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目撃と混乱
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久しぶりにゆうきに会ってからゆうきのことばかり考えていた。このままでは精神衛生上よくないと思い、気晴らしをすべく街へ繰り出した。晴れ晴れとした土曜の朝である。
「お買い上げありがとうございます」
店員に見送られ店を出る。買い物は久しぶりだったけれど、気に入ったものが買えてほくほくとした気持ちになる。しかも、何かしている間は何も考えずに済む。
離婚するまでは、ゆうきへの気持ちは胸の奥底にしまい込まれていた。結婚している間、ゆうきを思い出すことはほとんどなかったと思う。それにもかかわらず再会してからというもの、ほぼ毎日のようにゆうきのことを考えている。
二年も会っていなかったのに気持ちが変わっていないことに気付いてから、一層ゆうきへの執着が増してしまったように思う。おそらく、無理矢理抑え込んでいた気持ちが爆発して、コントロールを失っているのだ。ゆうきの顔を思い出すだけで心が高鳴るなんて異常だ。
またゆうきのことを考えていたことに気付いてはっとする。このところずっとこの調子だ。他のことにはこんなにも執着しないのに、どうしてゆうきへの気持ちだけ際限がないのだろう。
このままではダメだと頭ではわかっているのに心がついていかない。思うように心が従ってくれない。苦しむのは自分なのに。
頭を横に振り考えるのをやめる。別のことを考えよう。もうすぐお昼の時間だから、奮発してちょっといいランチでも食べよう。
そう思い、買い物していたデパートから出ようとエスカレーターに向かおうとしたら、見慣れた後ろ姿を見つけてどきりとする。
見間違うはずもない。それは私が先ほどまで焦がれていた思い人だった。
足が自然とゆうきの方へ向かう。偶然だね、ゆうきも買い物に来たの?話しかける言葉を考えながら近づいていく。
ある程度近づいたところで思わず歩を止める。ゆうきの隣に見知らぬ女性がいた。
知り合いと一緒なら、わざわざ追いかけて声をかけるのはやめた方がいいかな、と躊躇いが頭をよぎる。でも、挨拶くらいなら、と思い再び歩を進めると、人混みから逃げるように二人が移動する。
違和感を覚えつつも追いかけると、階段の方へ二人が消える。ここまできたら、やはり一言くらい言葉を交わしたい。ゆうきと直接話したい気持ちだけで階段を覗く。瞬間、目に入ってきた光景に驚愕する。
見知らぬ女性が、ゆうきの頬にキスをしていた。
思わず隠れ、頭を整理しようとする。一体今何が起こったのか。しかし、私の脳は全く機能しない。それどころか、うまく呼吸ができない。いつも自然に行なっているはずなのに、息の吸い方も吐き方もわからない。とにかくこの場から逃げ出したい。否、逃げなければいけない。
震える足を何とか動かしてその場を離れる。
どういうことなのか。彼女はゆうきの何なのか。普通に考えれば恋人なのだろう。でも、どうしてなのか。彼女が良くて何故私はダメなのか。どうして、何故と様々な疑問が溢れ、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
落ち着け、落ち着けと言い聞かせても、考えとは裏腹に心臓はドクドクと激しく鼓動する。
とにかく歩いた。お昼ご飯を食べようと思っていたことなど忘れ、ひたすらに歩いた。そして気付くと自宅の前だった。どうやって辿り着いたのかわからない。知らぬ間に電車にも乗ったようだ。
鞄から自宅の鍵を出そうとするも、手が震えてうまく鍵を掴めない。やっと鍵を掴んでも、鍵穴にうまく差し込むことができない。両手で鍵を支え、ようやく鍵を開ける。
そして玄関に入った途端、膝から崩れ落ちる。足はそれ以上動く気配がない。
あれは幻だったのだろうか、後ろ姿からゆうきだと思っていたが、実は全く知らない赤の他人だったのだろうか。自分にとって都合のいいこと考える。思い込もうとする。
けれど、そうではないことは自分が一番わかっている。
あれは間違いなくゆうきだった。私が十年も想いを抱えた相手を間違えるはずがない。あれは、ゆうきだったのだ。
目からぽろぽろと涙が溢れる。私は音もなく泣いた。
「お買い上げありがとうございます」
店員に見送られ店を出る。買い物は久しぶりだったけれど、気に入ったものが買えてほくほくとした気持ちになる。しかも、何かしている間は何も考えずに済む。
離婚するまでは、ゆうきへの気持ちは胸の奥底にしまい込まれていた。結婚している間、ゆうきを思い出すことはほとんどなかったと思う。それにもかかわらず再会してからというもの、ほぼ毎日のようにゆうきのことを考えている。
二年も会っていなかったのに気持ちが変わっていないことに気付いてから、一層ゆうきへの執着が増してしまったように思う。おそらく、無理矢理抑え込んでいた気持ちが爆発して、コントロールを失っているのだ。ゆうきの顔を思い出すだけで心が高鳴るなんて異常だ。
またゆうきのことを考えていたことに気付いてはっとする。このところずっとこの調子だ。他のことにはこんなにも執着しないのに、どうしてゆうきへの気持ちだけ際限がないのだろう。
このままではダメだと頭ではわかっているのに心がついていかない。思うように心が従ってくれない。苦しむのは自分なのに。
頭を横に振り考えるのをやめる。別のことを考えよう。もうすぐお昼の時間だから、奮発してちょっといいランチでも食べよう。
そう思い、買い物していたデパートから出ようとエスカレーターに向かおうとしたら、見慣れた後ろ姿を見つけてどきりとする。
見間違うはずもない。それは私が先ほどまで焦がれていた思い人だった。
足が自然とゆうきの方へ向かう。偶然だね、ゆうきも買い物に来たの?話しかける言葉を考えながら近づいていく。
ある程度近づいたところで思わず歩を止める。ゆうきの隣に見知らぬ女性がいた。
知り合いと一緒なら、わざわざ追いかけて声をかけるのはやめた方がいいかな、と躊躇いが頭をよぎる。でも、挨拶くらいなら、と思い再び歩を進めると、人混みから逃げるように二人が移動する。
違和感を覚えつつも追いかけると、階段の方へ二人が消える。ここまできたら、やはり一言くらい言葉を交わしたい。ゆうきと直接話したい気持ちだけで階段を覗く。瞬間、目に入ってきた光景に驚愕する。
見知らぬ女性が、ゆうきの頬にキスをしていた。
思わず隠れ、頭を整理しようとする。一体今何が起こったのか。しかし、私の脳は全く機能しない。それどころか、うまく呼吸ができない。いつも自然に行なっているはずなのに、息の吸い方も吐き方もわからない。とにかくこの場から逃げ出したい。否、逃げなければいけない。
震える足を何とか動かしてその場を離れる。
どういうことなのか。彼女はゆうきの何なのか。普通に考えれば恋人なのだろう。でも、どうしてなのか。彼女が良くて何故私はダメなのか。どうして、何故と様々な疑問が溢れ、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
落ち着け、落ち着けと言い聞かせても、考えとは裏腹に心臓はドクドクと激しく鼓動する。
とにかく歩いた。お昼ご飯を食べようと思っていたことなど忘れ、ひたすらに歩いた。そして気付くと自宅の前だった。どうやって辿り着いたのかわからない。知らぬ間に電車にも乗ったようだ。
鞄から自宅の鍵を出そうとするも、手が震えてうまく鍵を掴めない。やっと鍵を掴んでも、鍵穴にうまく差し込むことができない。両手で鍵を支え、ようやく鍵を開ける。
そして玄関に入った途端、膝から崩れ落ちる。足はそれ以上動く気配がない。
あれは幻だったのだろうか、後ろ姿からゆうきだと思っていたが、実は全く知らない赤の他人だったのだろうか。自分にとって都合のいいこと考える。思い込もうとする。
けれど、そうではないことは自分が一番わかっている。
あれは間違いなくゆうきだった。私が十年も想いを抱えた相手を間違えるはずがない。あれは、ゆうきだったのだ。
目からぽろぽろと涙が溢れる。私は音もなく泣いた。
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