ガチケモナーは猫耳男子を許せない

某千尋

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59 蕩けて絡み合う

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『……ーン、ユージーン!』

 名前を呼ぶ声が聞こえて目が覚めると、心配そうに揺れる琥珀色の瞳と目が合った。

『ゔぁいつ……』

 その瞳の主をいつものように呼ぼうと思ったのに、舌がうまく回らない。そして次の瞬間にずくり、と身体の奥が疼き、自分の状況を思い出した。

『ここは……』

 ベッドに寝かされていることに気付き、周りを見渡す。ユージーンやヴァイツの部屋ではなかった。

『休憩室だよ。ルーカスが手配してくれた。君を一人にするなんて、こんなことになるなら呼ばれても無視すればよかった』

『そ……いうわけには……っ』

 いかないだろ、と言いかけて飲み込む。呼吸が激しくなってきて、変な声が出そうだった。

『なにがあったのか聞きたかったけど、難しそうだね』

 労わるように髪を撫ぜられる。しかし、そのささやかな刺激すら快感として拾って身体がビクリと反応する。その反応にヴァイツが僅かに目を見張り、ユージーンは恥ずかしさに目を伏せた。なんとか快感を逃そうと呼吸を整えようとするも、全くうまくいかない。
 吐息を漏らしながら顔をほてらせ、なにかを耐えるように目を潤ませるユージーンはひどく扇情的だった。
 ユージーン自身は、常ならぬ速さで鼓動する心臓やうまくいかない呼吸の辛さに顔を歪めているだけのつもりだが、はたから見ればむしゃぶりつきたくなる艶かしさだった。
 ヴァイツも当然その色香にあてられているが、ギリギリの理性でユージーンの体調を気遣っていた。

『どうして欲しい、ユージーン?』

 ユージーンの反応から、間違いなく媚薬の類に侵されていることがわかる。どうすれば楽になるかなどヴァイツにもわかってはいるが、高い矜持を持つユージーンを思えば、勝手に進めると信頼関係に傷がつくと理解していた。

『どう……』

 ユージーンは唇を噛んだ。
 心と身体が分離してしまったかのように、冷静でいたい気持ちと裏腹に身体が全く言うことを聞かない。疼く身体をどうにかして欲しいと今すぐ縋りつきたいくらいだが、僅かに残っている理性がそれを許さない。
 狙われていることはわかっていた。相応の警戒心を持って最善を尽くしたつもりだった。そうして何事もなく穏便に今日を終えるはずだったのに、結局相手に翻弄されてしまった。
 その不甲斐なさが悔しい。もっとうまく立ち回れるつもりだったのに、ルーカスがいなければきっと最悪の事態に陥っていた。

 そこに加えてヴァイツにまで助けを求めるなど、ただでさえ頼るのが下手なユージーンにはできなかった。いい年の大人なのに、こんなことさえ一人で解決できないのかと、情けなさに押しつぶされそうだった。

『ユージーン、君をためらわせているのはなに?私はどんな時だって君に触れたい。こんな目に遭わせてしまったのは私の油断もある。だから、私に頼ることをためらわないで欲しい』

 そんなユージーンの考えなど、ヴァイツにはお見通しだった。付き合いは決して長くはないが、短い時間の中でヴァイツは注意深くユージーンを見てきた。ユージーンが抱える葛藤も、予想できた。
 その心を解きほぐすように、ヴァイツは柔らかく微笑む。なにも迷惑ではない、むしろ頼られることを望んでいるのだとユージーンに伝わるように。

 ヴァイツの言葉を聞き一瞬目を見開いたユージーンは、なにかを言おうとして口を閉じる、というのを何度か繰り返す。ヴァイツはユージーンが言葉を紡ぐまで、根気強く待つ。
 そうして、しばらくしてから決意したような表情をしたユージーンは、くしゃりと顔を歪める。

『……っほしい、ゔぁいつ、さわって』

 ぽろり、とユージーンの頬を涙が伝う。
 ぽろぽろと音もなく涙を流しながらヴァイツに手を伸ばす様はあまりに憐れで、愛おしくて。
 ヴァイツは頷きながらユージーンの頬の雫に唇を寄せた。

『うん、愛してるよユージーン』

 この交わりは苦しむユージーンを解放するためにするわけではない、愛の営みであるのだと言うように、ヴァイツは耳元で愛を囁く。
 ユージーンは、安心するようにヴァイツに頬を擦り寄せ、その身を委ねた。










 とっくに夜会は終わっているだろう時刻。
 その部屋では未だぱちゅん、ぱちゅんと肉と肉がぶつかる音が響いていた。
 何度交わったかわからない。幾度も精を放ったユージーンの陰茎はすでに力を失い、先端からとろとろと液体を漏らしながら揺さぶられる体と共に揺れていた。

『ああっ、も、無理っ!もう、イキたくなっ』

 媚薬の影響で敏感になっていたユージーンは強すぎる快感に苦痛すら感じていた。全身どこに触れられても気持ちよくて、けれどそれが過剰で、ずっと涙をこぼしていた。
 ただ、身体の奥底の疼く部分はまだ治まらず、止めるよう告げる言葉に反して手はヴァイツに縋っている。

『もう楽になった?まだだよね?だって、ユージーンの中はまだまだ熱い』

 そう言いながらゴリっとユージーンの泣きどころを抉るヴァイツ。同時に悲鳴のような嬌声が上がるが、その憐れな声はヴァイツの欲望を高めるだけだった。

『ほら、ユージーンの中は、俺を離すまいとぎゅっと締め付けてきてるよ』

『ちがっ、も、むりだから、抜いてっ』

 びくびくと足を痙攣させながら言い募るも、身体は気持ちを裏切りヴァイツの陰茎に媚びるようにきゅうきゅう吸い付いている。快感に塗れて身体の感覚は曖昧なのに尻が咥えるヴァイツの陰茎の感触だけは明瞭で、己の言葉になんの説得力もないことはユージーンも分かっていた。
 本当に抜かれてしまったらすぐ埋めてくれと願ってしまうだろう。奥を突かれるたびに口から漏れる甘ったるい声が自分のものだと信じたくはないが、そんなことは大したことはないと思えるくらいの痴態を既に晒していた。
 一体どれだけ強い媚薬効果があるのかと、どんな代物を飲まされたのかと考えるとおそろしい。あの果物を使った物は今後一切口にすべきではないだろう。
 けれど、最初の頃よりユージーンの火照りは収まってきて、終わりが近づいていた。

『このまま、溶け合って一つになれたらいいのに』

 掠れた小さなヴァイツの声が、ユージーンの耳をくすぐる。
 すっかり力が抜けた身体を抱きしめられながらぬちゅぬちゅと勿体ぶるように陰茎を抜き挿しされ、ユージーンは途切れそうになる意識と快楽の狭間でその言葉を聞いていた。そうして、ほぼ無意識に頷いた。

 ヴァイツとの境界がなくなって、トロトロに溶け合って一つなって、片時も離れることがなくなるとしたら。
 それは、とても幸せだろうと。

 そんなユージーンの反応を笑ったのだろう、ヴァイツの肩が微かに震えたのを感じたのを最後に、意識は闇に吸い込まれていった。
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