僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第六章

第70話 戦場に少年

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 最近遅れ気味で申し訳ありません。
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 ハルトムートとの戦い&ジルベルトとの再会をしてから四日が経ったが、あれから特段変わった事は起きていない。

 いや、魔物の軍勢が世界各地で暴れている事には変わりはないので、僕自身は休み無く世界を転戦しているんですけどね。


 今も目の前にはオーガロードが僕も殺そうと攻撃を仕掛けて来ている。とはいっても、今の僕ならオーガロードもゴブリンもさして力の差を感じないんだけどね。

 実際オーガロードは僕の間合いの入った瞬間真っ二つに両断されてしまった。って、僕が両断したんですが……
 
 しかし、昔あれだけ苦戦したオーガロードを、こんなに簡単に倒せるようになるとは、なんだが感慨深いものがあるな……

 そんな事を思いながら次々に襲い来る魔物達を屠っていく。

 もう、これは戦いというより作業に近い。この程度の魔物相手なら、レヴィ達も愚痴以外何も言って来ない。ただ、その愚痴が鬱陶しいんだけど。……暇なら自分も戦えばいいのに……そう思うが、そんな事は口が裂けても言えませんが。


 戦闘が開始されて1時間弱。ここでの戦闘も終息に向かいいつつある。

 僕の見える範囲では、もう殆ど魔物の生き残りは見えない。特に強力な魔物は僕が優先的に倒しておいたから、残っているのはレベルの低い魔物ばかりのはず。此処は、もう、兵隊さん達に任せてもいいかな。

 周りの光景を一望しながらそんな事を考えていた時だった。

「ねーねー、お兄さんって、黒の勇者?」

 突然後ろから服の裾を引っ張られ声を掛けられた。

 振り向くとそこにはこの場に似つかわしくない存在、子供が立っていた。背は僕の胸の辺りくらいだろうか、灰色の髪、灰色の瞳。色白で育ちの良さそうな顔の造りの少年だ。

 着ている服は貴族様が着るような造りの良い物で、とても戦場で着るような服じゃない。って、戦場にこんな小さな子供がいる時点で違和感がアリアリなんだけど……

 しかし、黒の勇者って……、確か色んな所で魔物を狩りまくっているうちに僕に付けられた二つ名だったかな? 何とも恥ずかしい二つ名です。せめて黒の剣士とかの方がまだマシかも……、って、自分で二つ名考えている時点で恥ずかしいっす……

「えっと、そうやって呼ぶ人もいるかな」

 我ながら答えていて赤面してしまそうです。

「やっぱりそうなんだね」

 嬉しそうに無邪気な笑顔を見せる少年。

「ねえ君。近くにお父さんとかは居ないの? ここには魔物がまだ沢山いるから君一人だと危ないよ」

 少年の側には保護者らしき人は誰もいな。それどころか少年を気にするそぶりの人も誰もいない。微妙に違和感ある。まあ、僕が側にいるから周りの人も安心しているのかもしれないけど……

 それでもやっぱりおかしい気がする。

「うん、大丈夫。ボクは全然危なくないから」

 そう胸を張って答える少年。何でそんなに自信満々なんだろうか?

「それより黒の勇者のお兄さん。ボクからお礼のプレゼントを上げる」

「お礼? 君からお礼のプレゼントを貰えるような事何もしてないけど……」

「そんな事無いよ。ボクの部下・・が世話になったからね。きっちりお礼をするのがボクの主義だからね」

 部下? 誰の事だろう?
 
 少年に視線を向けると、少年は僕に手を差し出して来る。いや、僕に向け手を翳す。

 突如膨らむ巨大な魔力。それと同時に全身から冷や汗が噴き出す。

 ――ヤバイ!! 全身に悪寒が走る。

『主よ! 拙者を!!』

 同様に感じたのかイジスさんの焦る声が頭に響く。

 僕は咄嗟に神盾イジスを少年との間に割り込ませ身を守る。次の瞬間、少年の手か発した黒い閃光が僕を襲う。


 神盾イジスに直撃する黒い閃光。

途轍もない衝撃が僕を襲いそれと同時に僕の視界は黒で埋め尽くされた。


 黒い閃光に衝撃を抑えきれなかった僕は、そのまま後方に弾き飛ばされ何度も地面に叩きつけられる。



 何度か地面に叩きつけられながらも、なんとか止まった僕は体を起こす。

しかし、いったい何が……

 周りの様子を確認したいが、僕の視界はまだ暗闇に捕らわれている。ただ、僅かに見える周りの暗闇の中では、激しい砂嵐が起こっているように感じる。まるで僕を中心に巨大な竜巻が発生しているようだ。


 ――そうだ! あの少年は!! 

 周りを確認するが、少年の姿は無い。しかし、少年がいたと思われる方の闇の中から途轍もない魔の気配が感じられる。

 そのあまりにも巨大な魔の気配に、額を汗が流れ落ちる。

『クラウド!! しっかりして!!』

 レヴィから叱咤の声が頭に響く。しかしその声にはレヴィ自身の焦りの色が伺える。

 要はそれだけの相手だという事だ。


『クラウド様、全ての能力使用を許可致します』

 そしてその後に発せられたセバスさんの言葉に僕は息を飲む。

 全ての能力の使用許可を出す相手。それは、現在この世界に一人しかいないからだ。




「もしかしいて、邪神……ですか……?」

『その通り御座います』




 唐突にラスボスが登場したのだった。
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