7 / 58
2.蜜蜂の初恋
再会の合図
しおりを挟む
「ルシアン妃、よくぞ言ってくれた!って感じでしたね。スッキリしました。」
舞踏会の帰り道、ヨハンは言った。
「…ルシアン妃も雄なんて知らなかったわ」
「やっぱりそうですよね…。僕も初耳でした。だから、リシャール様が雄だって知っても、国王夫妻は驚かなかったんですね」
「そうね。そこは合点がいくわ。」
ヤプセレ家の巣へ到着した。
リシャールはすぐにドレスを脱いだ。
「……リシャール様。」
「…ん?」
「…他国の方に嫁がれるおつもりですか?」
「……何よ、急に。」
「いや…。他国の王にって……」
「ルシアン妃の励ましの言葉に過ぎないわ。真に受けないでよ。まだ、分からないじゃない」
「ですが……あの黒蜜蜂の方が…」
「あの方は忘れるべき。ハンサムだったから印象に残ってしまっただけで。」
「…本当にいいんですか?」
「それに…きっと王族の方なんでしょう?…私は貴族だとはいえ、王族なんて話が違うわ。」
窓の外を見つめた。
飾っていたブッドレアの花束の香りを嗅いだ。とても甘くて何処か優しい香り。
「ヨハンは、ブッドレアの香りは好き?」
「嫌いじゃないです。でも……香りが強すぎるっていうか。甘すぎるというか…」
「ふふっ、そうよね。私たち蜂じゃなくて蝶が好きな香りですもの。」
「…あのお方もブッドレアを摘んでいたのは、ブッドレアがお好きなんですかね?」
「きっとそうよ。」
「じゃあ!好みが合いますね!いいじゃないですか!」
「……ヨハン。」
「すみません…お食事をお持ちします…」
女王蜂が食すのはローヤルゼリー。
普通の働き蜂は食べてはならないもの。
ブッドレアから作り出した蜜。
香りも味もとてつもなく甘い。
「……。」
「お口に合いませんでしたか?」
「いいえ。甘くてとっても美味しいわ。」
「そうですか。なら良かったです。」
リシャールは、ずっと上の空だった。
「…少しだけ1人にしてくれる?」
「かしこまりました。皆、行きましょう。」
王台にいた働き蜂は皆退室した。
「…はぁ…」
リシャールは誰かの前で、ため息をつきたくなかった。
本当はあの方が忘れられない。
忘れられるわけないでしょう?
あの瞳を見てしまったら。
魔法でもかかったのかな。
「アンドレ様……」
イエローダイヤの指輪を見つめて、小さく呟いた。
もう一度、会いたい。
______________
「今じゃ兄上は笑いものよ、一家の恥だわ」
そう言って、隠れてほくそ笑むのは妹のミシェル。
「…もう、兄上の居場所はなくなるわ」
ミシェルに仕えるようになったカトリーヌは心の中で悲しんでいた。
「ミシェル様、そのようなことは仰ってはなりません。フレア様が…」
「はいはい、分かってるわ。ママの遺言ね、分かってるって。」
ミシェルはシャンパーニでの舞踏会で、夫の候補が上がっていた。
「国境を越える舞踏会には行かれるのですか?」
「…兄上が行くのでしょう?…様子を見に行くわ。心配だもの。また一家を恥に晒すようなら私が兄上を何とかしなくちゃね。」
カトリーヌは苦笑いをした。
______________
リシャールの願いが叶うのは数日後の舞踏会。
会場はペリシエ王国の城と国立公園。
貴族は城、一般は公園に分かれる。
「リシャール様、ドレスのご用意が出来ましたよ。着替えましょう。」
「…えぇ。」
リシャールは久しく楽しみが出来た。
気分が良く、鼻歌を歌う。
その姿を見て、ヨハンも働き蜂も皆嬉しかった。
「…これって。ママのドレス…!」
「はい。今日は、王子様にもお会いするので。」
「まぁ…そんな…!」
「張り切ってご用意させて頂きました。」
きらきらするスパンコールと花の刺繍が美しい、アプリコットのボールガウンドレス。
大好きなイエローダイヤの指輪は勿論、イヤリングも付けた。
「…これなら…気付いてくれるかな…」
「当たり前じゃないですか。王子様の記憶にも鮮明に残っているはずです。」
ドレッサーに映る自分は今までと見違える。
「…さ、行きましょう。」
「えぇ。」
「リシャール様、行ってらっしゃいませ」
働き蜂に見送られ、リシャールはペリシエへ向かった。
________ペリシエ王国。___
「この度は、お集まり頂きありがとうございます。会場であるペリシエの国王陛下、クロヴィス・ルグラン でございます。」
王室の働き蜂が紹介する。
ペリシエの国王 クロヴィス・ルグラン
会場の人々に向かい、挨拶を行った。
「…皆さん、今日は思う存分楽しんでいってください。そして、こちらが我が息子、アンドレです。」
「……。」
アンドレは会釈をした。王座の隣に立ち、会場を見渡す。
呼ばれた令嬢の女王蜂達はアンドレに釘付け。
「さぁ!舞踏会を開催致しましょう!」
国王の一言でワルツが始まった。
舞踏会の帰り道、ヨハンは言った。
「…ルシアン妃も雄なんて知らなかったわ」
「やっぱりそうですよね…。僕も初耳でした。だから、リシャール様が雄だって知っても、国王夫妻は驚かなかったんですね」
「そうね。そこは合点がいくわ。」
ヤプセレ家の巣へ到着した。
リシャールはすぐにドレスを脱いだ。
「……リシャール様。」
「…ん?」
「…他国の方に嫁がれるおつもりですか?」
「……何よ、急に。」
「いや…。他国の王にって……」
「ルシアン妃の励ましの言葉に過ぎないわ。真に受けないでよ。まだ、分からないじゃない」
「ですが……あの黒蜜蜂の方が…」
「あの方は忘れるべき。ハンサムだったから印象に残ってしまっただけで。」
「…本当にいいんですか?」
「それに…きっと王族の方なんでしょう?…私は貴族だとはいえ、王族なんて話が違うわ。」
窓の外を見つめた。
飾っていたブッドレアの花束の香りを嗅いだ。とても甘くて何処か優しい香り。
「ヨハンは、ブッドレアの香りは好き?」
「嫌いじゃないです。でも……香りが強すぎるっていうか。甘すぎるというか…」
「ふふっ、そうよね。私たち蜂じゃなくて蝶が好きな香りですもの。」
「…あのお方もブッドレアを摘んでいたのは、ブッドレアがお好きなんですかね?」
「きっとそうよ。」
「じゃあ!好みが合いますね!いいじゃないですか!」
「……ヨハン。」
「すみません…お食事をお持ちします…」
女王蜂が食すのはローヤルゼリー。
普通の働き蜂は食べてはならないもの。
ブッドレアから作り出した蜜。
香りも味もとてつもなく甘い。
「……。」
「お口に合いませんでしたか?」
「いいえ。甘くてとっても美味しいわ。」
「そうですか。なら良かったです。」
リシャールは、ずっと上の空だった。
「…少しだけ1人にしてくれる?」
「かしこまりました。皆、行きましょう。」
王台にいた働き蜂は皆退室した。
「…はぁ…」
リシャールは誰かの前で、ため息をつきたくなかった。
本当はあの方が忘れられない。
忘れられるわけないでしょう?
あの瞳を見てしまったら。
魔法でもかかったのかな。
「アンドレ様……」
イエローダイヤの指輪を見つめて、小さく呟いた。
もう一度、会いたい。
______________
「今じゃ兄上は笑いものよ、一家の恥だわ」
そう言って、隠れてほくそ笑むのは妹のミシェル。
「…もう、兄上の居場所はなくなるわ」
ミシェルに仕えるようになったカトリーヌは心の中で悲しんでいた。
「ミシェル様、そのようなことは仰ってはなりません。フレア様が…」
「はいはい、分かってるわ。ママの遺言ね、分かってるって。」
ミシェルはシャンパーニでの舞踏会で、夫の候補が上がっていた。
「国境を越える舞踏会には行かれるのですか?」
「…兄上が行くのでしょう?…様子を見に行くわ。心配だもの。また一家を恥に晒すようなら私が兄上を何とかしなくちゃね。」
カトリーヌは苦笑いをした。
______________
リシャールの願いが叶うのは数日後の舞踏会。
会場はペリシエ王国の城と国立公園。
貴族は城、一般は公園に分かれる。
「リシャール様、ドレスのご用意が出来ましたよ。着替えましょう。」
「…えぇ。」
リシャールは久しく楽しみが出来た。
気分が良く、鼻歌を歌う。
その姿を見て、ヨハンも働き蜂も皆嬉しかった。
「…これって。ママのドレス…!」
「はい。今日は、王子様にもお会いするので。」
「まぁ…そんな…!」
「張り切ってご用意させて頂きました。」
きらきらするスパンコールと花の刺繍が美しい、アプリコットのボールガウンドレス。
大好きなイエローダイヤの指輪は勿論、イヤリングも付けた。
「…これなら…気付いてくれるかな…」
「当たり前じゃないですか。王子様の記憶にも鮮明に残っているはずです。」
ドレッサーに映る自分は今までと見違える。
「…さ、行きましょう。」
「えぇ。」
「リシャール様、行ってらっしゃいませ」
働き蜂に見送られ、リシャールはペリシエへ向かった。
________ペリシエ王国。___
「この度は、お集まり頂きありがとうございます。会場であるペリシエの国王陛下、クロヴィス・ルグラン でございます。」
王室の働き蜂が紹介する。
ペリシエの国王 クロヴィス・ルグラン
会場の人々に向かい、挨拶を行った。
「…皆さん、今日は思う存分楽しんでいってください。そして、こちらが我が息子、アンドレです。」
「……。」
アンドレは会釈をした。王座の隣に立ち、会場を見渡す。
呼ばれた令嬢の女王蜂達はアンドレに釘付け。
「さぁ!舞踏会を開催致しましょう!」
国王の一言でワルツが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる