1 / 4
アディシェスとコンデムネイション
しおりを挟む
暗く冷たい地下施設の審判室。壁は無機質な鋼鉄で覆われ、天井から垂れる蛍光灯が淡い光を投げかけている。そこに二人の男が対峙していた。
一人は白を基調としたロングコートを纏った巨躯の男――コンデムネイション=ジャッジサーキット。彼の白色の瞳は感情を一切映さず、ただ対象を「誤り」として捉えている。白い手袋をはめた手には、金血レンズが輝く「断罪スキャナー」が握られていた。
もう一人は銀糸の刺繍が施された防護服の男――アディシェス。白髪を几帳面に分け、白色の虹彩が冷ややかに笑う。腰には解体メスと「リサージュ・カッター」が下げられ、常に淡い微笑を浮かべているが、その目は研究者のように冷徹だ。
部屋の中央には、拘束された捕虜がいた。統制局に逆らった反逆者。男は震えながら二人を見上げていた。
コンデムネイションが先に口を開いた。声は低く、氷のように凛とした冷酷さで響く。
「希望を抱いているな。理想を語っている。――誤りだ。修正しろ」
彼は断罪スキャナーを捕虜に向けた。金血レンズが赤く輝き、捕虜の心に潜む「希望」をスキャンし始める。男の瞳に浮かぶ光――家族の顔、自由への夢。それらが「不要な幻想」として検出されていく。
「理想は不要。真実だけが残ればいい」
コンデムネイションの指が引き金を引く寸前、アディシェスが静かに手を上げて制した。
「待て、ジャッジサーキット。面白い資料だ。この者の恐怖は……純度が高い」
アディシェスの白色の虹彩が細められる。捕虜の震えが激しくなり、部屋の空気がわずかに歪む。アディシェスの能力――恐怖吸引が発動していた。男の恐怖心が霧のように吸い込まれ、アディシェスの体を強化していく。防護服の表面がさらに冷気を帯び、周囲の光が揺らぐ。
捕虜は喘ぎながら叫んだ。
「お前らは……怪物だ! 感情がないのか!?」
アディシェスは淡く笑ったまま、首を傾げる。
「感情? それは不純物だ。君の恐怖は美しい。解析すれば、秩序の維持に役立つ。痛みは単なるデータ。共感など、不要な誤差に過ぎない」
コンデムネイションは無表情にスキャナーを構え直す。
「理想を削除する。希望は幻だ。残るのは真実のみ」
二人の視線が交錯した。コンデムネイションの白色の瞳と、アディシェスの冷やかな笑み。同じ白、しかし微妙に異なる。
アディシェスが囁く。
「君は理想を憎む。僕のは恐怖を喰らう。どちらも秩序のためだ。だが……君の断罪は、時に無駄が多い」
「誤りはない。修正は絶対だ」
コンデムネイションが即答する。
捕虜の悲鳴が響く中、アディシェスはリサージュ・カッターを手に取った。精神を共鳴させ、痛みを増幅させる拷問具。
「まずは僕が解析しよう。恐怖を最大化してから、君の光で削除すれば効率的だ」
コンデムネイションはわずかに眉を寄せるが、拒否はしない。ただ、冷たく告げる。
「時間は有限だ。理想は早く消せ」
二人は並んで捕虜に近づく。一人は希望を焼き払う白い審判者。一人は恐怖を吸い尽くす銀の観察者。
部屋に響くのは、絶望の叫びだけ。秩序の名の下に、二人の「純粋」が、ただ静かに人間性を削ぎ落としていく。
やがて、アディシェスの笑みがわずかに歪んだ。恐怖を吸いすぎたせいか、自身の精神に亀裂が入る予兆。だが彼は気づかず、ただ解析を続ける。
コンデムネイションはスキャナーを発射した。金血の光が希望を焼き、部屋を白く染める。
「修正完了。次なる誤りを探せ」
二人は背を向け、部屋を去る。残されたのは、無表情の仮面のような沈黙だけ。
――感情なき秩序は、いつか自らを断罪する日が来るのかもしれない。
一人は白を基調としたロングコートを纏った巨躯の男――コンデムネイション=ジャッジサーキット。彼の白色の瞳は感情を一切映さず、ただ対象を「誤り」として捉えている。白い手袋をはめた手には、金血レンズが輝く「断罪スキャナー」が握られていた。
もう一人は銀糸の刺繍が施された防護服の男――アディシェス。白髪を几帳面に分け、白色の虹彩が冷ややかに笑う。腰には解体メスと「リサージュ・カッター」が下げられ、常に淡い微笑を浮かべているが、その目は研究者のように冷徹だ。
部屋の中央には、拘束された捕虜がいた。統制局に逆らった反逆者。男は震えながら二人を見上げていた。
コンデムネイションが先に口を開いた。声は低く、氷のように凛とした冷酷さで響く。
「希望を抱いているな。理想を語っている。――誤りだ。修正しろ」
彼は断罪スキャナーを捕虜に向けた。金血レンズが赤く輝き、捕虜の心に潜む「希望」をスキャンし始める。男の瞳に浮かぶ光――家族の顔、自由への夢。それらが「不要な幻想」として検出されていく。
「理想は不要。真実だけが残ればいい」
コンデムネイションの指が引き金を引く寸前、アディシェスが静かに手を上げて制した。
「待て、ジャッジサーキット。面白い資料だ。この者の恐怖は……純度が高い」
アディシェスの白色の虹彩が細められる。捕虜の震えが激しくなり、部屋の空気がわずかに歪む。アディシェスの能力――恐怖吸引が発動していた。男の恐怖心が霧のように吸い込まれ、アディシェスの体を強化していく。防護服の表面がさらに冷気を帯び、周囲の光が揺らぐ。
捕虜は喘ぎながら叫んだ。
「お前らは……怪物だ! 感情がないのか!?」
アディシェスは淡く笑ったまま、首を傾げる。
「感情? それは不純物だ。君の恐怖は美しい。解析すれば、秩序の維持に役立つ。痛みは単なるデータ。共感など、不要な誤差に過ぎない」
コンデムネイションは無表情にスキャナーを構え直す。
「理想を削除する。希望は幻だ。残るのは真実のみ」
二人の視線が交錯した。コンデムネイションの白色の瞳と、アディシェスの冷やかな笑み。同じ白、しかし微妙に異なる。
アディシェスが囁く。
「君は理想を憎む。僕のは恐怖を喰らう。どちらも秩序のためだ。だが……君の断罪は、時に無駄が多い」
「誤りはない。修正は絶対だ」
コンデムネイションが即答する。
捕虜の悲鳴が響く中、アディシェスはリサージュ・カッターを手に取った。精神を共鳴させ、痛みを増幅させる拷問具。
「まずは僕が解析しよう。恐怖を最大化してから、君の光で削除すれば効率的だ」
コンデムネイションはわずかに眉を寄せるが、拒否はしない。ただ、冷たく告げる。
「時間は有限だ。理想は早く消せ」
二人は並んで捕虜に近づく。一人は希望を焼き払う白い審判者。一人は恐怖を吸い尽くす銀の観察者。
部屋に響くのは、絶望の叫びだけ。秩序の名の下に、二人の「純粋」が、ただ静かに人間性を削ぎ落としていく。
やがて、アディシェスの笑みがわずかに歪んだ。恐怖を吸いすぎたせいか、自身の精神に亀裂が入る予兆。だが彼は気づかず、ただ解析を続ける。
コンデムネイションはスキャナーを発射した。金血の光が希望を焼き、部屋を白く染める。
「修正完了。次なる誤りを探せ」
二人は背を向け、部屋を去る。残されたのは、無表情の仮面のような沈黙だけ。
――感情なき秩序は、いつか自らを断罪する日が来るのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる