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第一章
赤みがかった金色の髪の男4
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同僚の娼婦から嫌われないように小芝居までやってくれた店主に美穂は感激した。店主は美穂に地獄のような日々を送らせた張本人でもあるが、美穂はすっかりそのことを忘れてしまっていた。チョロいように思えるが、頼るべき者のいない異世界である。いつの間にかストックホルム症候群に陥っていてもおかしくはない。
こんな状況でなかったら、美穂にも店主が揉め事の芽を摘んだだけだということがわかっただろう。
「ああ、もう。美穂ちゃん。お客さん、ほっといたらあかんで」
店主は顔を顰めて、仕事を促す。
恥ずかしがって偽悪的な態度をとったのだと美穂は思った。そこで空気を読んで、仕事をすることにした。
「はい」
素直に返事する美穂を赤みがかった金色の髪の男が楽し気に笑いながらエスコートして二人はサロンを出て行った。
「それにしても、初めてだね。サロンで頼むなんて」
サロンを出て人の目もなくなり、赤みがかった金色の髪の男が美穂に話しかけてきた。
「あ、あれは・・・事情があって。その・・・」
お腹が空きすぎて少しでも早く食べたかったからとは言い出せないので、美穂はしどろもどろになった。それを話せば、なし崩し的に具無しスープ生活を語ることにもなる。異世界で娼婦をさせられていても、プライドの欠片くらいは残っている。今の現状を言う気にはなれない。
だが、赤毛の男が相手の場合、からかわれてつい頭に血が上って口走ってしまった。言いたくなくても言ってしまった後悔で美穂は頭を抱える羽目になった。思い出しただけでも腹が立つ光景だった。
(今度こそ言わないようにしないと。)
とは決意したものの、この男も一筋縄ではいかない性格をしている。笑顔魔人で胡散臭いはずが、警戒心を抱かせていない時点で美穂が太刀打ちできるような相手ではないのだ。
「人前で甘えてもらえるなんて思ってもみなかったよ」
(甘える?! それも人前で?!!)
言われて美穂は気付いた。具無しスープ生活を知っている店主や同僚の娼婦ですら、おねだりだと思う態度は甘えていると思われてもおかしくないことに。店主も強請るな、イチャつくなと言っていたが、あれは誤魔化してくれていたからだと思っていたが、事情を知らない第三者にはそうではなかったのだ。
更にあそこはサロンだ。何人もいる店の者たちと客たちの目の前で、堂々と甘えていると思われたということは、恥の文化で育った美穂には耐えられなかった。
(ぎゃあー!!)
羞恥心でゴロゴロ転げまわりたいぐらいだった。自由時間ならできたかもしれないが、ご飯が来てくれているのにそんな奇行をして帰られたら明日の食事も具無しスープだけになる。
転がれない代わりにギュイーンと一気に削られていくHP(精神力)。
心の中で七転八倒している美穂はエスコートされるままにフラフラと頼りない足取りで歩く。いいようにされても気付かない状況でも赤みがかった金色の髪の男は紳士的だ。美穂の部屋まで悪さをするどころか、ぶつかりそうになる美穂を引き寄せたり、当たらないように誘導して無事に連れて行く。
赤みがかった金色の髪の男は美穂の手を下して一人で行動できるようになってから部屋の扉を開け、お道化て言う。
「どうぞ、お嬢様」
こんな状況でなかったら、美穂にも店主が揉め事の芽を摘んだだけだということがわかっただろう。
「ああ、もう。美穂ちゃん。お客さん、ほっといたらあかんで」
店主は顔を顰めて、仕事を促す。
恥ずかしがって偽悪的な態度をとったのだと美穂は思った。そこで空気を読んで、仕事をすることにした。
「はい」
素直に返事する美穂を赤みがかった金色の髪の男が楽し気に笑いながらエスコートして二人はサロンを出て行った。
「それにしても、初めてだね。サロンで頼むなんて」
サロンを出て人の目もなくなり、赤みがかった金色の髪の男が美穂に話しかけてきた。
「あ、あれは・・・事情があって。その・・・」
お腹が空きすぎて少しでも早く食べたかったからとは言い出せないので、美穂はしどろもどろになった。それを話せば、なし崩し的に具無しスープ生活を語ることにもなる。異世界で娼婦をさせられていても、プライドの欠片くらいは残っている。今の現状を言う気にはなれない。
だが、赤毛の男が相手の場合、からかわれてつい頭に血が上って口走ってしまった。言いたくなくても言ってしまった後悔で美穂は頭を抱える羽目になった。思い出しただけでも腹が立つ光景だった。
(今度こそ言わないようにしないと。)
とは決意したものの、この男も一筋縄ではいかない性格をしている。笑顔魔人で胡散臭いはずが、警戒心を抱かせていない時点で美穂が太刀打ちできるような相手ではないのだ。
「人前で甘えてもらえるなんて思ってもみなかったよ」
(甘える?! それも人前で?!!)
言われて美穂は気付いた。具無しスープ生活を知っている店主や同僚の娼婦ですら、おねだりだと思う態度は甘えていると思われてもおかしくないことに。店主も強請るな、イチャつくなと言っていたが、あれは誤魔化してくれていたからだと思っていたが、事情を知らない第三者にはそうではなかったのだ。
更にあそこはサロンだ。何人もいる店の者たちと客たちの目の前で、堂々と甘えていると思われたということは、恥の文化で育った美穂には耐えられなかった。
(ぎゃあー!!)
羞恥心でゴロゴロ転げまわりたいぐらいだった。自由時間ならできたかもしれないが、ご飯が来てくれているのにそんな奇行をして帰られたら明日の食事も具無しスープだけになる。
転がれない代わりにギュイーンと一気に削られていくHP(精神力)。
心の中で七転八倒している美穂はエスコートされるままにフラフラと頼りない足取りで歩く。いいようにされても気付かない状況でも赤みがかった金色の髪の男は紳士的だ。美穂の部屋まで悪さをするどころか、ぶつかりそうになる美穂を引き寄せたり、当たらないように誘導して無事に連れて行く。
赤みがかった金色の髪の男は美穂の手を下して一人で行動できるようになってから部屋の扉を開け、お道化て言う。
「どうぞ、お嬢様」
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