僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第五章

第54話 邪神の迷宮に入ります

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「あっ!」

『わっ! いきなり大きな声出して、ビックリするじゃないか。急にどうしたんだよ~?』

 突然大声を上げた僕に対しレヴィから苦情が入る。
 


 今、僕達は、邪神の迷宮に向けペガサスのベガに乗って移動中である。

 クラウディア邸から邪神の迷宮までは、セバスさん曰く約6日掛かるという事で、僕はベガの上で暇を持て余していたのだ。

 そこで、ふと、最近ギルドカードを確認していなかった事を思い出し、持て余している時間を利用してギルドカードを確認したのだが――その結果、出た言葉が冒頭の「あっ!」である。

 
「あっ、ごめんごめん、ギルドカードを見てちょっと驚いただけだから」

『だからどうしてさ?』

「それがさぁ、ギルドカードにランキングって項目があっただろ」

『あ~、そんなのあったね』

 そう、すっかり忘れていたが、ギルドカードにはランク以外にランキングが表示される仕様になっていたのだ。

 今までずっと圏外だったので、全く気にしていなかったが、ついに……ついに僕も――

「そのランキングに、ついに僕も入る事になりました!! みんな! 拍手!!」

『『『『『『パチパチパチパチ』』』』』』

 みんな装備状態なので、念話で拍手してくれる。中々ノリがいい。

『で!? で!? 何位にランキングされたの?』

『確かにそこは気になるわね』

 気持ちは分かる――分かるが……

『お兄ちゃんならきっと一番なの』

『そうです。兄様ならきっと一番なのです』

 幼女2人の期待がつらい……、急に言い辛くなった……

『いきなり1位という事は無いでしょう。実際、何位にランキングされたのですか?』

 そこにセバスさんからフォローなのか追撃なのか分からない言葉が飛んでくる。

「みなさん、期待しないで下さい。……順位は……4915位です――」

『『『『『『……』』』』』』

 みんなコメントに困っているな……しかし現実はこんなものさ。よく考えればわかるでしょ。だって、この前までランキング圏外だったのに、1回迷宮潜っただけで一気にランキングが上がる訳ないじゃないですか。これでもたぶん最速に近いスピードでランキング入りしたと思うのだけどな……

「なんか、ごめんなさい……」

 期待に沿えなかったので一応謝っておいた――僕は何も悪くないはずなのだが……

 
 そんなどうでもいいイベントはあったが、概ね旅は順調。もうそろそろ邪神の迷宮があるエリアだ。

 
◇ ◇ ◇ 


 どこまでも続く大森林。その鬱蒼とした森の中、一ヵ所だけが何者かに刈り取られたようにポッカリと空間が出来ている。そしてその空間を中心に地面が盛り上がり、迷宮の扉がその姿を現していた。


「上空から見たらすぐ分かりますね」

『おそらくこの迷宮の発見者も、このように上空から迷宮を見つけたのでしょう』

 そりゃそうだ、いくらコルマ村から近いとは言ってもペガサスで3時間ほど掛かる。歩いてここまで来るには、いったいどれだけ時間が掛かるか考えたくも無い。ましてや場所を覚えてまた来るなど不可能に近いだろう。

 
 迷宮の入口付近に降り立った僕達は早速扉周辺を調べる。

「外から見る限りおかしな点はなさそうですね」

 僕は調査の為人化しているセバスさんに話し掛ける。

「見た感じはそうですが、やはり、この周辺には微弱ながら邪気が漂っています」

 僕には何も感じられないが、セバスさんには何か分かるようだ。

「そうだね。確かにこれは邪気だね。昔感じたのと全く同じ気配を感じるよ」

 レヴィもその邪気を感じ取り、いつになく真剣な表情だ。

「うむ。確かにこの気配……邪神と対峙した時のそれに良く似ている」

 イジスさんの眼が鋭さを増す。

 これはもう確定と言って良い気かする。

「それでは中に参りましょう」

 セバスさんが代表してそう言うと人化していたみんなが、一斉に僕の装備に戻る。

 
 扉の前に立つのは僕一人になったが、僕の周りには仲間がちゃんといる。それを感じながら僕は邪神の迷宮の扉に手を掛けた。


◇ ◇ ◇ 


 迷宮の中は石造りの立派な造りをしていた。ただカエサル迷宮のような広さは無く。道幅は2mほど高さも3mはおそらく無いだろう。剣を使い戦うには正直狭い広さだ。もし魔物が出てきたら魔法主体の戦いになりそうだ。

 もしかしたら、ローレンツさんが迷宮の調査に選ばれたのも、この迷宮の造りからなのかもしれないな。

 
 それからセバスさんの指示の下、迷宮内を進んでいく。

 確かにローレンツさんが言っていたように、全く魔物が出ない。ただ、奥に行けば行くほど、あの浄化の聖剣から感じた嫌な感じが僕の体にまとわりついてくる。

『クラウド様でも、はっきり感じるほど邪気の濃度が濃くなってきたようですね』

 そう言えば邪気に関して一つ疑問がある。それを、この際セバスさんに聞いてみよう。

「セバスさん、邪気の事で一つ聞きたいのですが」

『はい、何でございましょう?』

「僕ですら、邪気をおぼろげですが感じる事が出来るのに、何故ローレンツさんやクラウディアさんは邪気を感じる事が出来なかったのでしょうか?」

 そう、あれほど異様な気配を放つ剣を見ても、ローレンツさんやクラウディアさんは何も感じていないようだった。それが正直不思議だったんだ。

『それは、彼らが神気を感じた事が無い為でしょ』

「神気?」

『はい、神気は文字通り神が放つ気です。この世界に顕現した神は天神様と邪神しか存在しません。人の中で神気に触れた物は現在では皆無――いや、一人だけおりますが……、故に神気に触れた事、感じた事の無い者には神気の残り香程度では認識する事が出来ないのです』

 なんとなく分かった気がする。しかし、だとすると――

「何で僕はその神気を感じる事が出来るんですか?」

 一度も神様に会った記憶はありませんが――

『それは、私やレヴィ、イジスが常に側にいるからでしょう』

 ん? なんでセバスさん達が側にいると神気を感じられるようになるんだ? セバスさん達に影響されて感じられるようになるった事かな?

「それはどういう事なんですか?」

『それは私どもが常に神気を発しているからです』

 はい? 

「すみません。ますます意味が分からないんですが……」

『私達3人は天神様により創られた知性魔道具インテリジェンスアイテム。つまり神器セイクリッドアイテムなのです』

 ……えっと……つまりセバスさんとレヴィとイジスさんは……

「えーー!! それ、それ本当ですか!? 神器って事は、元々セバスさん達は、神様が使っていた神具って事ですか?」

『左様でございます』

『そうだよう~』

『その通りです』

 うわっ! 全員当然のように肯定だ――今まで何気なく一緒にいたけど、やっぱりこの人達とんでもない人達だったんだ。

『しかし、それも過去の話し。今の主人は天神様ではなくクラウド様です』

 セバスさんの言葉に『うんうん』と念話で頷くレヴィとイジスさん。

 ……そうは言っても、これかどう付き合っていけばいいんだろうか……

『クラウド様においては、これからも、我々とは今までと同じように接して頂きたいと思っております。神器セイクリッドアイテムとはいえ、所詮我々は道具でしかありません。我々はクラウド様に使っていただいて初めてその価値が見いだされるのです』

 ……そういうものなのかな?

『そうだよ~。急に畏まったりしたら嫌だからね!』

『そうです。拙者の主はクラウド様以外におりません。いつまでも我が主でいてください』

 そうだよな。神器だったとしても、みんなとの関係は今までと何も変わりはしないんだ。

「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

『もちろんだよ。これからもよろしくね~』

『ありがたきお言葉』

『畏まりました』

 3人の返事を聞き僕達の絆が深まった気がした。

『あの、盛り上がっていところ悪いんだけど、祭壇の部屋が見えてきたみたいよ』

 僕達の会話に参加していなかったアキーレさんが冷静に僕達に報告をしてきた。

 そして、アキーレさんの報告にあったように僕らの目の前には、扉の開かれた大きな部屋が姿を現していた。
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