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18 体育祭3
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混乱しながらもいつも通りのやりとりをしながら昼飯を食う。高林も口数は少ないものの、違和感なく馴染んでいて、北斗のウザ絡みもいい感じにいなしている。
ちょっとこれまでの高林とは違いすぎるので、前髪で顔が隠れてることをいいことに別人に入れ替わってるんじゃねぇかと一瞬疑ったが、あのイケボは間違いなく高林である。わからん。何がどうなってるのかわからん。けど、考えてもわからない以上、考えるのをやめよう。そう、いいことなんだから。
わいわい騒ぎながら食べていると、時間が過ぎるのはあっという間だった。
「裕也と高林はこの後すぐ二人三脚だよね? 頑張ってね」
「おう。高林、そろそろ行くか」
颯太に言われ時計を確認すると、もうすぐ昼休みが終わる頃だった。午後イチの競技なので昼休み終了前に集合場所に向かわなければならない。高林は俺に応じてこくりと頷く。
「おっし! 応援は任せとけ!」
「いや、北斗敵チームじゃん」
「お前ら二人が一位を取ったところで、俺らの優勝はかわらねぇからな」
「お? 余裕ぶっこいてんな。後悔すんぞ」
「きゃっ、そんな怖いこと言わないでー」
くねくねしながら擦り寄ってくる北斗を避け、立ち上がった高林の隣に並ぶ。
「じゃーなー」
北斗たちに手を振りながら歩き出す。高林も俺に続いている。
よし、これで二人きり。一体全体高林に何が起こったのか、俺は本人に聞こうと口を開こうとしたが。
「高柳くんって二宮くんとすごく仲がいいんだね」
その前に高林に話しかけられて出鼻を挫かれた。
「あ、ああ。去年同じクラスでそっからよく連んでんだよ」
「……キスはよくするの?」
「ひぇ!?」
思わず変な声出た。なんだキスって。北斗と? するわきゃねぇ!
「あ! さっきのあれ見てたのか! ほっぺにかまされたやつ!」
どこか物々しい雰囲気の高林がゆっくりと頷く。待て、勘違いだ。
「いやいやいや! あれはあれだから! 北斗がふざけただけだから!」
「ふざけてキスを? もしかして……二宮くんって高柳くんのこと……」
「おおう待て待て! なんかとんでもない方向に勘違いしてるぞ高林! つか北斗にはぞっこんな彼女いるから!」
「二股……?」
「違うから! はぁ……声出しすぎて疲れた。いやな、今日はその彼女が応援くるはずだったのに来れなくなって北斗のやつ落ち込んでたんだよ。んで、励ましたら元気になってテンション上がったあいつがふざけてきただけ。北斗は根っからの女好きだし、きもいこと言うなって」
必死に説明したところで高林がピタリと足を止める。ん? なんで?
「……高柳くんにとって、男に好かれるのは気持ち悪いことなの?」
「んあ?」
突然話題が変わったな? 俺そんな話してたか?
しかしなんかこれは茶化しちゃいけない感じな気がする。
「いや、別にそういうのをどうこうってんじゃ……北斗はそういうんじゃないって言いたかっただけで。……悪い、なんか俺まずいこと言った?」
今世の俺は空気を読めるはずなのに、今どういう空気なのか全くわからない。わからないと、途端に不安になる。前世の俺に戻ってしまったようで。
「そっか……ううん、何でもないよ。行こうか」
高林が纏う雰囲気が穏やかになってホッとする。歩き出した高林に今度は俺が続く。つーか、いつの間にか猫背も治ってない?
「いや、やっぱなんでもなくないや」
すぐに立ち止まったと思ったら、そう言って振り向いた高林。
「俺は、恋愛対象が男なんだ」
前の組が次々とスタートしていく。俺たちの出番ももうすぐだ。
よし、練習の成果を出す時がくる。集中力を高め……高め…………。あー! 集中できない! 何事もなかったかのように隣でしれっとしている高林を本人に気づかれないようじとっと睨む。
高林からの突然の告白に俺は何と返していいかわからなかった。さすがに想定外すぎた。
「俺のこと、気持ち悪い?」
何も答えられない俺に高林が投げてきた質問。
そして自分の言ったことを思い出して俺は慌てて否定した。そこで話は終わって、ホッとしたんだけど。
気付いてしまった。
高林、好きな子いるって言ってたよな?
見た目はちょっと派手だけど純粋で可愛い子。
今まで勝手に華やかだけど可愛い感じの女の子を想像していた。そんな子とデートとか、うらやまけしからんと思ってた。
でも、高林の恋愛対象が男なら、話が違ってくる。違ってくるし、それもしかして、もしかしなくても。
俺じゃね??
いや、別に俺は自分を純粋で可愛い子だなんて思ってない。でも見た目はちょっと派手だし、何より最近高林と仲良くしてる男って俺しかいなかったじゃん!
思い出すと色々辻褄も合う。確かに俺は高林と放課後に出かける約束をしていたからそれをデートとカウントするならデートの約束をしていたし、俺は高林の顔を見たから、高林の顔を知ってるってのもそうだし。
俺じゃん。もう俺じゃん。
でもそれならもっとこうさ、高林から何かしらのアレがこう、アレするとかない? やばい、考えがまとまらない。
相変わらず高林は横で涼しい顔をしている。いや顔見えねぇけどさ。
え? それとも俺の勘違い? 実は俺以外に最近親しくしてる相手がいるのか? つーか、でなきゃあんな堂々と自分の恋愛対象が男だって告白なんてできないか。
俺以外の……。なんだこれ。なんかちょっとムカつく。自分だと確信しかけたのに、違う可能性が出たからか? あーっもやもやすっるっ! なんだこれ!
「高柳くん、次だよ」
「うっふぁい!」
くっそ。考えすぎて状況忘れてた。変な声出しちゃったせいで周りから見られてる。くそ、見んな見んな。
努めて何事もなかったように装い、スタート位置へ向かう。そして足にはちまきをくくりつける。これが案外重要なんだ。途中で解けないように、けど密着しすぎず、離れすぎず。
結び終わって立ち上がり周りを見ると、同じレースを走る奴らも大方準備が整ったようだ。
高林がいつものように俺の腰に手を回してくる。……高林の手ってこんなに熱かったっけ? いや、考えるな考えるな。さっき、俺じゃないって結論づけたところじゃんか! 意識するんじゃねぇ!!
「高柳くん、いつもよりちょっとペース上げるね」
意識を正面に戻し、いざ、とスタンバッて程よい緊張感が芽生えたところで、突然高林が俺の耳元で囁く。
「え?」
俺の声と、スタートを合図するピストル音が鳴ったのはほぼ同時だった。
ちょっとこれまでの高林とは違いすぎるので、前髪で顔が隠れてることをいいことに別人に入れ替わってるんじゃねぇかと一瞬疑ったが、あのイケボは間違いなく高林である。わからん。何がどうなってるのかわからん。けど、考えてもわからない以上、考えるのをやめよう。そう、いいことなんだから。
わいわい騒ぎながら食べていると、時間が過ぎるのはあっという間だった。
「裕也と高林はこの後すぐ二人三脚だよね? 頑張ってね」
「おう。高林、そろそろ行くか」
颯太に言われ時計を確認すると、もうすぐ昼休みが終わる頃だった。午後イチの競技なので昼休み終了前に集合場所に向かわなければならない。高林は俺に応じてこくりと頷く。
「おっし! 応援は任せとけ!」
「いや、北斗敵チームじゃん」
「お前ら二人が一位を取ったところで、俺らの優勝はかわらねぇからな」
「お? 余裕ぶっこいてんな。後悔すんぞ」
「きゃっ、そんな怖いこと言わないでー」
くねくねしながら擦り寄ってくる北斗を避け、立ち上がった高林の隣に並ぶ。
「じゃーなー」
北斗たちに手を振りながら歩き出す。高林も俺に続いている。
よし、これで二人きり。一体全体高林に何が起こったのか、俺は本人に聞こうと口を開こうとしたが。
「高柳くんって二宮くんとすごく仲がいいんだね」
その前に高林に話しかけられて出鼻を挫かれた。
「あ、ああ。去年同じクラスでそっからよく連んでんだよ」
「……キスはよくするの?」
「ひぇ!?」
思わず変な声出た。なんだキスって。北斗と? するわきゃねぇ!
「あ! さっきのあれ見てたのか! ほっぺにかまされたやつ!」
どこか物々しい雰囲気の高林がゆっくりと頷く。待て、勘違いだ。
「いやいやいや! あれはあれだから! 北斗がふざけただけだから!」
「ふざけてキスを? もしかして……二宮くんって高柳くんのこと……」
「おおう待て待て! なんかとんでもない方向に勘違いしてるぞ高林! つか北斗にはぞっこんな彼女いるから!」
「二股……?」
「違うから! はぁ……声出しすぎて疲れた。いやな、今日はその彼女が応援くるはずだったのに来れなくなって北斗のやつ落ち込んでたんだよ。んで、励ましたら元気になってテンション上がったあいつがふざけてきただけ。北斗は根っからの女好きだし、きもいこと言うなって」
必死に説明したところで高林がピタリと足を止める。ん? なんで?
「……高柳くんにとって、男に好かれるのは気持ち悪いことなの?」
「んあ?」
突然話題が変わったな? 俺そんな話してたか?
しかしなんかこれは茶化しちゃいけない感じな気がする。
「いや、別にそういうのをどうこうってんじゃ……北斗はそういうんじゃないって言いたかっただけで。……悪い、なんか俺まずいこと言った?」
今世の俺は空気を読めるはずなのに、今どういう空気なのか全くわからない。わからないと、途端に不安になる。前世の俺に戻ってしまったようで。
「そっか……ううん、何でもないよ。行こうか」
高林が纏う雰囲気が穏やかになってホッとする。歩き出した高林に今度は俺が続く。つーか、いつの間にか猫背も治ってない?
「いや、やっぱなんでもなくないや」
すぐに立ち止まったと思ったら、そう言って振り向いた高林。
「俺は、恋愛対象が男なんだ」
前の組が次々とスタートしていく。俺たちの出番ももうすぐだ。
よし、練習の成果を出す時がくる。集中力を高め……高め…………。あー! 集中できない! 何事もなかったかのように隣でしれっとしている高林を本人に気づかれないようじとっと睨む。
高林からの突然の告白に俺は何と返していいかわからなかった。さすがに想定外すぎた。
「俺のこと、気持ち悪い?」
何も答えられない俺に高林が投げてきた質問。
そして自分の言ったことを思い出して俺は慌てて否定した。そこで話は終わって、ホッとしたんだけど。
気付いてしまった。
高林、好きな子いるって言ってたよな?
見た目はちょっと派手だけど純粋で可愛い子。
今まで勝手に華やかだけど可愛い感じの女の子を想像していた。そんな子とデートとか、うらやまけしからんと思ってた。
でも、高林の恋愛対象が男なら、話が違ってくる。違ってくるし、それもしかして、もしかしなくても。
俺じゃね??
いや、別に俺は自分を純粋で可愛い子だなんて思ってない。でも見た目はちょっと派手だし、何より最近高林と仲良くしてる男って俺しかいなかったじゃん!
思い出すと色々辻褄も合う。確かに俺は高林と放課後に出かける約束をしていたからそれをデートとカウントするならデートの約束をしていたし、俺は高林の顔を見たから、高林の顔を知ってるってのもそうだし。
俺じゃん。もう俺じゃん。
でもそれならもっとこうさ、高林から何かしらのアレがこう、アレするとかない? やばい、考えがまとまらない。
相変わらず高林は横で涼しい顔をしている。いや顔見えねぇけどさ。
え? それとも俺の勘違い? 実は俺以外に最近親しくしてる相手がいるのか? つーか、でなきゃあんな堂々と自分の恋愛対象が男だって告白なんてできないか。
俺以外の……。なんだこれ。なんかちょっとムカつく。自分だと確信しかけたのに、違う可能性が出たからか? あーっもやもやすっるっ! なんだこれ!
「高柳くん、次だよ」
「うっふぁい!」
くっそ。考えすぎて状況忘れてた。変な声出しちゃったせいで周りから見られてる。くそ、見んな見んな。
努めて何事もなかったように装い、スタート位置へ向かう。そして足にはちまきをくくりつける。これが案外重要なんだ。途中で解けないように、けど密着しすぎず、離れすぎず。
結び終わって立ち上がり周りを見ると、同じレースを走る奴らも大方準備が整ったようだ。
高林がいつものように俺の腰に手を回してくる。……高林の手ってこんなに熱かったっけ? いや、考えるな考えるな。さっき、俺じゃないって結論づけたところじゃんか! 意識するんじゃねぇ!!
「高柳くん、いつもよりちょっとペース上げるね」
意識を正面に戻し、いざ、とスタンバッて程よい緊張感が芽生えたところで、突然高林が俺の耳元で囁く。
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