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しおりを挟む次の日は俺の家で和樹と司と勉強だ。晩メシの材料は買ってあったけどジュースやらお菓子やらも買って帰る。荷物は和樹が全部持ってくれた。
「料理を作ってもらうんだから当然だよ」なんて言ってさ。
さすがモテるイケメンは違うな。司は女子にしかそういうスペックは発揮しないらしい。それはそれで流石と言えるかもしれないが。
そして数学と出汁巻きと肉じゃがで盛り上がった。ほうれん草の胡麻和えとわかめと豆腐の味噌汁もつけて栄養のバランスも考えたぜ。受験生は健康に気をつけないといけないからな。和樹は食器を出したり料理を運んだりしてくれる。ハイスペックなイケメンは気が利く。
「出汁巻きうまいー。あつあつだー」
「あったかい出汁巻きうまいな。弁当の時に冷めてるのを食うのとまた違う」
「おう、弁当用はちょっと濃いめに味をつけてるんだ。そんで、今食べてるあったかいのは出汁の量を増やして口当たりが柔らかくなるようにしてある」
「すごいな、あったかいのと冷たいので違うんだ。いろいろ考えてくれてありがとう」
和樹がイイ笑顔を返してくれる。司は食べるのに夢中だ。それもうれしいぜ。
「肉じゃがうめえー」
「おい司、じゃがいもばっかり食うんじゃねえよ」
「司、お前、肉は少なくていいのか?」
「俺は肉の味がしみたじゃがいもが好きなんだー」
「へええ?」
「亮の作る晩メシうまくて幸せだな」
「俺もしあわせー」
「喜んでもらえて良かったぜ」
勉強もはかどったし、俺の作った晩メシも好評で俺も幸せだと思った。
「じゃあ俺たちそろそろ帰るな。1人で大丈夫か」
「俺は子どもじゃねえぞ1人で留守番ぐらいできる。もうすぐ兄貴も帰ってくるだろうし大丈夫だ」
「じゃあまた明日。晩メシうまかった。また作ってくれよな」
「おう、また作ってやるからいっしょに勉強しようぜ」
「うん、じゃあ明日なー今度は何がいいかなー」
笑顔でバイバイしてうれしそうに笑う和樹と司を見送った。
和樹と司が帰ってしばらくしてから兄貴が帰ってきた。
酒も飲んでないのに目じりが赤くてふわふわしてご機嫌そうである。
ソファに向かい合わせになるように座らされて神妙に話を切り出された。
「亮には世話になったけどやっと結婚のことオープンにできるからな。ありがとう。料理はこれからも教えてやってくれな」
兄貴から!感謝の言葉が!
「なんだよやけに機嫌がいいな。ついに理香とちゅうでもしたのか」
「亮、おっお前なぜそれを!」
驚愕に目を見開き慌てふためく兄貴を見て俺は脱力した。わかりやすすぎるだろう。
「いや、態度に出すぎなんだよ。んでそんなこと図星でもべらべらしゃべんじゃねえ。誤魔化しとけ」
「お前が聞いたんだろうが!」
兄貴と理香が幸せで何よりである。
リア充爆発しろ。
次の朝、俺はご機嫌で学校へ向かった。もう理香は俺のカノジョじゃないとかどうとか言わなくてもよくなったのだ。兄貴のカノジョなんだーって言っていいんだ。
「亮ちゃんおはよー昨日はありがとうなー」
司が明るく声をかけてくる。
「おはよう。楽しかったなあ。また集まろうぜ」
めずらしく時間ぎりぎりに和樹が教室に入ってきた。
「あー和樹おはよー」
「和樹おはよう」
「あ、おはよう…」
和樹と目が合わない。あれ?昨日はあんなにご機嫌で帰ったのにどうしたんだ?
その後も和樹はずっとうわの空で話しかけても生返事を返すばかりだった。時々俺の方をチラチラ見てるのに目は合わせないようにしてる。
俺、何かしましたか?
俺の作った晩メシで腹が痛くなったとか?司は大丈夫そうだけどな。
和樹は弁当を食ってる時もぼんやりしてた。だけど食い終わってから弁当箱を洗っているところで肩をつかまれた。
「亮、俺、亮に話があるんだけど、今日の放課後時間あるかな?」
「改まって何だよ。ここじゃできねえ話か?」
「ああ、頼む」
「わかった。特に用事はねえから一緒に帰るか」
改まった話とは何だろうかと午後の授業中に考えてしまった。あんなに思い詰めたような和樹の顔を見るのは初めてで俺の気持ちはどんどん不安定になっていった。
もしかしたら志望校を変えるとかそんな話だろうか。昨日はそんなことを言ってなかったけど家に帰ってから何かあったのかもしれない。全然違う地方の大学に行ってしまうとなればもう会うのも難しくなる。
心がつきんと痛くなる。和樹と会えなくなるなんて嫌だな。そんな気持ちがじわじわと上がってきて息苦しくなってきた。
俺たちが目指している大学は自宅からは少し遠いのでアパートを借りてそこから通うつもりだった。俺と兄貴が住んでいるマンションは兄貴が理香と新婚生活を送るために使うのでどちらにしても出て行かなければならないしちょうどいいと思っていた。
司もいつもつるんでる仲間だけどつきあってる女の子がいるときはそっちに行ってしまう。だけど和樹はいつも俺の側にいてくれた。
和樹はずっと俺の側にいてくれると思い込んでいたことに気づいた。
一人暮らしになっても和樹が近くにいれば寂しくないと思ってたんだ。
あれ、よく考えたら和樹にはずっと好きな人がいるんだったな。
兄貴にも司にもそして和樹にも誰か側にいるんだ。
誰も側にいないのは俺だけだったんだ。まあ仕方ねえか。仕方ねえのかな。
何も確定的なことは言われていないのに俺はものすごく悲観的になってしまった。
俺は兄貴と理香の結婚の一件から解放されるとともに自分が何も決まっていない状況だということに気づいてしまったんだ。そして情緒不安定になっていたんだと思う。
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