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第六章
第71話 邪神
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「オーラソード! ブーステッドマジック! プロテクションバースト! 精霊眼! 闘鬼魔装!」
連続でレヴィ達の固有能力を次々と掛けていく。
ちなみにブーステッドマジックはセバスさんの固有能力で魔法威力の上乗せ。プロテクションバーストはイジスさんの固有能力で防御力強化。精霊眼はクイの固有能力で視野強化だ。
どの固有能力も、僕の基本性能を数倍に跳ね上げる反則的に能力だ。お蔭で僕の魔力は今、凄い勢いでガリガリと削られて行っている。
僕は魔剣レヴィと神盾イジスを構え、目の前の暗闇の先にいる超越者を睨みつける。
すべてを圧殺するような魔の気配が、一歩また一歩とこちらに近づいてくる。
レヴィを持つ手に力が入る。
対峙しただけで感じる邪神の力。まさに全てを滅ぼし尽くす闇の王だ。
僕の間合いに入る直前、邪神の気配がその歩みを止めた。そして、それと同時に周りを覆い尽くしていた暗闇は突然消え失せ、周囲の光景が目に飛び込んでくる。
――!?
目の前に飛び込んできた光景には、一人の少年しかいなかった。そう、他には何も無い。一緒に戦っていた軍の人々や魔物の姿も一切ない。いや、それどころか、先ほどまで至る所に生えていた木々や草花まで、一切合切無くなっている。
ただ残るのは砂漠のような大地だけだった。
その光景を笑みを浮かべ見る少年。――いや、邪神。
満足そうに邪神は一つ頷くと僕に視線を向ける。
「今の攻撃を受けて消滅しないどころか死なないなんて、さすがうちのジルベルトとハルトムートとを倒しただけの事はあるみたいだね。しかも、先ほどよりも今の方が力が跳ね上がっている」
そう言うと邪神は子供の姿からは似つかわしく無い邪悪な笑みをたたえ、舌なめずりをする。
「これなら少しは楽しめそうかも……」
そこまで言うと、邪神は無警戒に僕に間合いに踏み込んで来た。
ここでの躊躇いは即ち死へとつながる。例え幼い子供の容姿をしていたとしても相手は邪神。
僕は間合いに入って来た邪神に渾身の力を込めて剣を振り下ろした。
高速で振り下ろされる魔剣レヴィ。その威力は一撃で大地を深く斬り裂き、あらゆる魔を撃ち砕く。例え最上位魔族であるジルベルトやハルトムートであったとしても、まともに喰らえば死を免れる事は出来ない。それほど威力を秘めた魔剣レヴィ+オーラソードの一撃だ。
だが、そこには理解しがたい光景が……
魔剣レヴィは邪神の頭上、握りこぶし一つ分を残し止まっている。それは邪神が魔剣レヴィを受け止めた事に他ならないのだが、レヴィの刃を受け止めたその手には、身を守る為の武器は何も握られていなかった。
代わりに握られていたものこそがレヴィの刃。つまり、邪神は僕の渾身の一撃を素手で受けてしまったのだ。
全身からあり得ない程汗は噴き出して来る。
――まさか、これ程までに差があるのか?
余りの出来事に動揺を隠せない。
『クラウド様、一旦距離をお取りください』
セバスさん声で咄嗟に邪神から距離を取り、再び魔剣レヴィと神盾イジスを構え直す。
しかしこの後どうすれば……
「黒の勇者のお兄さん、もう攻撃はいいのかな? なら今度はこちらから行くよ」
戸惑う僕に邪神はそう言って無造作にこちらに突撃してくる。
――クッ!! 速い!!
僕と邪神との距離は一瞬で無くなり、邪神は小さな少年の拳で殴り掛かって来た。僕は咄嗟に神盾イジスで身を守る。
凄まじい衝撃が神盾イジス越しに伝わり、僕は何度も地面でバウンドしながら吹き飛んでいく。
なんて一撃だよ。こっちは固有能力で散々強化しているのにまるで子供扱いじゃないか。
ゆっくりと体を起こしながら、邪神を見る。
邪神は、相変わらず見た目に似合わない邪悪な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「黒の勇者のお兄さん、中々頑張るね。いいねぇ、なんだが楽しくなってきたよ。次はどうしようかな」
くそっ! 全く勝てる気がしないんだけど……
『クラウド様――』
セバスさんが何かを言おうとした瞬間、邪神が攻撃を仕掛けて来た。
その攻撃を寸でのところで躱すとそのまま反撃を試みる。しかし、僕の攻撃はいとも簡単に邪神の細腕で阻まれる。
だが、僕の攻撃はまだ続く。攻撃が阻まれると同時に魔法を展開。無数の雷の槍を創り出し、一気に邪神の向け撃ち出しつつ同時に距離を取る。
邪神は無数の雷の槍を避けようともしない。雷の槍は直撃し邪神を中心に雷の渦が巻き上がらせる。
更に、僕は攻撃の手を緩めない。複数の高熱の球体を周辺に展開しつつ魔力を高めていく。
ぐんぐんと高まる魔力に合わせ、僕の周辺の大地はマグマにように変化していく。
恐ろしいほどのエネルギー、まさに超高熱の塊。完成した魔法は凄まじい力を内包している。
「これでどうだ!!」
気合を込めて完成した超高熱の球体を動かぬ邪神に向け撃ち出した。
目の前には白い巨大な火柱が立ち昇る。まるでこの世の全てを燃やし尽くさんと燃え盛る。
その火柱の中は異常なほどの超高温だ。例え、オリハルコンであったとしても、あの火柱の中では蒸発してしまう。それ程の威力の魔法だ。
どうだ、やったか? いや、まだだ。出し惜しみはしない。
僕は魔剣レヴィに力を込めると、白から赤に色が変わり収まり始めた巨大な火柱に向け剣を振り下ろした。
「メキドソード!!」
力強い良い言葉と共にレヴィから光が放たれ世界が白一色に染まる。
強烈なまでの魔力の渦により、大地が震え、大気が鳴く。
先ほどまで目の前にあった巨大に火柱は光に呑み込まれその存在を確認出来ない。
これで、ダメなら正直後はレヴィ達の力の解放しかない。しかし、あれは制限時間があるからな、とてもじゃないけど、制限時間内に邪神を倒せる気がしない。
もし、時間内に倒せなければそれで終了だ。とてもじゃないが今は使えない。
願わくはこれで終わっていてくれればいいのだが……
やがて世界を満たしていた光は収まり、立ち込めた砂埃が風に流されていく。
「ハハハ、これは何て言ったらいいのかな……」
砂埃の晴れるとそこには左腕を失った邪神が立っていた。
先程まで見せていた笑みは無くなり、鋭い視線をこちらに向けている。
怒ったかな? 怒ったよね。片腕が無くなったんだし……
でもこちらとしても感情が複雑なんだよね。
メキドソードを使っても倒せなかったと思うべきか、メキドソードを使えば何とか倒せる可能性があると思うべきか……
まあ、いまは保留で。ここを何とか生き延びないと後が無いわけだしね。
メキドソードはもう使えないが、さてどうしましょう。
僕は、こちらに睨む邪神に改めて対峙した。
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連続でレヴィ達の固有能力を次々と掛けていく。
ちなみにブーステッドマジックはセバスさんの固有能力で魔法威力の上乗せ。プロテクションバーストはイジスさんの固有能力で防御力強化。精霊眼はクイの固有能力で視野強化だ。
どの固有能力も、僕の基本性能を数倍に跳ね上げる反則的に能力だ。お蔭で僕の魔力は今、凄い勢いでガリガリと削られて行っている。
僕は魔剣レヴィと神盾イジスを構え、目の前の暗闇の先にいる超越者を睨みつける。
すべてを圧殺するような魔の気配が、一歩また一歩とこちらに近づいてくる。
レヴィを持つ手に力が入る。
対峙しただけで感じる邪神の力。まさに全てを滅ぼし尽くす闇の王だ。
僕の間合いに入る直前、邪神の気配がその歩みを止めた。そして、それと同時に周りを覆い尽くしていた暗闇は突然消え失せ、周囲の光景が目に飛び込んでくる。
――!?
目の前に飛び込んできた光景には、一人の少年しかいなかった。そう、他には何も無い。一緒に戦っていた軍の人々や魔物の姿も一切ない。いや、それどころか、先ほどまで至る所に生えていた木々や草花まで、一切合切無くなっている。
ただ残るのは砂漠のような大地だけだった。
その光景を笑みを浮かべ見る少年。――いや、邪神。
満足そうに邪神は一つ頷くと僕に視線を向ける。
「今の攻撃を受けて消滅しないどころか死なないなんて、さすがうちのジルベルトとハルトムートとを倒しただけの事はあるみたいだね。しかも、先ほどよりも今の方が力が跳ね上がっている」
そう言うと邪神は子供の姿からは似つかわしく無い邪悪な笑みをたたえ、舌なめずりをする。
「これなら少しは楽しめそうかも……」
そこまで言うと、邪神は無警戒に僕に間合いに踏み込んで来た。
ここでの躊躇いは即ち死へとつながる。例え幼い子供の容姿をしていたとしても相手は邪神。
僕は間合いに入って来た邪神に渾身の力を込めて剣を振り下ろした。
高速で振り下ろされる魔剣レヴィ。その威力は一撃で大地を深く斬り裂き、あらゆる魔を撃ち砕く。例え最上位魔族であるジルベルトやハルトムートであったとしても、まともに喰らえば死を免れる事は出来ない。それほど威力を秘めた魔剣レヴィ+オーラソードの一撃だ。
だが、そこには理解しがたい光景が……
魔剣レヴィは邪神の頭上、握りこぶし一つ分を残し止まっている。それは邪神が魔剣レヴィを受け止めた事に他ならないのだが、レヴィの刃を受け止めたその手には、身を守る為の武器は何も握られていなかった。
代わりに握られていたものこそがレヴィの刃。つまり、邪神は僕の渾身の一撃を素手で受けてしまったのだ。
全身からあり得ない程汗は噴き出して来る。
――まさか、これ程までに差があるのか?
余りの出来事に動揺を隠せない。
『クラウド様、一旦距離をお取りください』
セバスさん声で咄嗟に邪神から距離を取り、再び魔剣レヴィと神盾イジスを構え直す。
しかしこの後どうすれば……
「黒の勇者のお兄さん、もう攻撃はいいのかな? なら今度はこちらから行くよ」
戸惑う僕に邪神はそう言って無造作にこちらに突撃してくる。
――クッ!! 速い!!
僕と邪神との距離は一瞬で無くなり、邪神は小さな少年の拳で殴り掛かって来た。僕は咄嗟に神盾イジスで身を守る。
凄まじい衝撃が神盾イジス越しに伝わり、僕は何度も地面でバウンドしながら吹き飛んでいく。
なんて一撃だよ。こっちは固有能力で散々強化しているのにまるで子供扱いじゃないか。
ゆっくりと体を起こしながら、邪神を見る。
邪神は、相変わらず見た目に似合わない邪悪な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「黒の勇者のお兄さん、中々頑張るね。いいねぇ、なんだが楽しくなってきたよ。次はどうしようかな」
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『クラウド様――』
セバスさんが何かを言おうとした瞬間、邪神が攻撃を仕掛けて来た。
その攻撃を寸でのところで躱すとそのまま反撃を試みる。しかし、僕の攻撃はいとも簡単に邪神の細腕で阻まれる。
だが、僕の攻撃はまだ続く。攻撃が阻まれると同時に魔法を展開。無数の雷の槍を創り出し、一気に邪神の向け撃ち出しつつ同時に距離を取る。
邪神は無数の雷の槍を避けようともしない。雷の槍は直撃し邪神を中心に雷の渦が巻き上がらせる。
更に、僕は攻撃の手を緩めない。複数の高熱の球体を周辺に展開しつつ魔力を高めていく。
ぐんぐんと高まる魔力に合わせ、僕の周辺の大地はマグマにように変化していく。
恐ろしいほどのエネルギー、まさに超高熱の塊。完成した魔法は凄まじい力を内包している。
「これでどうだ!!」
気合を込めて完成した超高熱の球体を動かぬ邪神に向け撃ち出した。
目の前には白い巨大な火柱が立ち昇る。まるでこの世の全てを燃やし尽くさんと燃え盛る。
その火柱の中は異常なほどの超高温だ。例え、オリハルコンであったとしても、あの火柱の中では蒸発してしまう。それ程の威力の魔法だ。
どうだ、やったか? いや、まだだ。出し惜しみはしない。
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「メキドソード!!」
力強い良い言葉と共にレヴィから光が放たれ世界が白一色に染まる。
強烈なまでの魔力の渦により、大地が震え、大気が鳴く。
先ほどまで目の前にあった巨大に火柱は光に呑み込まれその存在を確認出来ない。
これで、ダメなら正直後はレヴィ達の力の解放しかない。しかし、あれは制限時間があるからな、とてもじゃないけど、制限時間内に邪神を倒せる気がしない。
もし、時間内に倒せなければそれで終了だ。とてもじゃないが今は使えない。
願わくはこれで終わっていてくれればいいのだが……
やがて世界を満たしていた光は収まり、立ち込めた砂埃が風に流されていく。
「ハハハ、これは何て言ったらいいのかな……」
砂埃の晴れるとそこには左腕を失った邪神が立っていた。
先程まで見せていた笑みは無くなり、鋭い視線をこちらに向けている。
怒ったかな? 怒ったよね。片腕が無くなったんだし……
でもこちらとしても感情が複雑なんだよね。
メキドソードを使っても倒せなかったと思うべきか、メキドソードを使えば何とか倒せる可能性があると思うべきか……
まあ、いまは保留で。ここを何とか生き延びないと後が無いわけだしね。
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