コンデムネイション特集

桂圭人

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アディシェスとコンデムネイション

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暗く冷たい地下施設の審判室。壁は無機質な鋼鉄で覆われ、天井から垂れる蛍光灯が淡い光を投げかけている。そこに二人の男が対峙していた。

一人は白を基調としたロングコートを纏った巨躯の男――コンデムネイション=ジャッジサーキット。彼の白色の瞳は感情を一切映さず、ただ対象を「誤り」として捉えている。白い手袋をはめた手には、金血レンズが輝く「断罪スキャナー」が握られていた。

もう一人は銀糸の刺繍が施された防護服の男――アディシェス。白髪を几帳面に分け、白色の虹彩が冷ややかに笑う。腰には解体メスと「リサージュ・カッター」が下げられ、常に淡い微笑を浮かべているが、その目は研究者のように冷徹だ。

部屋の中央には、拘束された捕虜がいた。統制局に逆らった反逆者。男は震えながら二人を見上げていた。

コンデムネイションが先に口を開いた。声は低く、氷のように凛とした冷酷さで響く。
「希望を抱いているな。理想を語っている。――誤りだ。修正しろ」

彼は断罪スキャナーを捕虜に向けた。金血レンズが赤く輝き、捕虜の心に潜む「希望」をスキャンし始める。男の瞳に浮かぶ光――家族の顔、自由への夢。それらが「不要な幻想」として検出されていく。

「理想は不要。真実だけが残ればいい」
コンデムネイションの指が引き金を引く寸前、アディシェスが静かに手を上げて制した。
「待て、ジャッジサーキット。面白い資料だ。この者の恐怖は……純度が高い」

アディシェスの白色の虹彩が細められる。捕虜の震えが激しくなり、部屋の空気がわずかに歪む。アディシェスの能力――恐怖吸引が発動していた。男の恐怖心が霧のように吸い込まれ、アディシェスの体を強化していく。防護服の表面がさらに冷気を帯び、周囲の光が揺らぐ。

捕虜は喘ぎながら叫んだ。
「お前らは……怪物だ! 感情がないのか!?」

アディシェスは淡く笑ったまま、首を傾げる。
「感情? それは不純物だ。君の恐怖は美しい。解析すれば、秩序の維持に役立つ。痛みは単なるデータ。共感など、不要な誤差に過ぎない」

コンデムネイションは無表情にスキャナーを構え直す。
「理想を削除する。希望は幻だ。残るのは真実のみ」

二人の視線が交錯した。コンデムネイションの白色の瞳と、アディシェスの冷やかな笑み。同じ白、しかし微妙に異なる。

アディシェスが囁く。
「君は理想を憎む。僕のは恐怖を喰らう。どちらも秩序のためだ。だが……君の断罪は、時に無駄が多い」

「誤りはない。修正は絶対だ」
コンデムネイションが即答する。

捕虜の悲鳴が響く中、アディシェスはリサージュ・カッターを手に取った。精神を共鳴させ、痛みを増幅させる拷問具。
「まずは僕が解析しよう。恐怖を最大化してから、君の光で削除すれば効率的だ」

コンデムネイションはわずかに眉を寄せるが、拒否はしない。ただ、冷たく告げる。
「時間は有限だ。理想は早く消せ」

二人は並んで捕虜に近づく。一人は希望を焼き払う白い審判者。一人は恐怖を吸い尽くす銀の観察者。

部屋に響くのは、絶望の叫びだけ。秩序の名の下に、二人の「純粋」が、ただ静かに人間性を削ぎ落としていく。

やがて、アディシェスの笑みがわずかに歪んだ。恐怖を吸いすぎたせいか、自身の精神に亀裂が入る予兆。だが彼は気づかず、ただ解析を続ける。

コンデムネイションはスキャナーを発射した。金血の光が希望を焼き、部屋を白く染める。
「修正完了。次なる誤りを探せ」

二人は背を向け、部屋を去る。残されたのは、無表情の仮面のような沈黙だけ。
――感情なき秩序は、いつか自らを断罪する日が来るのかもしれない。
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