、白い髪。
全員、白色の瞳。
全員、灰色のコートに赤いラインを纏った、同じ制服姿の男たち。
土佐の指がリストをスクロールする。
13名。
ちょうど一小隊分。
「香椎(かしい)をリーダーに、初鷹(はつたか)をサブ。残りは適宜配置……」
彼は独り言のように呟きながら、指を止めた。
画面に映る13人の顔写真が、静かに並んでいる。
誰も笑っていない。誰も怯えていない。ただ、無機質にこちらを見返しているだけだ。
「これで……最後になるかもしれないな」
土佐は小さく笑った。
しかしその笑みには、温かみなど微塵もなかった。
彼は椅子の背もたれに体を預け、通信パネルに触れた。
低く、命令口調で告げる。
「全上級保安官、13名。ただちに装備を整え、ブリーフィングルームへ集合せよ。任務内容は『三塔』――対象はコンパルション、コンデムネイション、コーアーションの三中枢。目的は調査および可能であれば制圧。失敗は許容しない。
――以上」
通信が切れると同時に、土佐はモノクルを外した。
白い瞳が、ガラス越しに広がる海を見つめる。
「生きて帰れると思うなよ」
彼の声は誰にも届かない。
ただ、波の音に飲み込まれるように消えていった。
数分後。
白城島の地下格納庫では、13人の男たちが整列していた。
灰色のコートに赤いライン、白色のワイシャツ、赤いネクタイ、黒いブーツの踵が、コンクリートに硬く響く。
香椎が一歩前に出た。
リーダーとして、静かに全員を見渡す。
「全員、聞こえているな」
声は低く、抑揚がない。
それでも、そこに宿る重みは、13人全員の背筋を伸ばさせた。
「僕たちは白城の刃だ。折れることも、曲がることも、錆びることもない。――行くぞ」
13の軍帽子のつばが、一斉に下がる。
赤いラインが、薄暗い照明の下で血のように光った。
ブリーフィングは短かった。
土佐からの映像資料、三塔の推定位置、既知の脅威レベル、そして――
「生還率の見込みは極めて低い」という一文。
誰も質問しなかった。
誰も動揺しなかった。
ただ、13人全員が、同じ白い瞳で前を見据えていた。
輸送機のエンジン音が、低く唸り始める。
白城島の滑走路に、黒い機影がゆっくりと動き出した。
全面ガラス張りの壁越しに広がるのは、鉛色の海と、絶え間なく打ち寄せる波の白泡だけだった。
室内は無音に近い。空調の微かな唸りと、土佐の指が金のモノクルを軽く叩く乾いた音だけが響く。
デスクの上に並ぶのは、十数件の緊急通報記録。
すべて「三塔」関連。
内容は多岐にわたるが、共通するのは「異常なウィルス拡散」「不可解な迷惑行為の連鎖」「ネットワークの深層で蠢く何か」だ。
土佐は白い髪を後ろに流し、金のモノクルを右目に押し当てた。
白色の瞳が、スクリーンに映る赤い警告アイコンを冷たく映し出す。
「またか……」
彼の声は低く、感情がほとんど乗っていない。
まるで機械がログを読み上げるようだった。
通報元はバラバラだ。
民間セキュリティ企業、複数の国家機関、匿名ハッカー集団、さらには闇サイトの管理人まで。
共通するのは「白城にしか対処できない」という一文。
土佐はゆっくり息を吐き、左手でデスクの端を叩いた。
瞬間、部屋の照明がわずかに暗くなり、壁面全体がホログラムディスプレイに変わる。
そこには、白城島上級保安官のリストが浮かび上がった。
全員、白い髪。
全員、白色の瞳。
全員、灰色のコートに赤いラインを纏った、同じ制服姿の男たち。
土佐の指がリストをスクロールする。
13名。
ちょうど一小隊分。
「香椎(かしい)をリーダーに、初鷹(はつたか)をサブ。残りは適宜配置……」
彼は独り言のように呟きながら、指を止めた。
画面に映る13人の顔写真が、静かに並んでいる。
誰も笑っていない。誰も怯えていない。ただ、無機質にこちらを見返しているだけだ。
「これで……最後になるかもしれないな」
土佐は小さく笑った。
しかしその笑みには、温かみなど微塵もなかった。
彼は椅子の背もたれに体を預け、通信パネルに触れた。
低く、命令口調で告げる。
「全上級保安官、13名。ただちに装備を整え、ブリーフィングルームへ集合せよ。任務内容は『三塔』――対象はコンパルション、コンデムネイション、コーアーションの三中枢。目的は調査および可能であれば制圧。失敗は許容しない。
――以上」
通信が切れると同時に、土佐はモノクルを外した。
白い瞳が、ガラス越しに広がる海を見つめる。
「生きて帰れると思うなよ」
彼の声は誰にも届かない。
ただ、波の音に飲み込まれるように消えていった。
数分後。
白城島の地下格納庫では、13人の男たちが整列していた。
灰色のコートに赤いライン、白色のワイシャツ、赤いネクタイ、黒いブーツの踵が、コンクリートに硬く響く。
香椎が一歩前に出た。
リーダーとして、静かに全員を見渡す。
「全員、聞こえているな」
声は低く、抑揚がない。
それでも、そこに宿る重みは、13人全員の背筋を伸ばさせた。
「僕たちは白城の刃だ。折れることも、曲がることも、錆びることもない。――行くぞ」
13の軍帽子のつばが、一斉に下がる。
赤いラインが、薄暗い照明の下で血のように光った。
ブリーフィングは短かった。
土佐からの映像資料、三塔の推定位置、既知の脅威レベル、そして――
「生還率の見込みは極めて低い」という一文。
誰も質問しなかった。
誰も動揺しなかった。
ただ、13人全員が、同じ白い瞳で前を見据えていた。
輸送機のエンジン音が、低く唸り始める。
白城島の滑走路に、黒い機影がゆっくりと動き出した。
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