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序章「十二の星、一つの意志」
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ゾディアックオーダー本部、評議会場。
円形のテーブルを囲むように、十二の椅子が並んでいる。
そこに座るのは、十二星座の力を受け継ぐ代表者たち――人類を恋愛から守るために選ばれた者たちだ。
静寂を破るように、ひとりの男が立ち上がった。
「――第三百八十二回評議会を始める」
天秤座、リブリウス。
この場を束ねる議長の言葉に、全員が自然と背筋を正す。
窓際では、射手座のサジタリオンが外を眺めていた。
星を狩る者らしい、どこか落ち着きのない視線。
「……また会議か」
吐き捨てるような呟き。
「真理を求めるなら、部屋の外に出るべきだと思うがね」
「秩序を保つための会議だ、サジタリオン」
山羊座のカプリコルヌが鋭く睨み返す。
「お前のような放浪者には理解できないだろうが」
「……好きに言え」
サジタリオンは肩をすくめ、それ以上は応じなかった。
水瓶座のアクアリウムが、淡々と口を開く。
「無意味な対立は非効率。議題に移行すべき」
感情の揺らぎを感じさせない声は、機械のように冷たい。
「……ああ、また始まった……」
魚座のピスシアが、夢見るように呟いた。
「現実と夢の境界が、ゆらいでる……」
「ピスシア、集中しろ」
リブリウスの呼びかけに、彼女ははっとして目を開ける。
「……はい」
部屋の隅。
蠍座のスコリスは、誰とも目を合わせず静かに座っていた。微笑んでいる。
だが、その笑みの奥に何があるのか――誰にも分からない。
「本題に入る」
リブリウスが告げる。
「我々ゾディアックオーダーの使命を、改めて確認する」
彼は一度、言葉を区切った。
「第一の使命。――人々の感情を、命をかけて守ること。喜び、怒り、哀しみ、楽しさ。それらは人間が人間として生きるために不可欠なものだ」
そして、間を置いて。
「第二の使命。――恋愛を、この世から完全に消し去ること」
場の空気が、わずかに張り詰める。
「恋愛は人を狂わせる。喜怒哀楽を超え、制御不能に暴走する感情だ。それは時に、人を破滅させる。我々は、この二つの使命を果たすために集められた」
リブリウスは、十二人を見渡した。
「十二の星座、一つの意志。それが、ゾディアックオーダーだ」
沈黙の中、牡羊座のアリエスが口を開く。
「……本当に、恋愛を消せるのか?」
「人間の感情だぞ」
「できる」
即答したのはカプリコルヌだった。
「秩序と教育によって、人は変えられる。恋愛を禁じ、理性を教え込めば、いずれ消える」
「……でもさ」
双子座のジェミニア――ジェミエルとヴィレルが、同時に呟く。
「恋愛がなくなったら、世界って退屈じゃない?」
「退屈かもしれない」
リブリウスは否定しなかった。
「だが、平和だ。争いも、嫉妬も、執着もない」
獅子座のレオニスが腕を組む。
「要するに、俺たちは感情の管理者ってわけか」
「守るものと、消すものを選ぶ存在だ」
「そうだ」
蟹座のキャンサルが、静かに問いを投げる。
「……恋愛を消すことで、他の感情に影響は出ませんか?」
「可能性はある」
リブリウスは認めた。
「だが最小限に抑える。我々には医療と調整の技術がある」
乙女座のヴァルゴリアが目を伏せる。
「……それは、神の領域では?」
「人の感情を操る行為は」
「かもしれない」
リブリウスは即座に返した。
「だが我々は、人類のためにそれを行う」
射手座のサジタリオンが、ふっと笑う。
「真理は矢のごとし、か。だが議長。その矢が何を射抜いた後、何が残る?」
「……何が残る?」
「さあな。射ってみなきゃ分からない」
水瓶座のアクアリウムが、空間にデータを投影する。
「議論は不要。統計が示している」
恋愛が原因の犯罪、自殺、精神疾患――
冷酷な数字が、次々と並ぶ。
「結論。恋愛撲滅は、論理的帰結」
沈黙。
「……でも」
ピスシアが、夢見るように呟いた。
「夢の中では、みんな恋をしてる。それって、きれいだと思う」
「夢は夢だ」
カプリコルヌが切り捨てる。
「現実には秩序が必要だ」
その時――
「くすくす」
スコリスが、笑った。
「……何がおかしい」
「いえ」
彼女は首を振る。
「私たち、恋愛を消そうとしているでしょう?」
「でも……私たちは、本当に恋を知っているのかしら」
場が凍りつく。
「知らないものを、消せるの?」
「それとも――知っているから、消したいの?」
「……スコリス」
リブリウスの視線が鋭くなる。
「何が言いたい」
「ただの独り言です」
そして、警報が鳴り響いた。
円形のテーブルを囲むように、十二の椅子が並んでいる。
そこに座るのは、十二星座の力を受け継ぐ代表者たち――人類を恋愛から守るために選ばれた者たちだ。
静寂を破るように、ひとりの男が立ち上がった。
「――第三百八十二回評議会を始める」
天秤座、リブリウス。
この場を束ねる議長の言葉に、全員が自然と背筋を正す。
窓際では、射手座のサジタリオンが外を眺めていた。
星を狩る者らしい、どこか落ち着きのない視線。
「……また会議か」
吐き捨てるような呟き。
「真理を求めるなら、部屋の外に出るべきだと思うがね」
「秩序を保つための会議だ、サジタリオン」
山羊座のカプリコルヌが鋭く睨み返す。
「お前のような放浪者には理解できないだろうが」
「……好きに言え」
サジタリオンは肩をすくめ、それ以上は応じなかった。
水瓶座のアクアリウムが、淡々と口を開く。
「無意味な対立は非効率。議題に移行すべき」
感情の揺らぎを感じさせない声は、機械のように冷たい。
「……ああ、また始まった……」
魚座のピスシアが、夢見るように呟いた。
「現実と夢の境界が、ゆらいでる……」
「ピスシア、集中しろ」
リブリウスの呼びかけに、彼女ははっとして目を開ける。
「……はい」
部屋の隅。
蠍座のスコリスは、誰とも目を合わせず静かに座っていた。微笑んでいる。
だが、その笑みの奥に何があるのか――誰にも分からない。
「本題に入る」
リブリウスが告げる。
「我々ゾディアックオーダーの使命を、改めて確認する」
彼は一度、言葉を区切った。
「第一の使命。――人々の感情を、命をかけて守ること。喜び、怒り、哀しみ、楽しさ。それらは人間が人間として生きるために不可欠なものだ」
そして、間を置いて。
「第二の使命。――恋愛を、この世から完全に消し去ること」
場の空気が、わずかに張り詰める。
「恋愛は人を狂わせる。喜怒哀楽を超え、制御不能に暴走する感情だ。それは時に、人を破滅させる。我々は、この二つの使命を果たすために集められた」
リブリウスは、十二人を見渡した。
「十二の星座、一つの意志。それが、ゾディアックオーダーだ」
沈黙の中、牡羊座のアリエスが口を開く。
「……本当に、恋愛を消せるのか?」
「人間の感情だぞ」
「できる」
即答したのはカプリコルヌだった。
「秩序と教育によって、人は変えられる。恋愛を禁じ、理性を教え込めば、いずれ消える」
「……でもさ」
双子座のジェミニア――ジェミエルとヴィレルが、同時に呟く。
「恋愛がなくなったら、世界って退屈じゃない?」
「退屈かもしれない」
リブリウスは否定しなかった。
「だが、平和だ。争いも、嫉妬も、執着もない」
獅子座のレオニスが腕を組む。
「要するに、俺たちは感情の管理者ってわけか」
「守るものと、消すものを選ぶ存在だ」
「そうだ」
蟹座のキャンサルが、静かに問いを投げる。
「……恋愛を消すことで、他の感情に影響は出ませんか?」
「可能性はある」
リブリウスは認めた。
「だが最小限に抑える。我々には医療と調整の技術がある」
乙女座のヴァルゴリアが目を伏せる。
「……それは、神の領域では?」
「人の感情を操る行為は」
「かもしれない」
リブリウスは即座に返した。
「だが我々は、人類のためにそれを行う」
射手座のサジタリオンが、ふっと笑う。
「真理は矢のごとし、か。だが議長。その矢が何を射抜いた後、何が残る?」
「……何が残る?」
「さあな。射ってみなきゃ分からない」
水瓶座のアクアリウムが、空間にデータを投影する。
「議論は不要。統計が示している」
恋愛が原因の犯罪、自殺、精神疾患――
冷酷な数字が、次々と並ぶ。
「結論。恋愛撲滅は、論理的帰結」
沈黙。
「……でも」
ピスシアが、夢見るように呟いた。
「夢の中では、みんな恋をしてる。それって、きれいだと思う」
「夢は夢だ」
カプリコルヌが切り捨てる。
「現実には秩序が必要だ」
その時――
「くすくす」
スコリスが、笑った。
「……何がおかしい」
「いえ」
彼女は首を振る。
「私たち、恋愛を消そうとしているでしょう?」
「でも……私たちは、本当に恋を知っているのかしら」
場が凍りつく。
「知らないものを、消せるの?」
「それとも――知っているから、消したいの?」
「……スコリス」
リブリウスの視線が鋭くなる。
「何が言いたい」
「ただの独り言です」
そして、警報が鳴り響いた。
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