2 / 5
ガシャバとコンデムネイション
しおりを挟む
暗い地下施設の審問室。鉄の扉が重い音を立てて閉まる。部屋の中央に、拘束された男が膝をついていた。理想を語り、希望を叫び、国家の秩序を乱した反逆者だ。
扉の向こうから、二つの足音が近づいてくる。
まず入室したのはガシャバだった。後ろ刈り上げの白髪が蛍光灯の下で冷たく光り、前髪が表情を覆い隠している。パツパツの軍服に身を包み、帽子をわずかに傾けて無表情に立っている。白い瞳は感情を一切映さない。
その後ろから、コンデムネイション=ジャッジサーキット——が静かに歩み寄る。白いロングコートの裾が床を滑り、金のボタンが整然と並ぶ。白い髪、白い瞳、白手袋をはめた手が、腰の「断罪スキャナー」を軽く撫でる。白金のサイバーゴーグルが、かすかに光を放っている。
ガシャバが短く告げた。
「始末しろ」
コンデムネイションは囚人を見下ろす。ゴーグルが低く唸りを上げ、金血レンズが赤く輝き始める。
「希望を語ったな」
凛とした、氷のような声。
「理想を振りかざし、秩序を乱した」
囚人が震える声で叫ぶ。
「俺たちはただ……未来を信じただけだ! お前たちみたいな機械みたいな奴らに、何がわかる!」
コンデムネイションの唇が、わずかに動く。笑みではない。断罪の予兆だ。
「理想は不要。真実だけが残ればいい」
ガシャバが一歩前に出る。冷ややかな声で、短く。
「無駄だ。抵抗は痛みを増やすだけだ」
囚人が最後の力を振り絞って叫ぶ。
「痛みなんか怖くない! お前たちに心がないだけだ!」
その瞬間、断罪スキャナーが起動した。金血レンズが囚人の胸を照らす。スキャンが完了するまでの数秒、部屋に重い沈黙が落ちる。
「誤りだ」
コンデムネイションが静かに告げる。
「希望——検出。削除対象」
破壊光が放たれた。赤い光線が囚人の体を貫く。叫び声は一瞬で途切れ、肉体は灰のように崩れ落ちる。理想も希望も、跡形もなく消し去られた。
ガシャバは崩れた残骸を一瞥し、すぐに背を向ける。
「処理完了だ」
コンデムネイションはスキャナーを静かに収め、白手袋を軽く鳴らす。
「修正しろ。次も、誤りは許さない」
二人は無言で室を出る。背後で、自動清掃システムが動き始める。
廊下を並んで歩きながら、ガシャバがぽつりと漏らす。
「痛みは必要悪だ」
コンデムネイションは答えない。ただ、白い瞳を前方に向けたまま、静かに頷いた。
秩序は、今日も守られた。
冷徹な二人の手によって。
扉の向こうから、二つの足音が近づいてくる。
まず入室したのはガシャバだった。後ろ刈り上げの白髪が蛍光灯の下で冷たく光り、前髪が表情を覆い隠している。パツパツの軍服に身を包み、帽子をわずかに傾けて無表情に立っている。白い瞳は感情を一切映さない。
その後ろから、コンデムネイション=ジャッジサーキット——が静かに歩み寄る。白いロングコートの裾が床を滑り、金のボタンが整然と並ぶ。白い髪、白い瞳、白手袋をはめた手が、腰の「断罪スキャナー」を軽く撫でる。白金のサイバーゴーグルが、かすかに光を放っている。
ガシャバが短く告げた。
「始末しろ」
コンデムネイションは囚人を見下ろす。ゴーグルが低く唸りを上げ、金血レンズが赤く輝き始める。
「希望を語ったな」
凛とした、氷のような声。
「理想を振りかざし、秩序を乱した」
囚人が震える声で叫ぶ。
「俺たちはただ……未来を信じただけだ! お前たちみたいな機械みたいな奴らに、何がわかる!」
コンデムネイションの唇が、わずかに動く。笑みではない。断罪の予兆だ。
「理想は不要。真実だけが残ればいい」
ガシャバが一歩前に出る。冷ややかな声で、短く。
「無駄だ。抵抗は痛みを増やすだけだ」
囚人が最後の力を振り絞って叫ぶ。
「痛みなんか怖くない! お前たちに心がないだけだ!」
その瞬間、断罪スキャナーが起動した。金血レンズが囚人の胸を照らす。スキャンが完了するまでの数秒、部屋に重い沈黙が落ちる。
「誤りだ」
コンデムネイションが静かに告げる。
「希望——検出。削除対象」
破壊光が放たれた。赤い光線が囚人の体を貫く。叫び声は一瞬で途切れ、肉体は灰のように崩れ落ちる。理想も希望も、跡形もなく消し去られた。
ガシャバは崩れた残骸を一瞥し、すぐに背を向ける。
「処理完了だ」
コンデムネイションはスキャナーを静かに収め、白手袋を軽く鳴らす。
「修正しろ。次も、誤りは許さない」
二人は無言で室を出る。背後で、自動清掃システムが動き始める。
廊下を並んで歩きながら、ガシャバがぽつりと漏らす。
「痛みは必要悪だ」
コンデムネイションは答えない。ただ、白い瞳を前方に向けたまま、静かに頷いた。
秩序は、今日も守られた。
冷徹な二人の手によって。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる