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醜いアヒルの子は頷けない
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「それなら、評判を気にされるのもわかります。ですが、やはり私よりふさわしい女性はいくらでもおります。私は人形です。誰かの言いなりでしか動けません」
思い詰めた表情の美雪に高遠は安心させるように頷く。
「連絡をくれたじゃないか。人形なら私に連絡をしたりはしない。人形は操られなければ何もできないから。それなのに貴女は連絡してきてくれた。私が予想していたよりも早くに」
「・・・」
祖母に腹を立てて衝動的に電話をしてしまったとは言える筈もない。
初めて電話をかけた感動さえ、その時は感じないくらい怒りで頭がいっぱいだったのだ。
美雪は時間が戻せるのなら、庭を散歩する前に戻りたいと思った。そこまでは無理でも、せめてこの店で電話をかける前に戻れればと、改めて自分の行動が恥ずかしくなってくる。
「私を好きになれとは言わない。愛する必要もない。好きになるのも愛するのも、麗だけでいい」
何も言えずに恥じ入っていた美雪に高遠は言葉を続ける。
その内容はとても意外なものだった。
「麗様だけ?」
母親になってもらいたいと言うからには、父親を誰かがする筈。それが高遠だということは言わなくてもわかる。
一応は夫婦になる筈なのに、好きにさえならなくてもいいと言う高遠の発言に美雪は疑問を持った。
「ああ。私は麗に他の子以上の幸せを上げたい。実の両親を失ったあの子に、実の両親以上にあの子を幸せにできる両親を与えたいんだ。その為に貴女を麗の母親にしたい。私は麗を満よりも愛する自信があるが、弟が疵を付けた麗の評判を見えないようにしてくれるのは貴女の評判しかないんだ、『上延の人形姫』」
『上延の人形姫』と呼ばれるたびに美雪は誰がいつ名付けたかわからない二つ名とそれが持つ評価だけで自分が見られているような気がした。
そう言えば、今日、高遠が美雪の名前を呼んでいないことに美雪は気付いた。
前に呼ばれたのも本人確認の為だったと思い出し、心がモヤモヤとする。
「高遠様。私にはどうやれば母親になれるのかわかりません。それでも貴方は私に母親になれと?」
美雪は晴れない気持ちをぶつけるように言う。美雪もこんな風には言うつもりはなかった。
自信がないだけでなく、子どもと接することも少なかった美雪である。母親になって欲しいと言われて、それを二つ返事で快諾できる筈もない。
不安材料を提示したかっただけなのに、高遠が自分ではなく、自分の評判をあてにしていることが美雪には辛かった。
「最初から親だった人間はいない。この契約で貴女は人形から人間に戻り、貴女は母親として麗を愛することで麗の母親になる。貴女は麗の成長と共に親として成長していけばいい」
「ですが・・・」
高遠が見ているのはやはり美雪ではない。美雪のようでいて、美雪の後ろにあるもの。祖母の人形であったり、『上延の人形姫』と呼ばれる社交界での評判だ。
今、高遠は自分を人形としてしか見ていないと美雪は思った。
高遠は人形から人間になればいいと言うが、人間がどのようなものなのかわからない美雪にとって『上延の人形姫』が『高遠の人形姫』に変わるだけだ。
「そんなに躊躇うなら、一度、麗と会ってみればいい。会ってみれば気持ちも決まる筈だ。麗を一目見て恋に落ちない人間はいないからな」
「・・・」
楽し気に語る高遠を美雪は冷めた目で見ていた。美雪は人形に過ぎない。祖母の下を飛び出してしまった美雪の操る手が変わるだけ。
否とは口にできなかった。
それに『上延の人形姫』が伝説とは違うことを知る高遠に抗うことなど、元々美雪に許されておらず、答えなど必要とされていないのだから。
その沈黙を高遠は了承したものだと受け取った。
思い詰めた表情の美雪に高遠は安心させるように頷く。
「連絡をくれたじゃないか。人形なら私に連絡をしたりはしない。人形は操られなければ何もできないから。それなのに貴女は連絡してきてくれた。私が予想していたよりも早くに」
「・・・」
祖母に腹を立てて衝動的に電話をしてしまったとは言える筈もない。
初めて電話をかけた感動さえ、その時は感じないくらい怒りで頭がいっぱいだったのだ。
美雪は時間が戻せるのなら、庭を散歩する前に戻りたいと思った。そこまでは無理でも、せめてこの店で電話をかける前に戻れればと、改めて自分の行動が恥ずかしくなってくる。
「私を好きになれとは言わない。愛する必要もない。好きになるのも愛するのも、麗だけでいい」
何も言えずに恥じ入っていた美雪に高遠は言葉を続ける。
その内容はとても意外なものだった。
「麗様だけ?」
母親になってもらいたいと言うからには、父親を誰かがする筈。それが高遠だということは言わなくてもわかる。
一応は夫婦になる筈なのに、好きにさえならなくてもいいと言う高遠の発言に美雪は疑問を持った。
「ああ。私は麗に他の子以上の幸せを上げたい。実の両親を失ったあの子に、実の両親以上にあの子を幸せにできる両親を与えたいんだ。その為に貴女を麗の母親にしたい。私は麗を満よりも愛する自信があるが、弟が疵を付けた麗の評判を見えないようにしてくれるのは貴女の評判しかないんだ、『上延の人形姫』」
『上延の人形姫』と呼ばれるたびに美雪は誰がいつ名付けたかわからない二つ名とそれが持つ評価だけで自分が見られているような気がした。
そう言えば、今日、高遠が美雪の名前を呼んでいないことに美雪は気付いた。
前に呼ばれたのも本人確認の為だったと思い出し、心がモヤモヤとする。
「高遠様。私にはどうやれば母親になれるのかわかりません。それでも貴方は私に母親になれと?」
美雪は晴れない気持ちをぶつけるように言う。美雪もこんな風には言うつもりはなかった。
自信がないだけでなく、子どもと接することも少なかった美雪である。母親になって欲しいと言われて、それを二つ返事で快諾できる筈もない。
不安材料を提示したかっただけなのに、高遠が自分ではなく、自分の評判をあてにしていることが美雪には辛かった。
「最初から親だった人間はいない。この契約で貴女は人形から人間に戻り、貴女は母親として麗を愛することで麗の母親になる。貴女は麗の成長と共に親として成長していけばいい」
「ですが・・・」
高遠が見ているのはやはり美雪ではない。美雪のようでいて、美雪の後ろにあるもの。祖母の人形であったり、『上延の人形姫』と呼ばれる社交界での評判だ。
今、高遠は自分を人形としてしか見ていないと美雪は思った。
高遠は人形から人間になればいいと言うが、人間がどのようなものなのかわからない美雪にとって『上延の人形姫』が『高遠の人形姫』に変わるだけだ。
「そんなに躊躇うなら、一度、麗と会ってみればいい。会ってみれば気持ちも決まる筈だ。麗を一目見て恋に落ちない人間はいないからな」
「・・・」
楽し気に語る高遠を美雪は冷めた目で見ていた。美雪は人形に過ぎない。祖母の下を飛び出してしまった美雪の操る手が変わるだけ。
否とは口にできなかった。
それに『上延の人形姫』が伝説とは違うことを知る高遠に抗うことなど、元々美雪に許されておらず、答えなど必要とされていないのだから。
その沈黙を高遠は了承したものだと受け取った。
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