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アライアス
攫われた影響で兄がヤンデレになりました
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「理解しなくていい。人を攫おうとする奴なんか理解する必要なんかないからな」
その言葉を聞いて、兄が私を見捨てたわけじゃなかったことを知った。
よかった。オスカーが不機嫌になったのは私のせいじゃなかった。
でも――
「ちょっと待て。私は自分では理解できない理由で攫われるの?!」
「理由は全部だ。お前はリアナ姉上のせいで狙われ、前庭で遊んでいるところで目を付けられ、外出先でも『ハルスタッド家の未婚の娘は噂通りの美貌』だと確認されて、その噂のせいで色々な方法でお前を攫おうと画策されている」
全部って・・・。
リアナ姉上? 姉のせい?
姉は3人いるけど、見たことないから思いつかない。その思いつかない姉の一人が原因の一つ?
前庭でも目を付けられたんだ・・・。
それに外出先って、ウォルトと行った紳士用品店とオスカーと行ったお出かけしか記憶にないんだけど・・・。
それ全部?
「全部・・・。でも、前庭で遊ぶことはジェニングスに怒られていないわ。それで目を付けられたなら、ジェニングスが許す筈ないじゃない」
私が前庭で遊ぶことについて疑問をぶつけたら、オスカーは真剣な表情で答えてくれた。
「ああ。ジェニングスじゃないよ。ジェニングスは前庭で遊びたがっているなら、それを許す命に従っているだけだ」
「・・・」
それを命じたのはジェニングスに情報制限をさせることのできた人物。
だけど、どうして?
どうして、私が前庭で遊ぶことを許したの?
オスカーが言うように人攫いに目を付けられるのに、どうして?
「リーンネット。お前が望むなら、一族の棟に部屋を用意する。そこで暮らすなら、もうこの棟にも外にも出られなくなるが、お前が安心して生きていけるなら構わない」
私が疑問を口に出す前にオスカーは言った。
一族の棟で暮らす?
ゲームでの私の退場ルートじゃない。
「一族の棟で暮らす・・・? 外に出られない・・・?」
『そして、彼女の姿を見たものは誰もいなくなった。』とか、続きそう。
実際、ゲームだと退場後の私は同じ一族と結婚して、一族の棟で暮らすことになるから、一族以外の誰にも姿を見られなくなるんだけど。
マリーンの言葉が蘇った。
『だって、私たちは中庭より先には出られないのよ、リーンネット。一族の誰か以外とどうやって結婚しろって言うの?』
「そうなったら、オスカーとも会えなくなる? ウォルトとも会えない?」
「僕は会いに行けるけど、ウォルトは無理だ」
オスカーは兄だから一族の棟には来られる。
でも、今までのように毎日は会えなくなるだろう。
ウォルトはこの棟では本家の一員のように扱われているけど、一族の棟には来られない。ハルスタッド一族じゃないから。
オスカーよりも近くて、兄らしいけど兄じゃないウォルト。
どんなに兄らしくて兄貴風を吹かしていてもウォルトはハルスタッド一族じゃない。
ウォルトの言うことが鬱陶しくても、それが聞けなくなる?
デリカシーのない言動が頭に来ていても、ウォルトの顔を見るのは嫌いじゃない。
だけど、一族の棟で暮らしたら、ウォルトの顔を見ることはない・・・。
「嘘だよね・・・」
無意識にシーツを握りしめる自分の手を見ながら、ポロリと思っていたことを口に出してしまった。
言ってから、ウォルトと会えなくなるのが寂しいことに気付く。
「リーンネット?」
怪訝そうな顔をするオスカーの顔を見ながら聞いた。
「ウォルトと会えなくなるの・・・?」
「お前、ウォルトのことが――」
オスカーは額に縦皺を寄せ、心なしか目を細める。元々、半分くらいしか開いていない緑柱石のような目に剣呑な光が宿っている。
まずい。
怖い。
怖くてたまらない。
何がオスカーを不機嫌にさせたの?!
地雷はどこにあったの?!
私の馬鹿ー!!
「やはり、一族の棟に移らないと危ないな。この棟にはまだあのメイドのような人間のいるかもしれない。父上に許可を頂かなくては・・・」
目が完全に濁って、死んだような目をしている!
これ、駄目なヤツだ!
完全にオスカーが危ない!
シスコンがヤンデレに進化してるよ!
「大丈夫! 大丈夫だよ、オスカー! 私はここで充分だから! 一族の棟に移ったら、キャットと一緒にいられないし!」
ヤンデレの暴走を止めなきゃ!
ヤンデレはまともな判断ができないから、今、思いついたことは実現させちゃ駄目だ。
ヤンデレ。駄目、絶対。
「大丈夫。メイドがいなくても、あそこならみんなが面倒を見てくれる。一日でも早く一族の棟に移れるよう、父上と話してくるから」
ヤンデレは驚くような速さで部屋を出て行った。
ヤンデレは人の話を聞こうとしない。
駄目だ。追い付けそうにない。
外出していることが多い父がヤンデレに捕まらないことを祈ろう・・・。
その言葉を聞いて、兄が私を見捨てたわけじゃなかったことを知った。
よかった。オスカーが不機嫌になったのは私のせいじゃなかった。
でも――
「ちょっと待て。私は自分では理解できない理由で攫われるの?!」
「理由は全部だ。お前はリアナ姉上のせいで狙われ、前庭で遊んでいるところで目を付けられ、外出先でも『ハルスタッド家の未婚の娘は噂通りの美貌』だと確認されて、その噂のせいで色々な方法でお前を攫おうと画策されている」
全部って・・・。
リアナ姉上? 姉のせい?
姉は3人いるけど、見たことないから思いつかない。その思いつかない姉の一人が原因の一つ?
前庭でも目を付けられたんだ・・・。
それに外出先って、ウォルトと行った紳士用品店とオスカーと行ったお出かけしか記憶にないんだけど・・・。
それ全部?
「全部・・・。でも、前庭で遊ぶことはジェニングスに怒られていないわ。それで目を付けられたなら、ジェニングスが許す筈ないじゃない」
私が前庭で遊ぶことについて疑問をぶつけたら、オスカーは真剣な表情で答えてくれた。
「ああ。ジェニングスじゃないよ。ジェニングスは前庭で遊びたがっているなら、それを許す命に従っているだけだ」
「・・・」
それを命じたのはジェニングスに情報制限をさせることのできた人物。
だけど、どうして?
どうして、私が前庭で遊ぶことを許したの?
オスカーが言うように人攫いに目を付けられるのに、どうして?
「リーンネット。お前が望むなら、一族の棟に部屋を用意する。そこで暮らすなら、もうこの棟にも外にも出られなくなるが、お前が安心して生きていけるなら構わない」
私が疑問を口に出す前にオスカーは言った。
一族の棟で暮らす?
ゲームでの私の退場ルートじゃない。
「一族の棟で暮らす・・・? 外に出られない・・・?」
『そして、彼女の姿を見たものは誰もいなくなった。』とか、続きそう。
実際、ゲームだと退場後の私は同じ一族と結婚して、一族の棟で暮らすことになるから、一族以外の誰にも姿を見られなくなるんだけど。
マリーンの言葉が蘇った。
『だって、私たちは中庭より先には出られないのよ、リーンネット。一族の誰か以外とどうやって結婚しろって言うの?』
「そうなったら、オスカーとも会えなくなる? ウォルトとも会えない?」
「僕は会いに行けるけど、ウォルトは無理だ」
オスカーは兄だから一族の棟には来られる。
でも、今までのように毎日は会えなくなるだろう。
ウォルトはこの棟では本家の一員のように扱われているけど、一族の棟には来られない。ハルスタッド一族じゃないから。
オスカーよりも近くて、兄らしいけど兄じゃないウォルト。
どんなに兄らしくて兄貴風を吹かしていてもウォルトはハルスタッド一族じゃない。
ウォルトの言うことが鬱陶しくても、それが聞けなくなる?
デリカシーのない言動が頭に来ていても、ウォルトの顔を見るのは嫌いじゃない。
だけど、一族の棟で暮らしたら、ウォルトの顔を見ることはない・・・。
「嘘だよね・・・」
無意識にシーツを握りしめる自分の手を見ながら、ポロリと思っていたことを口に出してしまった。
言ってから、ウォルトと会えなくなるのが寂しいことに気付く。
「リーンネット?」
怪訝そうな顔をするオスカーの顔を見ながら聞いた。
「ウォルトと会えなくなるの・・・?」
「お前、ウォルトのことが――」
オスカーは額に縦皺を寄せ、心なしか目を細める。元々、半分くらいしか開いていない緑柱石のような目に剣呑な光が宿っている。
まずい。
怖い。
怖くてたまらない。
何がオスカーを不機嫌にさせたの?!
地雷はどこにあったの?!
私の馬鹿ー!!
「やはり、一族の棟に移らないと危ないな。この棟にはまだあのメイドのような人間のいるかもしれない。父上に許可を頂かなくては・・・」
目が完全に濁って、死んだような目をしている!
これ、駄目なヤツだ!
完全にオスカーが危ない!
シスコンがヤンデレに進化してるよ!
「大丈夫! 大丈夫だよ、オスカー! 私はここで充分だから! 一族の棟に移ったら、キャットと一緒にいられないし!」
ヤンデレの暴走を止めなきゃ!
ヤンデレはまともな判断ができないから、今、思いついたことは実現させちゃ駄目だ。
ヤンデレ。駄目、絶対。
「大丈夫。メイドがいなくても、あそこならみんなが面倒を見てくれる。一日でも早く一族の棟に移れるよう、父上と話してくるから」
ヤンデレは驚くような速さで部屋を出て行った。
ヤンデレは人の話を聞こうとしない。
駄目だ。追い付けそうにない。
外出していることが多い父がヤンデレに捕まらないことを祈ろう・・・。
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