僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第四章

第51話 VSエメラルドヒドラ(2)

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 2つ目の頭を倒されるとヒドラは、突然僕から逃げるように背を向け走り出した。

 逃げた? ――違う!! 

「撤退!! ヒドラがそっちに行きました。おそらくクラウディアさん達を狙っています。直ぐに撤退して下さい!」

「了解しました!!」

 俺の掛け声に素直にクラウディアさんの声か返ってくる。

 よし、クラウディアさん達の気配が離れていく。どうやら指示通り撤退を開始したみたいだ。

 ――だがしかし、ヒドラも止まらない。クラウディアさん達を追うように移動を続ける。

 僕も直ぐにヒドラを追うため走る。闘鬼魔装を発動し、一気に距離を詰めにかかる。

 ヒドラは残る7つの竜頭のうち3つがこちらを振り向くと、咆哮を放ち不可視の攻撃を仕掛けてくる。

 バラバラに仕掛けられたその攻撃を、僕は時には躱し、時には盾で弾き、更に距離を詰めていく。

 しかし、ヒドラが攻撃を仕掛けた事により、僕の追撃のスピードが落ちてしまう。
 
 僕は走りながら風魔法をレヴィに纏わせ一閃。すると不可視の風の刃がヒドラに襲いかかる。――が、しかし、風の刃はヒドラに当たる前に霧散してしまう。

 くそっ! やっぱりダメか。 高速移動中だから結界が弱まっているかもと思ったが、考えが甘かったみたいだ。

『クラウド! 反撃くるよ』

 レヴィの声から数瞬後、再び不可視の攻撃が次々と襲ってくる。その攻撃をギリギリ躱しながらヒドラを追う。

 攻撃が邪魔で思ったよりも距離が縮まらない。なんとかしないと。――ダメもとであの魔法で攻撃してみるか。

 直ぐに、意識を集中する。走りながらの為、同時に展開出来る魔法の数が少ないがそれは致し方ない。

 魔法の展開を終えると、僕の周りには5本の土の槍が現れた。

 土魔法は他の魔法と違い、物理攻撃の特性を合わせ持っている。純粋な魔法攻撃がダメなら物理攻撃を合わせた攻撃をすればいい。

 再び襲ってきたヒドラの不可視の攻撃を躱すと同時に5本の土の槍を撃ち込む。狙うは全弾ヒドラの足だ。まずはヒドラの機動力を奪う。

 5本の土の槍はヒドラの直撃直前に結界に直撃して激しい衝撃音を響かせる。――がしかし、今までの攻撃と違い、土の槍は爆散する事無く全弾ヒドラの両足に直撃した。

 ギャアァァァと叫び声を上げてヒドラは転倒する。その隙に僕は一気に加速し、ヒドラとの距離完全に詰める。そしてすれ違いざまに――

「オーラソード!」

 気合の声と共にヒドラの首を一つを切断。

 これで残る頭は6つ。

 このチャンスに一気に決着をつける!

 
「闘鬼魔装!!」

 僕の言葉に反応するように、身体全体が赤いオーラを纏う。

 その動きに不穏に思った数体のヒドラの頭は僕に向け咆哮を上げ、不可視の攻撃を仕掛けてくる。

 しかし、僕はその攻撃を紙一重で躱しながら一番近い竜頭に突撃する。

 攻撃を仕掛けたばかりの竜頭は完全に対応が遅れたようで一気に間合いに入る事に成功する。

「オーラソード!」

 気合を共に竜頭を縦に斬り裂く。

 ――が、3体の竜頭が、僕が攻撃した隙を突き、牙を剥き大口を開け襲いかかってきた。

「オーラバッシュ!」

 ガゴッ! ガゴンッ!!

 迫りくる3体の竜頭のうち2体の竜頭を神盾イジスで殴り飛ばす。更に迫るもう1体の竜頭の攻撃を、身体を引いてヒラリと躱し――

「オーラソード!」

 竜頭を胴体から切断。


 すぐに殴り飛ばした2体を確認すると、2体の竜頭は牙と鼻の骨を砕かれ、のたうち回りうめき声を上げている。

 止めに向かおうとするが残りの無傷の2体の竜頭がそれを許さない。――すぐに、傷ついた2体の竜頭を守るように僕との間に割り込み不可視の攻撃で牽制してくる。

 しかたなく僕は一度距離をとり体勢を立て直す。

『今のままの戦闘を続けると、残り1分で魔力が切れになるわよ』

 突然、アキーレさんから警告が入る。――て、もうですか? まだ2分近く余裕があると思っていたのに。どうやら、オーラソードやオーラバッシュを連発し過ぎた為らしい。

 とは言っても、ここまで来たら一気に押し切るしかない。――いや、1分あれば充分押し切れる。

 若干距離を置いた状態で再び魔法を展開する。勿論使用する魔法は土魔法だ。魔力を念入りに練り込むと、一気に魔法を発動する。

 ヒドラは俺の魔法を警戒するように傷つき倒れている2体の竜頭の前でこちらを睨んでいる。僕は
それを見てニヤリと笑い。

「そこじゃ、防げないよ」

 そう言葉を発すると同時に魔法を発動する。――すると、突然ヒドラ周辺の地面が隆起し始め、そして鋭く尖った無数の巨大な石の針を生み出し、一斉の傷ついた2体の竜頭に襲い掛かり貫いていく。

 2体の竜頭は短い断末魔の叫びをあげ、すぐの動かなくなった。

 残る竜頭は2体。

 
 残る2体の竜頭も必死に僕に不可視の攻撃を仕掛けてくる。が、既に手数の減った攻撃なんて喰らう訳が無い。僕は2体の竜頭の攻撃を次々に躱し、間合いを詰めていく。そして、ついに1体の竜頭を射程に捉えた。

「オーラソード!」

 赤く光る魔剣レヴィを構え一気に斬りかかる。――と、次の瞬間、竜頭は一瞬碧に輝くと激しい爆発音と共に膨大な魔力を爆発させくだけ散った。

 僕はそれを、まさに目の前でもろにくらい、激しく吹き飛ばされる。

 どれほど吹き飛ばされたのだろう。僕は何度も何度も地面に打ち付けられながら飛ばされ最後に壁に激突して止まった。


『クラウド、生きてる?』

 レヴィの軽い問いが頭に響いてくる。

『クラウド様。ヒドラから追撃が来ます。すぐに体勢を立て直して下さい』

 セバスさんから警告が飛ぶ。――て、誰かもう少しちゃんと心配してくれてもいいのに。

 僕は体を起こすが……体中から痛みが走る。――流石にノーダメージとは行かないようだ。

 痛む体に顔をしかめながら、僕を攻撃した竜頭を見ると頭が吹き飛び横たわっていた。……自爆攻撃……か。

『クラウド様! 攻撃が来ます』

 意識が自爆した竜頭にいっていたタイミングで最後に残った竜頭が僕に不可視の攻撃をしかけてきた。咄嗟に僕は回避行動に移るが、思うように体が動かない。

 ――闘鬼魔装が切れている。おそらく爆発で吹き飛ばされた事により、集中力が切れ闘鬼魔装が解除されてしまったみたいだ。

 くそっ! 間に合わない!!

 咄嗟に神盾イジスを構えるが、防げたのは頭部中心だけ、体に攻撃をまともに受けてしまう。防具で覆われていない場所が不可視の攻撃で斬り刻まれ、血が噴き出す。

 さらに追い打ちを掛けるようにヒドラは腕を振り下ろし僕を薙ぎ払った。

 その攻撃を何とか神盾イジスで防いだものの、僕は吹き飛ばされ再び壁に激突する。

「「「クラウド様!」」」

 クラウディアさん達の声が僕の耳に届く。どうやら彼女達は僕の事を心配して戻ってきたよだ。

 クラウディアさん達の声に反応するように竜頭はクラウディアさん達に視線を移す。

 不味い!!

「闘鬼魔装!」

 赤いオーラを纏い痛む体に叱咤し、ヒドラに突っ込む。

 竜頭はクラウディアさん達に咆哮を放とうと大口を開ける。

「オーラソード! 間に合えー!!」

 赤いオーラを纏った魔剣レヴィを竜頭に向け全力で投げつける。レヴィは赤い尾を曳き一直線に竜頭に向かう。そして――


 ◇ ◇ ◇


 エメラルドヒドラだった物は今、光の粒となって消えていく。

 クラウディアさん達を見ると、その場で腰を抜かしたように座り込んでいた。

「はぁ――何とか間に合った。流石に今のは危なかった……」

 肩で息をしながら、一人つぶやく。

『相変わらずクラウドは詰めが甘いよね。最後まで油断しないできっちり片付けないとその内ホントに死んじゃうよ』

 レヴィの言葉は何とも耳に痛い。その通り過ぎて返す言葉が見つからない。

『クラウド様。後で反省会を致しましょう』

「――はい……分かりました」

『わたくしからも、お仕置きしちゃうから覚悟しておいてね』

 うわぁ、何故かアキーレさんがノリノリだ。


 その後僕は気を取り直して、先ほどまでエメラルドヒドラがいた場所に移動すると、そこに落ちていた魔剣レヴィと共に拳大の大きさのエメラルドの原石のような石を拾う。

「……これがエメラルドヒドラの魔石か。流石に大きいな。それにまるで宝石のような美しさだ」

 これで、クラウディアさんのお父さんも助かるだろう。

 僕はそのエメラルドヒドラ魔石を持ち、腰を抜かし座っているクラウディアさん達の所まで行く。

 まだ驚きで動けない状態のクラウディアさんに僕は微笑みかけ。


「これがエメラルドヒドラの魔石です。これで依頼は完了ですね」

 そう言って僕はエメラルドヒドラの魔石を差し出した。
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