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俺、諭される1
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翌日の俺の顔はひどいものだった。
自室にこもって泣きじゃくり、そのまま眠ったせいだろう。瞼が腫れぼったくなって、普段の半分しか目が開いていない。
ただでさえ冴えない顔をしているというのに、それが悪化して外を歩いたら通報されそうな見た目になっている。一生懸命目を見開こうとするが、瞼が重くて何も変わらない。
気休めに顔を洗って朝食を食べにダイニングへ向かった。
すると、そこには珍しい住人がいた。
「おう、おはよう野口くん」
「あ……おはよう……ございます」
トラックドライバーの坂崎豊がどかりと椅子に座っていた。
長距離ドライバーの坂崎は、泊まりがけで運転するため家にいないことが多い。俺がシェアハウスに来た日もいなかった。
家に帰ってきても、かなり早朝に家を出ているようで、俺は歓迎会以来ほとんど会ったことがなかった。
それに、浅黒い肌に大柄な体躯の人間はあまりに俺と正反対で、正直俺はこの人に苦手意識を持っていた。
坂崎よりはと思って中里を探すが、台所にはいないようだった。洗濯でもしているのだろうか。
台所に用意されていた朝食を持ってダイニングに戻る。離れた席に座るのはあからさますぎるだろうと考え、坂崎の斜め前に座った。
「なんだか景気悪りぃ顔してるな。」
突然話しかけられ、びくりと肩が跳ねる。俺はいつもびくびくしてばっかだな。
「……ちょっと……睡眠不足で……」
俯きながらぼそりと返す。大泣きしたとは言えず誤魔化した。
「……俺な、野口くんの隣の部屋なんだわ」
思わず顔を上げると罰の悪そうな顔をした坂崎と目が合う。隣の部屋ということは……言わんとしていることに気づき羞恥で顔が熱くなる。
あんだけギャン泣きしてたら聞こえてるじゃえねか。
「大の大人があんだけ泣くってのは、よっぽどのことがあったんだろ。放っとこうとも思ったんだが……野口くんのお袋さんにも頭下げられたもんだから、ちょっとなぁ」
そういえば、中里が母は住人全員に挨拶したと言っていたか。
だからといって、こんな律儀に気にしてくれなくてもいいのに。知らないふりをしてくれればいいのに。
「ま、言いたくなきゃいいんだがよ。中里くんも気にしてるみたいだし、ちょうど俺は今日休みだし、たまには住人同士の交流があってもいいかと思ってな」
そう言って坂崎は口角を上げる。微笑んでるというより、ニヤリと笑っているようにみえた。
普段の俺なら坂崎の提案など固辞していただろう。けれど、俺は昨日からこれでもないくらい気持ちが落ちていて、色々なことがどうでもよくなっていた。
見栄もプライドも全部ハリボテで、俺には何もないことがわかって、これ以上失うものがないこともわかった。そして俺の進む道はもはや行き止まりだ。
だったら、このほぼ初対面の男に情けない胸の内をぶちまけるくらいどうでもいいことだろう。これ以上悪くなることなどないのだから。
そう思い、俺にしては珍しい選択をした。全てを坂崎に話そうと思ったのだ。
「なんか……現実を突きつけられたんですよね……」
そう言うと、坂崎が話が長くなるなら朝飯を食べ終わった後に移動しようと提案してきた。
俺はこくりと頷いて朝ごはんを掻き込んだ。
自室にこもって泣きじゃくり、そのまま眠ったせいだろう。瞼が腫れぼったくなって、普段の半分しか目が開いていない。
ただでさえ冴えない顔をしているというのに、それが悪化して外を歩いたら通報されそうな見た目になっている。一生懸命目を見開こうとするが、瞼が重くて何も変わらない。
気休めに顔を洗って朝食を食べにダイニングへ向かった。
すると、そこには珍しい住人がいた。
「おう、おはよう野口くん」
「あ……おはよう……ございます」
トラックドライバーの坂崎豊がどかりと椅子に座っていた。
長距離ドライバーの坂崎は、泊まりがけで運転するため家にいないことが多い。俺がシェアハウスに来た日もいなかった。
家に帰ってきても、かなり早朝に家を出ているようで、俺は歓迎会以来ほとんど会ったことがなかった。
それに、浅黒い肌に大柄な体躯の人間はあまりに俺と正反対で、正直俺はこの人に苦手意識を持っていた。
坂崎よりはと思って中里を探すが、台所にはいないようだった。洗濯でもしているのだろうか。
台所に用意されていた朝食を持ってダイニングに戻る。離れた席に座るのはあからさますぎるだろうと考え、坂崎の斜め前に座った。
「なんだか景気悪りぃ顔してるな。」
突然話しかけられ、びくりと肩が跳ねる。俺はいつもびくびくしてばっかだな。
「……ちょっと……睡眠不足で……」
俯きながらぼそりと返す。大泣きしたとは言えず誤魔化した。
「……俺な、野口くんの隣の部屋なんだわ」
思わず顔を上げると罰の悪そうな顔をした坂崎と目が合う。隣の部屋ということは……言わんとしていることに気づき羞恥で顔が熱くなる。
あんだけギャン泣きしてたら聞こえてるじゃえねか。
「大の大人があんだけ泣くってのは、よっぽどのことがあったんだろ。放っとこうとも思ったんだが……野口くんのお袋さんにも頭下げられたもんだから、ちょっとなぁ」
そういえば、中里が母は住人全員に挨拶したと言っていたか。
だからといって、こんな律儀に気にしてくれなくてもいいのに。知らないふりをしてくれればいいのに。
「ま、言いたくなきゃいいんだがよ。中里くんも気にしてるみたいだし、ちょうど俺は今日休みだし、たまには住人同士の交流があってもいいかと思ってな」
そう言って坂崎は口角を上げる。微笑んでるというより、ニヤリと笑っているようにみえた。
普段の俺なら坂崎の提案など固辞していただろう。けれど、俺は昨日からこれでもないくらい気持ちが落ちていて、色々なことがどうでもよくなっていた。
見栄もプライドも全部ハリボテで、俺には何もないことがわかって、これ以上失うものがないこともわかった。そして俺の進む道はもはや行き止まりだ。
だったら、このほぼ初対面の男に情けない胸の内をぶちまけるくらいどうでもいいことだろう。これ以上悪くなることなどないのだから。
そう思い、俺にしては珍しい選択をした。全てを坂崎に話そうと思ったのだ。
「なんか……現実を突きつけられたんですよね……」
そう言うと、坂崎が話が長くなるなら朝飯を食べ終わった後に移動しようと提案してきた。
俺はこくりと頷いて朝ごはんを掻き込んだ。
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