僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

文字の大きさ
33 / 69
第四章

第52話 漆黒の剣

しおりを挟む
 ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
********************************************

 エメラルドヒドラを倒し、目的の魔石を手に入れてから3日が経った。

 僕達は今、カエサル迷宮から馬車で2日の距離にあるエルドという小さな街に来ている。

 この街にクラウディアさんの自宅があるらしく、病気のお父さんも、それから報酬である武具もそこにあるという事で、僕も同行する事になった。

 
 と言う訳で現在、クラウディア邸宝物庫に僕はいる。

 クラウディアさんの家は、流石アンネマリーさん達にクラウディア様と呼ばれるだけあって、まさに貴族のお屋敷といった感じの豪邸だった。
 
 クラウディアさん曰く、父が一時期、宮廷魔術師をしていた時に国王陛下から賜った由緒ある邸宅との事だ。その父も3年ほど前に野に下り、かつてやっていたハンターに再び戻ったという事らしい。

 そしてこの宝物庫にある物は全て、その父親がハンターとして集めたお宝の数々と言う訳だ。


 宝物庫の中には、迷宮産の剣などの武器を始め、見た事の無いような変わった形の盾。更には真っ赤な色の燭台の魔道具など、まさに色とりどりの物が所狭しと、並べられている。

「……すごい量だ」

 思わず言葉が漏れる。それほどまでにここにあるお宝の数が多いのだ。

「これほどの物を迷宮から引き揚げてくるといく事は、クラウディア様のお父上は極めて優秀なハンターであらせられたのですね」
 
 セバスさんからも感嘆の声が漏れる。

「ホントにこの中から好きなのを1つ選んでいいんですか?」

 そばで控えるクラウディアさんに僕は声を掛ける。

「もちろんです。クラウド様のおかげで、父も快方に向かっております。そのお礼でございます。ですから、お好きなものを1つと言わず幾つ選んでいただいても構いません」

 いやいや、それは後が怖いです。

「ありがとうございます。じゃあ、一通り見させてもらいますね」


 今、宝物庫を見て回っているのは僕とセバスさんだけだ。それほど広い宝物庫ではないのに、所狭しとお宝が置かれているので、あまり多くの人が入ると身動きが取れなくなってしまう。勿論同じ意味で装備をしたまま入るのにもやや狭い。

 僕とセバスさんはお宝を順々に見て回る。その後ろをクラウディアさんは黙って付いて来ている。

 しかし、どれも高価そうなお宝ばかりだ。僕自身、物の良し悪しが分からないから、こういった時はセバスさんにお任せだ。

 そんな感じでなんとなくお宝の数々を見ていると――

『クラウド様。あそこある、漆黒の剣なのですが――』

 何故かセバスさんは人化しているのに言葉ではなく念話で僕に話し掛けてきた。

 言われるままにセバスさんが念話で伝えてき剣をみる。

 見た目は無駄な装飾も無くシンプルでいて機能的なデザインの剣だ。長さは1mほどで、一般的なロングソードと言えるだろう。――ただ。色がまさに漆黒。刃の部分から柄の部分まですべて同じように真っ黒な色をしている。見ているだけで背中に寒気が走る――そんな感じがする剣だ。

『あの剣がどうかしましたか?』

『あの剣は――おそらく、浄化の神器です』

『浄化の神器? それはいったい……?』

 名前からどういった物か大体は分かるが――

『一言いえば、邪気を吸収し浄化する神器でございます』

 そんな神器から何でこんなに嫌な感じがするんだろう。

『しかし、この神器は邪気に侵されています』

『浄化の神器なのに邪気に侵されているんですか?』

『はい、一度同じ物を見た事がありますので間違いございません』

 そうなんだ。しかし、セバスさんの表情がかなり硬い。

『そして、以前見た同じ物があった場所は……邪神の欠片が封印されていた祭壇でございます』

 ……今なんて? 邪神の欠片――

 
 邪神の欠片とは――今から約5千年前の神話の時代。その頃、世界は天神が治めていた。しかし、そこに邪神が現れ世界を支配しようと天神に戦いを挑んだ。戦いは百年に渡り続いたと言われている。戦いは天神が邪神の魂を5つ斬り裂き封印した事により勝利を収めた。だがしかし、天神は邪神を封印するのにすべての力を使い果たし、この世界からその姿を消した。――その時5つに斬り裂かれた邪神の魂が邪神の欠片である。

 今から1千年前に起こった邪神戦争は、この邪神の欠片の一つの封印が解かれ、この世界に顕現したものだと言われている。

 そして――その時邪神が封印されていた場所にあった物と同じ物がここにある。

『この剣の役目は……やはり邪神の欠片の封印――ですか?』

『はい。邪神を封印する為――いえ、正確には邪神の力を抑える為、天神は邪神の欠片を封印した場所に、それぞれ3つの浄化の神器を備えたと言われています。その浄化の神器が、浄化の聖剣、浄化の聖杯、浄化の勾玉でございます』

『――そしてここにあるのがその浄化の聖剣って事ですか……。これって、当時のセバスさんが見たものと同じ浄化の聖剣ではないのですか?』

 ここに浄化の聖剣があったからと言って邪神の欠片の封印が解けているとは限らない。

『いえ、当時の物ではありません――何故なら……当時の浄化の聖剣は今、私が持っているからです』

 ……という事は――

『すぐにクラウディア様のお父上に、この剣をどこで手に入れたかを確認し、現地を調査した方が良いでしょう』

 ……何だかえらい事になってきたな。

「クラウド様。気になる物でもありましたか?」

 僕とセバスさんが黙って念話で会話をしているとクラウディアさんが話し掛けてくる。どうやら黒い剣の前から動かないから黒い剣を気に入ったと思ったようだ。

「はい、少し気になる物が……これなんですが――少しこの剣についてクラウディアさんのお父上に伺いたい事が有るのですがよろしいでしょうか?」

 そう言って黒い剣を持ちクラウディアさんに見せお伺いを立てる。いくらお父さんが回復に向かっているとはいえズカズカ話を聞くわけにも行かないのでクラウディアさんに一応お伺いを立てておく。

「その剣に何かあるのですか?」

クラウディアさんにはこの剣が醸し出す異様な気配が分からないようだ。

「……はい」

 一つ頷くと、僕の真剣な表情から何かを感じ取ったのかクラウディアさんは――

「すぐに父の所に案内いたします」

 と、承諾する。そしてすぐに踵を返し移動を開始した。


 この剣が邪神の欠片の封印されし場所にあった物だったとして、既に新たな邪神が復活しているのだろうか? もしそうなら、僕はこれからどうすればいいんだろう。
************************************************
 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 ブックマークや評価ポイントを頂けると、とても励みになります。

アルファポリス様でランキング参加する事にしました。下のバナーからよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...