10 / 28
真実と失恋3
しおりを挟む
家に着いた途端、我慢していた涙が溢れた。昨日とは違い、嗚咽が漏れる。
苦しい、苦しい。
私がゆうきの恋愛対象でないことなんて、高校の頃からわかっていた。でも、それは私が「女」だからだと思っていた。ゆうきは男性が好きな女性で、そもそも恋愛対象に入るはずがないのだと、そう信じていた。
私は、全ての女性が対象ではないのだから、自分が恋愛対象ではないことは仕方ない、そう自分を慰めてきた。
でも、違った。
ゆうきの恋愛対象は女性だった。けれど、私はゆうきの恋愛対象にならなかった。この事実は、私を打ちのめした。
妄想したことがある。もし、ゆうきが女性も恋愛対象だったのならば、私とゆうきは結ばれたのではないかと。あり得ない妄想だと思いながら、何度も何度も繰り返し妄想した。
妄想の中の私とゆうきは仲睦まじく、永遠を誓い、寄り添っていた。幸せな妄想だった。妄想から現実に引き戻されると酷く落ち込んだけれど、妄想の中で幸せでいられることは、私の心を多少なりとも慰めた。
しかし、もうそんな妄想もできない。
ゆうきの恋愛対象は女性なのだ。けれど、私はゆうきと結ばれない。
こんな現実、知りたくなかった。昨日のことなんて見なかったことにすればよかった。そうすれば、私は少なくとも妄想の中で幸せでいられた。
事実を受け止める覚悟をしていたはずなのに、その実私の心はなんの準備もできていなかった。
涙はいつまでも止まらない。このまま体中の水分が全部瞳から流れ落ちて枯れ果てて消えて無くなってしまえればいいのにと思う。
くだらないことを考えていることはわかっている。数多の人がいるのに、その中のたった一人のことでここまで取り乱すなんておかしい。けれど、止まらない。
私にとってゆうきは唯一無二の存在なのだ。それが何故かなんて考えても仕方ない。私にとってそうなのだ。私の心がそう叫ぶのだ。
もしかして……悪い想像が私の頭を支配する。ゆうきは私とぎくしゃくしたくないから自身がレズビアンであることを言わなかったと言っていた。けれど、そもそも女性を恋愛対象にしているゆうきなら、女性から向けられる視線の意味を正確に理解できるのではないか。女性から自分に向けられる感情が恋愛感情かどうかわかるのではないか。
そうであるならば、私の気持ちはやはりゆうきにバレていたのではないか。ゆうきが私にレズビアンであることを言わなかったのは、私に期待を持たせないようにするためだったのではないか。
他の友人たちを名前で呼ぶのに、私だけ名字で呼ばれていたのもそのためだったのではないか。ななちゃんとは二人で飲みに行くのに、私とは飲みに行かないのも同じ理由ではないか。
そういえば、この前の合コンでゆうきの様子がおかしい時があった。あの時ななちゃんは、参加者全員がゆうきの知り合いであったことに対し、悪いことをしたわねとゆうきに言った。
よく考えたらおかしい。ゆうきの恋愛対象が男性ならば、謝罪すべきは宮田さんのはずだ。宮田さんがゆうきの知り合いである勅使河原さんを連れてきたことを謝罪すべきはずだ。けれど、ななちゃんが謝った。
ななちゃんは知っていたのだ。ゆうきの恋愛対象が女性であることを。そして、ゆうきの恋愛対象ではない私を合コンに連れてきたことを謝罪していたのだ。だから、ゆうきはななちゃんが私を誘った時に困ったように笑ったのだ。
高校時代に私を縛り付けていた悪い想像が、突然現実味を帯びてくる。全ての辻褄が合う。
あぁ、私は警戒されていたのだ。そしてそれは見事に功を奏した。私はゆうきに告白できず、友人として振る舞い続けた。
相変わらず涙はとめどなく流れる。
「…………告白……しなくてよかった……」
苦しい、苦しい。
私がゆうきの恋愛対象でないことなんて、高校の頃からわかっていた。でも、それは私が「女」だからだと思っていた。ゆうきは男性が好きな女性で、そもそも恋愛対象に入るはずがないのだと、そう信じていた。
私は、全ての女性が対象ではないのだから、自分が恋愛対象ではないことは仕方ない、そう自分を慰めてきた。
でも、違った。
ゆうきの恋愛対象は女性だった。けれど、私はゆうきの恋愛対象にならなかった。この事実は、私を打ちのめした。
妄想したことがある。もし、ゆうきが女性も恋愛対象だったのならば、私とゆうきは結ばれたのではないかと。あり得ない妄想だと思いながら、何度も何度も繰り返し妄想した。
妄想の中の私とゆうきは仲睦まじく、永遠を誓い、寄り添っていた。幸せな妄想だった。妄想から現実に引き戻されると酷く落ち込んだけれど、妄想の中で幸せでいられることは、私の心を多少なりとも慰めた。
しかし、もうそんな妄想もできない。
ゆうきの恋愛対象は女性なのだ。けれど、私はゆうきと結ばれない。
こんな現実、知りたくなかった。昨日のことなんて見なかったことにすればよかった。そうすれば、私は少なくとも妄想の中で幸せでいられた。
事実を受け止める覚悟をしていたはずなのに、その実私の心はなんの準備もできていなかった。
涙はいつまでも止まらない。このまま体中の水分が全部瞳から流れ落ちて枯れ果てて消えて無くなってしまえればいいのにと思う。
くだらないことを考えていることはわかっている。数多の人がいるのに、その中のたった一人のことでここまで取り乱すなんておかしい。けれど、止まらない。
私にとってゆうきは唯一無二の存在なのだ。それが何故かなんて考えても仕方ない。私にとってそうなのだ。私の心がそう叫ぶのだ。
もしかして……悪い想像が私の頭を支配する。ゆうきは私とぎくしゃくしたくないから自身がレズビアンであることを言わなかったと言っていた。けれど、そもそも女性を恋愛対象にしているゆうきなら、女性から向けられる視線の意味を正確に理解できるのではないか。女性から自分に向けられる感情が恋愛感情かどうかわかるのではないか。
そうであるならば、私の気持ちはやはりゆうきにバレていたのではないか。ゆうきが私にレズビアンであることを言わなかったのは、私に期待を持たせないようにするためだったのではないか。
他の友人たちを名前で呼ぶのに、私だけ名字で呼ばれていたのもそのためだったのではないか。ななちゃんとは二人で飲みに行くのに、私とは飲みに行かないのも同じ理由ではないか。
そういえば、この前の合コンでゆうきの様子がおかしい時があった。あの時ななちゃんは、参加者全員がゆうきの知り合いであったことに対し、悪いことをしたわねとゆうきに言った。
よく考えたらおかしい。ゆうきの恋愛対象が男性ならば、謝罪すべきは宮田さんのはずだ。宮田さんがゆうきの知り合いである勅使河原さんを連れてきたことを謝罪すべきはずだ。けれど、ななちゃんが謝った。
ななちゃんは知っていたのだ。ゆうきの恋愛対象が女性であることを。そして、ゆうきの恋愛対象ではない私を合コンに連れてきたことを謝罪していたのだ。だから、ゆうきはななちゃんが私を誘った時に困ったように笑ったのだ。
高校時代に私を縛り付けていた悪い想像が、突然現実味を帯びてくる。全ての辻褄が合う。
あぁ、私は警戒されていたのだ。そしてそれは見事に功を奏した。私はゆうきに告白できず、友人として振る舞い続けた。
相変わらず涙はとめどなく流れる。
「…………告白……しなくてよかった……」
0
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる