前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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【番外編】3 図りかねる意図

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「え?」

 体育祭の出場競技を決める、ホームルームでそんな話があった日の休み時間のことだった。高柳が俺を追いかけてきてあることを提案してきた。俺はその内容に驚いて、つい声を出してしまった。

「だから、俺と一緒にやんね? 二人三脚」

 さっきと同じセリフを高柳の口が紡ぐ。
 二人三脚って、あの二人三脚だよな? なんで急にそんなことを俺に提案してくるのか。
 あまりに予想外の事態に脳が処理しきれずにフリーズする。
 そんな俺の返事を待つ彼はやっぱり可愛い。

「ど……どうして俺……?」

 さすがにこれは無視できないと思って意図を問う。でも、まだ動揺から復活できていないため演技ではなく吃ってしまった。

「ん? キャッチボールした仲じゃん。嫌?」

 こてんと首を傾げて俺を見上げて来る高柳。少し上目遣いの目が不安そうに俺を見る。あざと可愛いかよ。
 しかもその目はばっちり俺の目を見つめてくる。前髪越しだからわかってないのかな。あー、可愛い。美味しそう。いやだめだって、高柳は学校の奴で多分ノンケなんだって。

「俺、お前とやりたいんだけど……」

「っ……!」

 眉をへにゃりと下げておずおずと追撃してくる高柳。クソ可愛い。ヤりたい? 俺もヤりたい。いや違う、そうじゃない。

「お……俺、多分迷惑」

 俺は鈍臭いコミュ障。そう頭の中で繰り返しながら、多分迷惑かけるからとやんわり断ろうとした。

「迷惑だなんて思わねぇし、一緒に練習しよう?」

 けれど、言い切る前に被せられてしまった。
 しかもさっきよりも強い目でじっと見つめられ、つい。

「う……わかっ……た」

 応じてしまった。

「ありがとう! じゃあよろしくな!」

 ニパッという効果音がぴったりな笑顔で高柳は右手を差し出してきた。垂れ目に釣り上がった眉、薄い唇はどちらかというと軽薄な印象を抱かせるのに、その笑顔は好青年のそれだった。けれど、他方で泣き黒子が色っぽく、爽やかな瑞々しさと艶が混在してなんかもう、どうしようもなくエロかった。

「よろしく……」

 こんなエロい存在と二人三脚とか、俺の理性は耐えられるのか? と不安に思いつつ、その右手を握った。

 すべすべだった。



 高柳から離れて一人になって落ち着くと、もしかして彼も同類なのではないか? という考えが浮かんだ。
 どう考えても高柳が俺にこんなにも関心を寄せる理由がない。キャッチボールで俺に対する印象が上がるようなことなど何もなかったし。
 かつて俺に好意的に話しかけてきた二宮も、数回俺が無視することで話しかけてこなくなった。それが普通の反応だ。なのに、何度も挨拶を無視しているのに高柳は距離を縮めようとしてきている。
 これは、俺がゲイであることを察して近寄ってきているのではないか?

 しかし、高柳には同類っぽさはない。同類だとピンとくるものがあるが、高柳にはそれがないのだ。
 同類といえば、粟野の方がそれっぽい感じがするんだよな。そういえば、彼は粟野と仲が良さそうだったな。もしかしてその関係で? でも、粟野から俺への興味を感じたことはない。

 もやもやと考えつつも、結局どの考えも決め手に欠ける。
 体育祭の練習が始まれば接触する機会が必然的に増える。そうすればわかるだろうか。
 もし、もしも高柳もゲイだったら……。そう考えるだけでそわつく心に俺は認めざるを得なかった。俺が高柳に少なからず好意を抱いていると。
 いやでも、まだ引き返せる。いくら高柳の見た目がどちゃくそタイプで性格も良さそうで笑顔が可愛くてエロくとも。

 放課後になって俺と高柳が二人三脚のペアになることが決まるとクラスがざわついた。
 予想していた反応だったが、一番驚いてるのは俺なんだよな。目立ちたくないのに注目されてしまったので高柳の提案を了承したのは失敗だったかと思ったが、ちらっと横目に確認した彼が満足そうな顔をして嬉しそうだったので、まあいっかと思ってしまった。そう思って、だいぶ高柳にやられてるなと思う。まさか、学内で好意を持つ相手が現れるとは。
 しかし、これまで俺に興味なさそうだった粟野からの視線は気になった。やっぱりあいつは同類だ。向こうも気付いてるなこれは。

 とりあえず、引き続き今まで通りの対応をして様子を見よう。
 高柳がどんな意図を持って近づいてきたのか。見極めて、自分の行動を考えよう。

 そう慎重に考えながらも、内心は思いがけず高柳と接触する機会が増えたことを喜んでいた。
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