コンデムネイション特集

桂圭人

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シェリダーとコンデムネイション

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無機質な白の回廊がどこまでも続く純白秩序局の深部。そこに、二つの白い影が対峙していた。

一人は銀警官シェリダー。白銀の鎧が光を反射し、胸の翼付き十字架が冷たく輝く。彼の瞳は透き通る白で、感情の揺らぎを一切許さない。

もう一人はコンデムネイション=ジャッジサーキット。強靭な白人男性の体躯を白いロングコートが覆い、金のボタンが胸から足元まで整然と並ぶ。白い手袋をはめた手が、腰に下げた「断罪スキャナー」を握っていた。白金のサイバーゴーグルが、無機質な光を放つ。

シェリダーは静かに口を開いた。
「コンデムネイション=ジャッジサーキット。君がここに呼ばれる理由は一つだ。局は、君の『断罪』の基準に、わずかな誤差を検出した」

コンデムネイションは微動だにせず、凛とした声で応える。
「誤差? 誤りとは認めない。ボクのスキャナーは、希望と理想を『不要な幻想』として正確に削除している。それが真実への最短経路だ」

シェリダーの白い瞳が、わずかに細められた。
「理想を不要と断じるその行為自体が、純白の秩序に反する可能性がある。君は知っているはずだ。秩序とは、白以外の一切を排除すること。そして白そのものに、余計な『解釈』を加えることも汚れとなる」

コンデムネイションはゆっくりと断罪スキャナーを掲げた。金血のレンズが、淡い光を灯す。
「ならば、銀警官よ。キミの正義もスキャンしてみよう。――『純白の秩序』とは、何を根拠に絶対なのか? キミが信じるその白は、本当に汚れを知らないのか?」

シェリダーの表情に、初めて亀裂が入った。心の奥底に潜む迷いの種が、わずかに疼く。
「……黙れ。それは、秩序そのものが定めた真理だ」

「真理?」
コンデムネイションの声は氷のように冷たい。
「理想は不要。真実だけが残ればいい。キミの秩序も、所詮は誰かの『理想』ではないのか? スキャン結果――誤りだ。修正しろ」

金血レンズが輝き、破壊光がシェリダーに向かって放たれようとする。だがその瞬間、シェリダーの能力「純白の秩序」が発動した。回廊の壁がさらに白く輝き、空気中のわずかな色すら吸い取られていく。

「異端を拒む」
シェリダーの声は低く、静かだ。
「君が白の外に立つなら、排除するまでだ」

二人の白が激突する。コンデムネイションのスキャナーが放つ光は、シェリダーの領域に触れた瞬間、色を失って拡散した。逆にシェリダーの聖剣セラフィエルが抜かれ、白銀の刃がコンデムネイションのコートを切り裂こうとする。

だが、刃は止まった。

コンデムネイションのゴーグルが、シェリダーの胸の紋章――翼を持つ白い十字架を映している。
「堕天の象徴だな、銀警官。キミの起源は、純白などではない。異端の血が流れている。それを隠すために、キミは白に執着する」

シェリダーの手が震えた。能力の輝きが、わずかに揺らぐ。
「……嘘だ」

「嘘ではない。スキャン済み。キミの迷い――それこそが、最大の誤りだ」

シェリダーは剣を握りしめ直す。だが、その刃はすでに純白の輝きを失い始めていた。
「僕は……秩序そのものだ。汚れなど……」

「理想は不要だ」
コンデムネイションは静かに告げた。
「キミの秩序も、ただの幻想。真実だけが残ればいい」

回廊は沈黙に包まれた。二人の白は、互いを映し、互いを否定し合う。純白の秩序は、内部から崩れ始めていた。
どちらが正しいのか――それは、まだ誰にもわからない。

翌日。
純白の秩序所属の大型不純物回収車がコンデムネイションの遺体を回収していた。
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