僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第六章

第60話 特訓の成果は

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 薄暗い迷宮の部屋の中を、複数の赤く光る双眸が光の筋を残しながら周りを旋回している。

 赤い双眸の持ち主は黒い炎で魔狼の姿を形創り、虎視眈々と僕を襲うタイミングを計っている。

 奴らの名はヘルハウンド。『羅刹迷宮』200層以上の深い層に生息するレベル357の強力な魔物だ。
その複数のヘルハウンドが今、僕を餌にしようと旋回しながら狙っている。
 
『そろそろ、来るよ~』

 相変わらず、レヴィの気の抜けた感じの声を聞きながら、僕は魔剣レヴィを構える。

 
 それとほぼ同時に僕の死角にいたヘルハウンドが次々と襲いかかってきた。

 高速で襲い来るヘルハウンドを僕はレヴィで迎え撃つ。


 レヴィをひと振りする度に光の粒子となって消え失せていく、ヘルハウンド。

 レベル357という高レベルのヘルハウンドが、まるで低レベルの魔物のように何も出来ず消滅させられていく。



  
 僕が『羅刹迷宮』に籠ってから1年が過ぎようとしていた。

 初めてヘルハウンドと戦った時は、1体でも死ぬ思いをしながら戦ったものだが、今では20体でも30体でも全く問題ない。すでに狩られる者から狩る者へと立場が逆転している。

 

 そこにヘウハウンドが放つ3つの黒い炎球が僕に襲いかかってきた。

 ――ドゴーン!!

 黒い炎球が直撃すると同時に黒炎が舞い上がり、僕を包み込んでしまったように見える。だがしかし、僕がレヴィを一閃すると、黒炎は一瞬で消滅してしまった。

 僕は黒い炎球を撃ち込んできた、ヘルハウンドに視線を移すと、まだレヴィの間合いには程遠いはずのヘルハウンドに向けレヴィを振り下ろす。それと同時に間合いの外にいるはずのヘルハウンドは一瞬で両断され光の粒子となって消えさってしまった。


 戦闘が開始されてまだ1分も経過していな。しかし20体を超えるヘルハウンドはこの僅かな時間に全滅してしまった。――これが今の僕の実力だ。


『クラウド様、今の戦闘でまたレベルが上がったようですね』

「みたいですね。今回のヘルハウンドは、数がまあまあ多かったですしね」

 ここ『羅刹迷宮』に来てから、思い出したくないほどの地獄のような戦闘に次ぐ戦闘の日々。おかげでレベルに日に日に上昇していった。

『これで、レベルって513に上がった訳だ』

 そう、レヴィに言う通り今の僕のレベルは513。まだエルザ様が邪神と戦った時のレベルには届いていないが、1年で上がったレベルとしては、尋常ならざる成長だろう。

 実際、先日見たギルドカードには【ランク】S、【ランキング】1位と1年では考えられない上昇を見せている。――というか1位って……
 
 要はこの1年で、ランクがSランクまで上がり、ランキングが1位になってしまうほど、ここで戦い続けた事になる訳になるのです。


 うちの装備品達のスパルタは相変わらずで、何度逃げ出そうかと思ったか……。邪神復活の件がなかったら、確実装備品達をほっぽり出して逃げ出していたと思う。

 まあ、お陰でこの短期間で自分でも信じられないくらいレベルが上がったんだけどね。みんなには一応感謝をしておこう。

 とは言っても、問題はこれから。邪神との戦いだ。すでに最上位魔族が相手でも充分勝てるだけの力はあると思うが、正直邪神が相手となるとまだまだ力不足は否めない。それでもやるしかないんだけどね。


 ◇ ◇ ◇


 目の前に巨大な漆黒の扉がある。扉には1匹の竜が描かれており、侵入者を睥睨している。

 ここは『羅刹迷宮』250層、最深階層守護者が鎮座する部屋の前だ。

 これから邪神と戦いに赴く前に、『羅刹迷宮』の最強の存在と戦い、最終調整を行う為、僕はここに立っている。


『今回の目標はどれくらいに設定しますの?』

 アキーレさんは毎度守護者と戦う前にこのように聞いてくる。

『前ってどれだけ掛かったんだっけ?』

『前回は1分35秒で攻略されました』

 レヴィの質問にセバスさんが答える。

 まあ、ここまで聞くと分かると思うが、僕が最深階層守護者に挑むのは初めてじゃない。

 初めて最深階層守護者に挑んだのは今から約半年前。当時は倒すのに1時間半掛かり半死半生でギリギリ倒した。それから半年間10回以上戦ったが、2週間前に戦った時にはついに2分を切って倒すことに成功した。我ながら恐ろしい成長度合いだ。



『じゃあ、今回は1分でいいんじゃない?』

 相変わらず無茶苦茶な目標設定をしてくるレヴィである。

『丁度よろしいのではないでしょうか』

 セバスさんはその無茶苦茶な目標設定が丁度いいとおっしゃられる。

『では、1分で決定ね』

 相変わらず僕には意見を求められる事はありませんね。まあ、いつもの事だからいいけど……

『今回も拙者は使用しない。でよろしいですな』

 最近では、イジスさんを使用しないで戦わされる事が多くなっている。レヴィ曰く、イジスがあると緊張感が薄れるから、らしいです。僕的にはそんな縛りはいらないのですが。

『わたしも今回は必要ないですね。サポートもしませんのでお気をつけて』

 まあ、確かに飛び道具のクイは必要ないが、多少は気にかけてサポートの準備くらいはしていて欲しいものだ。

『お兄ちゃん、頑張るの。アーレがついているの』

『兄様、キーレがついております。頑張って下さい』

 うん、この二人はうちの装備達で唯一の癒しである。

「ありがとう、2人とも。僕頑張るよ。じゃあ、みんな行こうか」

 そう言って僕は漆黒の扉に手をかけた。
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