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アルティメットファイナルバーニングファイア
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赤い薔薇が咲き乱れる中庭に、ひとりの少女が立っていた。
イデア=シュラウド。
その細い指先が、震える花弁にそっと触れる。
「……また、始まっちゃったんだね」
彼女の呟きに応えるように、風が薔薇を揺らした。
まるで、あの日の続きを告げる合図のように。
学園に戻ってきたイグニ=ハイドハントは、門をくぐった瞬間に胸がざわついた。
理由は分かっている。
——イデアが、ここにいる。
「……会わなきゃいけねぇよな。今度こそ、逃げずに」
彼の決意を遮るように、銀の髪が視界を横切る。
オルト=シュラウド。
姉を守るために作られた、純粋な瞳の少年。
「イグニさん。姉さんに近づくなら、覚悟してね」
その声は優しいのに、どこか鋭い。
イグニは苦笑し、拳を握りしめた。
「覚悟なら、とっくにできてる」
一方、学園の塔の上では、ディア=ソムニアが夜空を見上げていた。
その隣には、リリア=ヴァンルージュが微笑んでいる。
「また恋の季節が来たねぇ。誰が選ばれるんだろう」
「……選ばれる、か。私は、選ばれたいとは思わないよ」
ディアの声は静かで、どこか寂しげだった。
その背後で、セベク=ジグボルドが膝をつく。
「ディア様。あなたが望むなら、私は命を懸けてでも——」
「セベク。私は、誰かの“選択肢”になりたいわけじゃないの」
その言葉に、セベクは息を呑む。
リリアはただ、意味深に笑った。
そして、運命の夜、薔薇の庭に、六人が集まった。
イデアは震える声で言う。
「……どうして、みんな来るの。私は、誰も選べないのに」
イグニが一歩踏み出す。
「選ばなくていい。俺が、お前を選ぶからだ」
オルトが睨む。
「姉さんを困らせるな」
ディアが静かに微笑む。
「イデア。あなたの心が望むままに」
リリアは肩をすくめる。
「恋は自由さ。歪んでても、甘くてもね」
セベクは剣を胸に当て、誓う。
「あなたが涙を流すなら、私はその理由を断つ」
——赤い薔薇が、風に散った。
イデアは、ゆっくりと目を閉じる。
そして、震える唇で言った。
「……私が選ぶのは——」
風が止まり、世界が息を潜める。
「——“ここにいるみんな”だよ」
沈黙。
驚き。
そして、誰より先に笑ったのはリリアだった。
「ふふっ。そう来たか」
イグニは目を見開き、やがて照れくさそうに笑う。
「……らしいな、お前らしい」
ディアは安堵し、セベクは胸に手を当てた。
オルトは少しだけ頬を膨らませる。
「姉さん……ずるいよ」
イデアは涙を浮かべながら、微笑んだ。
「だって……みんな、大切なんだもん」
赤い薔薇が、夜空に舞う。
恋は歪で、甘く、そして残酷だ。
それでも——
彼らの物語は、ここからまた始まる。
赤い薔薇の檻が、再び燃え始めた。
運命の夜から数ヶ月。 イデアが「みんな」を選んだあの日から、学園は奇妙な平穏に包まれていた。 誰もが大切で、誰もが囚われ、誰もが自由を諦めた——そんな均衡。 だが、静けさは長く続かない。 静けさこそが、最も許せないものだったから。
中庭に、灼熱の渦が現れた。
白髪を炎のように逆立て、白瞳の奥に絶え間ない火焔が揺らぐ男。 黒赤のロングコートを赤ボタン全開で翻し、赤革ブーツが地面を焦がす。 目元を覆う逆V型の赤金マスクから、熱波が漏れ、空気を歪める。
インフェルノ=バーンアウト。 広域焼却戦線 指揮官。 そして、この檻を焼き尽くすために現れた、炎の化身。
火達磨の巨体が、ゆっくりと天を仰ぐ。
「そのつまんねぇ物語……終わらしてやるよ……」
彼の声は、炎の咆哮そのものだった。
「この檻も、愛も、選択も……全部、燃やしてやる!! これが僕の——アルティメットファイナルバーニングファイア!!!!!」
瞬間、世界が白く染まった。
インフェルノの体が内側から爆発的に膨張し、純白の炎が無限に増幅。
業火コアが臨界点を突破し、感情の全てを燃料に変換——
そして、彼自身が流星となった。 大咆哮が天を裂く。
「ヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
その咆哮と共に、空から流星群が降り注ぐ。
巨大な火球が空を裂き、六人のいる中心へ直撃。
衝撃波が先に来た。
地面が波打ち、赤い薔薇の残骸が一瞬で蒸発。
次に、光と熱。
視界が焼け、白くなる。
イデアの悲鳴、オルトの叫び、イグニの咆哮、セベクの誓い、ディアの静かな溜息、リリアの最後の笑い——
全てが、炎に飲み込まれる。
そして、着弾。
ドォォォォォォォォォン!!!
大地が割れた。
クレーターが誕生した。
直径数百メートル、深さ数十メートル。
学園の中心部が丸ごと抉り取られ、溶岩のような赤黒い溶融岩が底に溜まる。
衝撃波が学園全体を薙ぎ払い、塔が崩れ、壁が吹き飛び、赤い薔薇の迷宮は跡形もなく消滅。
空に舞い上がった灰と煙が、巨大な、かなとこ雲のように広がる。
地響きが続き、遠くの街まで揺れが伝わる。
インフェルノの体は、着弾と同時に完全に自壊。
火達磨の巨体が崩れ落ち、灰となって風に散る。
最後の残響だけが、クレーターの底で小さく燃え続ける。
「……最高に……楽しく……してやったぜ……」
六人の姿は、もうどこにもなかった。
溶け、蒸発し、灰に還り——
誰も選ばれず、誰も選ばず……ただ、情熱の爆発だけが、永遠の傷跡を残した。
クレーターの縁に、風が吹く。
灰が舞い、赤い残光が一瞬だけ輝く。
そして、静けさが訪れた。
インフェルノが最も嫌った、完全な静けさ。
だが、それは彼の勝利だった。
誰も逃げられず、誰も残らず、全てを焼き尽くした末に生まれた、究極の「決着」
炎上の剣は、自身を燃料に世界を焼いた。
イデア=シュラウド。
その細い指先が、震える花弁にそっと触れる。
「……また、始まっちゃったんだね」
彼女の呟きに応えるように、風が薔薇を揺らした。
まるで、あの日の続きを告げる合図のように。
学園に戻ってきたイグニ=ハイドハントは、門をくぐった瞬間に胸がざわついた。
理由は分かっている。
——イデアが、ここにいる。
「……会わなきゃいけねぇよな。今度こそ、逃げずに」
彼の決意を遮るように、銀の髪が視界を横切る。
オルト=シュラウド。
姉を守るために作られた、純粋な瞳の少年。
「イグニさん。姉さんに近づくなら、覚悟してね」
その声は優しいのに、どこか鋭い。
イグニは苦笑し、拳を握りしめた。
「覚悟なら、とっくにできてる」
一方、学園の塔の上では、ディア=ソムニアが夜空を見上げていた。
その隣には、リリア=ヴァンルージュが微笑んでいる。
「また恋の季節が来たねぇ。誰が選ばれるんだろう」
「……選ばれる、か。私は、選ばれたいとは思わないよ」
ディアの声は静かで、どこか寂しげだった。
その背後で、セベク=ジグボルドが膝をつく。
「ディア様。あなたが望むなら、私は命を懸けてでも——」
「セベク。私は、誰かの“選択肢”になりたいわけじゃないの」
その言葉に、セベクは息を呑む。
リリアはただ、意味深に笑った。
そして、運命の夜、薔薇の庭に、六人が集まった。
イデアは震える声で言う。
「……どうして、みんな来るの。私は、誰も選べないのに」
イグニが一歩踏み出す。
「選ばなくていい。俺が、お前を選ぶからだ」
オルトが睨む。
「姉さんを困らせるな」
ディアが静かに微笑む。
「イデア。あなたの心が望むままに」
リリアは肩をすくめる。
「恋は自由さ。歪んでても、甘くてもね」
セベクは剣を胸に当て、誓う。
「あなたが涙を流すなら、私はその理由を断つ」
——赤い薔薇が、風に散った。
イデアは、ゆっくりと目を閉じる。
そして、震える唇で言った。
「……私が選ぶのは——」
風が止まり、世界が息を潜める。
「——“ここにいるみんな”だよ」
沈黙。
驚き。
そして、誰より先に笑ったのはリリアだった。
「ふふっ。そう来たか」
イグニは目を見開き、やがて照れくさそうに笑う。
「……らしいな、お前らしい」
ディアは安堵し、セベクは胸に手を当てた。
オルトは少しだけ頬を膨らませる。
「姉さん……ずるいよ」
イデアは涙を浮かべながら、微笑んだ。
「だって……みんな、大切なんだもん」
赤い薔薇が、夜空に舞う。
恋は歪で、甘く、そして残酷だ。
それでも——
彼らの物語は、ここからまた始まる。
赤い薔薇の檻が、再び燃え始めた。
運命の夜から数ヶ月。 イデアが「みんな」を選んだあの日から、学園は奇妙な平穏に包まれていた。 誰もが大切で、誰もが囚われ、誰もが自由を諦めた——そんな均衡。 だが、静けさは長く続かない。 静けさこそが、最も許せないものだったから。
中庭に、灼熱の渦が現れた。
白髪を炎のように逆立て、白瞳の奥に絶え間ない火焔が揺らぐ男。 黒赤のロングコートを赤ボタン全開で翻し、赤革ブーツが地面を焦がす。 目元を覆う逆V型の赤金マスクから、熱波が漏れ、空気を歪める。
インフェルノ=バーンアウト。 広域焼却戦線 指揮官。 そして、この檻を焼き尽くすために現れた、炎の化身。
火達磨の巨体が、ゆっくりと天を仰ぐ。
「そのつまんねぇ物語……終わらしてやるよ……」
彼の声は、炎の咆哮そのものだった。
「この檻も、愛も、選択も……全部、燃やしてやる!! これが僕の——アルティメットファイナルバーニングファイア!!!!!」
瞬間、世界が白く染まった。
インフェルノの体が内側から爆発的に膨張し、純白の炎が無限に増幅。
業火コアが臨界点を突破し、感情の全てを燃料に変換——
そして、彼自身が流星となった。 大咆哮が天を裂く。
「ヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
その咆哮と共に、空から流星群が降り注ぐ。
巨大な火球が空を裂き、六人のいる中心へ直撃。
衝撃波が先に来た。
地面が波打ち、赤い薔薇の残骸が一瞬で蒸発。
次に、光と熱。
視界が焼け、白くなる。
イデアの悲鳴、オルトの叫び、イグニの咆哮、セベクの誓い、ディアの静かな溜息、リリアの最後の笑い——
全てが、炎に飲み込まれる。
そして、着弾。
ドォォォォォォォォォン!!!
大地が割れた。
クレーターが誕生した。
直径数百メートル、深さ数十メートル。
学園の中心部が丸ごと抉り取られ、溶岩のような赤黒い溶融岩が底に溜まる。
衝撃波が学園全体を薙ぎ払い、塔が崩れ、壁が吹き飛び、赤い薔薇の迷宮は跡形もなく消滅。
空に舞い上がった灰と煙が、巨大な、かなとこ雲のように広がる。
地響きが続き、遠くの街まで揺れが伝わる。
インフェルノの体は、着弾と同時に完全に自壊。
火達磨の巨体が崩れ落ち、灰となって風に散る。
最後の残響だけが、クレーターの底で小さく燃え続ける。
「……最高に……楽しく……してやったぜ……」
六人の姿は、もうどこにもなかった。
溶け、蒸発し、灰に還り——
誰も選ばれず、誰も選ばず……ただ、情熱の爆発だけが、永遠の傷跡を残した。
クレーターの縁に、風が吹く。
灰が舞い、赤い残光が一瞬だけ輝く。
そして、静けさが訪れた。
インフェルノが最も嫌った、完全な静けさ。
だが、それは彼の勝利だった。
誰も逃げられず、誰も残らず、全てを焼き尽くした末に生まれた、究極の「決着」
炎上の剣は、自身を燃料に世界を焼いた。
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