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しおりを挟む「エミリア・・・今」
コンコンコン
あまりにもおかしな声が自分の意図してない形で出てしまったことに衝撃を受けたけど、それでも、久しぶりに聞いた自分の声に対する感動よりも、ドアの向こうから何も聞かずそのまま2回目のドアをノックする音が妙に不気味で怖くなってしまった私は、無意識に太ももで彼の腰をぎゅっと挟んでいた。
(お・・・おばけ?)
そしてちょうど同じタイミングで上体を起こしたリクールは掴んでいた私の手首から手を離し、今度は喋ろうとして開けた私の口を手で塞いだ。
「っ・・・・」
ドアの外からの会話は耳を澄ましても何も聞こえない。
警戒するような人がこの屋敷内にいるとは思えないけど…。
自身の口の前に人差し指を立て、静かにと私に目配せをしてきたリクールは、縦に頷いた私を見て口から手を離してくれた。
「すいません。せっかく声が戻ったのに、はしゃいで喜べなくて」
私しか聞こえないような小さな声で喋るリクールに、私は首を横に振った。ドアの外にいる人が誰なのか意識をそっちに持っていこうとした私は、視線もついでにドアの方に移した。
(・・・・どうしよ・・・心臓が・・・)
「エミリア」
「っ・・・・」
ドキドキし始めたのはおばけのせいだ、誰かがいきなりドアをノックしたからだと自分に言い聞かせた。そして体を起こしたリクールとの距離が近いのは必然的なものだから仕方がない、早く心臓の音が静かになってほしい。そう思ったのに、私を支えるためか腰に回った彼の手が余計にその距離を縮めて、私の心臓は壊れそうになった。
「ドアのところにいるのはルキアですね。訪問の予定も無いのにどなたかが訪ねてきたようです」
「そ・・・そうなんですね」
結局今居る位置から解放されることはなく、何故かそのままリクールの上に跨って座り続けている。聞こえてるかも分からない返事をした私は、顔を彼に向けることができず、ドアのほうを見つめていた。
(・・・体・・おかしい)
してる息も、喋る声も、身体の体温も、いつもと変わらないのに。
「気になりますか?」
「・・・い、いえ・・」
あの人のせいでこんな顔になってしまったのに、泣き腫らしたあとの顔なんて、見られたくない。無駄な努力だとしても必死に顔を隠そうとしている私の気持ちを分かってほしい。
不自然に顔をずっとドアのほうに向けてる私に、リクールは少し切なそうに呟いた。
「少なくとも嫌われてはないと思っていたのですが、僕の勘違いでしょうか」
「ち、違います!!そうではなくて!!」
あぁ…もぅ
「は、恥ずかしくて・・・」
「恥ずかしい?なぜ?」
「っ・・・め・・・眼鏡・・・おじさんの・・・せいです」
「・・・・眼鏡おじさん?」
あんな手紙を書いて、誕生日に私を泣かせるなんて。
おかけでこんなブサイクになってしまったじゃないか。
『クソ眼鏡』なんて、二度と言えなくなってしまったから、可愛らしく変身させてみたけど、きっとあの人には『は?』って顔されそうだ。
(仕返しに・・・なってないかも)
せっかくおめかししてもらって、初めてあんなにたくさんの人達に「おめでとう」を言われたのに。
「あぁ、パーシーのことですか?」
上手く通じたのか、名前を言ったリクールは、おかしそうに笑いだした。
「はい・・・あの人の手紙で・・・たくさん泣いてしまったので・・・顔が・・」
「気にしないでください。エミリアはいつでも可愛いですから」
彼が発する一言一言に、たまに息のしかたを忘れそうになる。こんなことをさらっと言うなんて一体何を考えてるんだか。
「・・・手紙を読んで泣かなかったのですか」
「そうですね、僕は泣きませんでした。少し感傷的にはなりましたが」
「そう・・・ですか」
「はい。それと、声が戻ったので念のため聞きますが、この前ご相談した件は考えましたか。声が戻ったらどうするか聞きましたが、僕は前にも言ったとおり貴方の意見を尊重しますので」
こんな格好で、なんで平然としていられるのだろうか。
…もしかして、なんか魔法かけられてる?
私だけが心臓ドキドキして、恥ずかしくて、息が上がりそうになってるの。
(こんなの不公平だ)
「・・・め・・・眼鏡おじさん・・の手紙に・・・書いてありました・・・」
いつの間にかドアの方を見るのをやめた私は、恋人同士でもないのにこんな至近距離で彼のことを見つめられないと、下を向いた。
「私は・・・お金には・・困らないそうです」
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