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行動と予定
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まずしなければならないことは何か。私は隆哉と話した後、勅使河原さんに連絡することにした。
包み込んでくれるような優しい雰囲気が心地良かったのは事実。だから一回食事行くくらい、と思っていた。けれど、そのあとは?
私が彼に居心地のよさを感じたのは、きっと雰囲気が隆哉に似ているから。相手の話を聞いて、自分の考えも話すけれど押し付けない。私にとって好ましい性質だった。
私はその好ましさを恋愛に結びつけてまた同じことを繰り返してしまうのではないか。隆哉に言われて気づいたのだ。
勅使河原さんに恋する可能性が全くないとは言えない。気持ちは移りゆくものだから。けれど、今はどう考えても恋できない。私の心の中のその場所は、十年間ずっとゆうきが居座ったままだから。
私は、二度と優しい人の時間を奪いたくなかった。スマートフォンの連絡先の中に勅使河原さんの名前を見つけ、電話をかける。
突然の電話だったけれど、数コールで応答があった。
「びっくりした。突然どうしたの」
穏やかで優しい声に申し訳ない気持ちになる。
「勅使河原さん、あの…食事のお約束なんですが、申し訳ないのですが、キャンセルしてください」
「どうしたの?都合悪くなった?リスケしようか」
「そうでなくて…」
「……どうして?何かあったの?」
電話口からの声は幾分硬いものに変わった。
「……私、誠実な人間なんかじゃないんです。でも、勅使河原さんに対して不誠実なことしたくないんです。だから……」
「ちょっと待って落ち着こう?俺が食事に誘ったのはもう少しみずきさんのことが知りたかったっていうだけで、すぐに付き合おうとか、そういう話するつもりはないよ」
「わかってます。わかってるんですけど、でも……」
「うーん……やっぱ食事は行こう?都合が悪くなったわけじゃないんでしょ。なんか行き違いがあるような気もするし……。誤解があるなら……」
「私!好きな人がいるんです」
「……この前はそんなこと言ってなかったよね。あー、俺には可能性ないからチャンスもくれないってことなのかな」
「そうじゃなくて……勅使河原さんの時間を奪いたくなくて……」
「そこまではっきり言われると凹むな。けどね、別にみずきさんと結果どうこうならなくたって、あとからみずきさんとの食事が無駄だったとか、もったいなかったとは思わないよ。そんな人間だと思われているのは心外だな」
「そういうことでもなくて……あの……」
勢いで電話してしまったからうまく説明ができない。
「逆なんです」
「逆……?」
電話の先の声から勅使河原さんが困惑していることがわかる。
それもそうだ。自分自身ちょっと訳が分からなくなっている。いっそこんな訳のわからないことを言っている自分に愛想を尽かしてほしい。
「……よくわからないけど、納得できないし一回だけ食事いこう?それとも俺の顔を見るのも嫌なのかな」
「そんなことないです!けど……」
「そのとき話聞かせて。それで納得できたら二度と食事には誘わないよ。だから予定通り、今度の金曜日で」
「……わかりました。すみません、休日にいきなりよくわからない電話して」
「……ははっ。そこで謝っちゃうところが可愛いよね。じゃあまた」
通話が終わりスマートフォンを握ったまましばし呆然とする。何のために電話したのかわからない。最初に好きな人がいるから貴方とは食事に行けませんって言えばよかったのだろうか。
でも、勅使河原さんも言っていた通り、別に食事イコール付き合うってことではない。そもそも、勅使河原さんは私のことを気に入ってはいるのだろうけれど、私を好きなわけではないだろうから、そんなことを言うのはあまりに自意識過剰だろう。結局混乱の最中に言ってしまったけれど。
なんだかうまく丸め込まれた気がする。
先ほどまで勅使河原さんと隆哉を重ねていたが、それは大きな間違いだった。穏やかで優しいところは似ているけれど、隆哉だったらさっきの電話で詳しい事情を聞いて終わりにしてくれただろう。
そこまで思考を廻らせ、深くため息を付いた。
ああ、そうか。また自分はやってしまった。
私は、隆哉をゆうきの代わりにしようとした。そして今度は、勅使河原さんを隆哉の代わりにしようとしていたのだ。
本当にどうしようもない。隆哉と会って幾分すっきりした気持ちでいたはずだったが、再び自己嫌悪に襲われ私の休日は終わった
包み込んでくれるような優しい雰囲気が心地良かったのは事実。だから一回食事行くくらい、と思っていた。けれど、そのあとは?
私が彼に居心地のよさを感じたのは、きっと雰囲気が隆哉に似ているから。相手の話を聞いて、自分の考えも話すけれど押し付けない。私にとって好ましい性質だった。
私はその好ましさを恋愛に結びつけてまた同じことを繰り返してしまうのではないか。隆哉に言われて気づいたのだ。
勅使河原さんに恋する可能性が全くないとは言えない。気持ちは移りゆくものだから。けれど、今はどう考えても恋できない。私の心の中のその場所は、十年間ずっとゆうきが居座ったままだから。
私は、二度と優しい人の時間を奪いたくなかった。スマートフォンの連絡先の中に勅使河原さんの名前を見つけ、電話をかける。
突然の電話だったけれど、数コールで応答があった。
「びっくりした。突然どうしたの」
穏やかで優しい声に申し訳ない気持ちになる。
「勅使河原さん、あの…食事のお約束なんですが、申し訳ないのですが、キャンセルしてください」
「どうしたの?都合悪くなった?リスケしようか」
「そうでなくて…」
「……どうして?何かあったの?」
電話口からの声は幾分硬いものに変わった。
「……私、誠実な人間なんかじゃないんです。でも、勅使河原さんに対して不誠実なことしたくないんです。だから……」
「ちょっと待って落ち着こう?俺が食事に誘ったのはもう少しみずきさんのことが知りたかったっていうだけで、すぐに付き合おうとか、そういう話するつもりはないよ」
「わかってます。わかってるんですけど、でも……」
「うーん……やっぱ食事は行こう?都合が悪くなったわけじゃないんでしょ。なんか行き違いがあるような気もするし……。誤解があるなら……」
「私!好きな人がいるんです」
「……この前はそんなこと言ってなかったよね。あー、俺には可能性ないからチャンスもくれないってことなのかな」
「そうじゃなくて……勅使河原さんの時間を奪いたくなくて……」
「そこまではっきり言われると凹むな。けどね、別にみずきさんと結果どうこうならなくたって、あとからみずきさんとの食事が無駄だったとか、もったいなかったとは思わないよ。そんな人間だと思われているのは心外だな」
「そういうことでもなくて……あの……」
勢いで電話してしまったからうまく説明ができない。
「逆なんです」
「逆……?」
電話の先の声から勅使河原さんが困惑していることがわかる。
それもそうだ。自分自身ちょっと訳が分からなくなっている。いっそこんな訳のわからないことを言っている自分に愛想を尽かしてほしい。
「……よくわからないけど、納得できないし一回だけ食事いこう?それとも俺の顔を見るのも嫌なのかな」
「そんなことないです!けど……」
「そのとき話聞かせて。それで納得できたら二度と食事には誘わないよ。だから予定通り、今度の金曜日で」
「……わかりました。すみません、休日にいきなりよくわからない電話して」
「……ははっ。そこで謝っちゃうところが可愛いよね。じゃあまた」
通話が終わりスマートフォンを握ったまましばし呆然とする。何のために電話したのかわからない。最初に好きな人がいるから貴方とは食事に行けませんって言えばよかったのだろうか。
でも、勅使河原さんも言っていた通り、別に食事イコール付き合うってことではない。そもそも、勅使河原さんは私のことを気に入ってはいるのだろうけれど、私を好きなわけではないだろうから、そんなことを言うのはあまりに自意識過剰だろう。結局混乱の最中に言ってしまったけれど。
なんだかうまく丸め込まれた気がする。
先ほどまで勅使河原さんと隆哉を重ねていたが、それは大きな間違いだった。穏やかで優しいところは似ているけれど、隆哉だったらさっきの電話で詳しい事情を聞いて終わりにしてくれただろう。
そこまで思考を廻らせ、深くため息を付いた。
ああ、そうか。また自分はやってしまった。
私は、隆哉をゆうきの代わりにしようとした。そして今度は、勅使河原さんを隆哉の代わりにしようとしていたのだ。
本当にどうしようもない。隆哉と会って幾分すっきりした気持ちでいたはずだったが、再び自己嫌悪に襲われ私の休日は終わった
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