僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第七章

第77話 下界の様子は……

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 最近、評価ポイントが急に伸び始めていると思ったら久しぶりに日刊ランキングに入っていました。読んで頂いている皆様に感謝です。
 これからもよろしくお願いします。
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「これは……」

 力を得た僕は、神の力を使い、下界の様子を確認する事にしたのだが……

 最初に見た街の光景は、あまりにも悲惨の光景だった。


 家々は破壊され、数多くの死体が野に晒されている。正直見るに堪えない光景だ。

『どうやらこの2ヵ月間で、世界の人口の3分の2が殺され、8割の国が滅んだようです』

 言葉を失う僕に追い打ちを掛けるように、セバスさんが話し掛けてくる。

「……3分の2も」

 セバスさんには、僕の下界を見る能力と連携させ、世界の様子を探ってもらっていたのだが、もたらされたモノは思ってもいない情報だった。

 『はい、そして現在、国として体を成しているのは、ブリンテルト王国、ローグン帝国、ベルザント王国の3国のみのようです』

 なっ……、この3国が国として残っているのは分かる。世界でもトップクラスの国力を持った国だ。幾ら邪神軍の力が強くても、僅か2ヵ月で滅ばせるような国じゃない。だが、それよりもこの3国に匹敵する力を持った国は、他にも4国は在ったはず。それが今では国としての力を失っているという事は……

 もし、僕がもっと早く目覚める事が出来ていたら……

 邪神との戦いから1ヵ月、そして神水を飲んでから更に1ヵ月が過ぎている。この2ヵ月でどれほど多くの人が殺されたんだろう……

 いくら考えても時間が戻る訳じゃ無い。例え神の力を得たとしても、だ……


 そこで、ふと、クラウディアさん達に姿が頭をよぎる。

 彼女達は無事なのだろうか…… 

 嫌な予感がした僕は、すぐさまクラウディアさん達の魔力を探したのだった。


◇ ◇ ◇


 黒の勇者が、邪神に敗れたという話が世界に広がった時から、戦いは一気に邪神軍へと傾いて行きました。

 私が義勇軍として参加しているブリンテルト王国軍も何度となく敗戦を繰り返し、今ではベールズ・シティに設けた防衛ラインが、ブリンテルト王国の命運を握っていると言っていい状況になってしまっています。

 それゆえに、ここベールズ・シティには、ブリンテルト王国軍最強にして、救国の英雄。レベル300を超えるホルガー・フォン・シュタイン将軍が指揮を執り、その傍には我が父ローレンツが参謀とし脇を固めています。

 そして王国中からは有能のハンターが集められ、更には、滅びた国からも、恨みを晴らすべく生き残った戦士たちが義勇兵として参加し、質、量ともにかつてないほどの戦力が、ここベールズ・シティに集結しているのです。

 そんな中、私を始めアンネマリーやリーゼも、少しはお父様の、そして人類の為に力になれるよう、義勇兵に参加致しまいた。

 しかしそれで邪神軍を抑える事は難しく、日を追うごとにブリンテルト王国軍は追い詰められていきました。



 何度となく押し寄せる邪神軍に、多くの者が傷つき、命を失っていく。生き残った者たちも疲労が蓄積し、まともな状態の者など一人も居なくなっていました。

 そして、更に追い打ちを掛けるように、邪神軍に援軍の到着。レッサーデーモンが100体以上、更には上位魔族の姿まで。正直絶望的な戦力差。

 それでも私達はそんな中でも、人類が生き残る為に戦い続けるしかないのです。


◇ ◇ ◇


 今、私達パーティーはベールズ・シティ防衛戦線の最前線にいます。

 眼前にはオーガやオーク、ゴブリンなどの多くの魔の亜人の群れ。更には高レベルの魔獣達が亜人たちにまじり、ブリンテルト王国軍に次々と襲い掛かってきている。

 これまで何度となく跳ね返していた邪神軍の攻撃でしたが、今回は今までと明らかに勢いが違います。まるで何かに追いたてられるように、我先にと襲い掛かってくる邪神軍。その勢いに押され次々と兵は倒れ、ブリンテルト王国軍は押し込まれていく。
 
 更にそこに現れたのが先日やって来たレッサーデーモン達。個々のレベルが150を超える化物揃い。しかも邪神が覚醒してから、その力は更に増していると聞いています。

 そのレッサーデーモン達が一斉に瘴気をまき散らしたのです。その為兵士は一気にパニックを引き起こし、我先にと戦場から逃げだし始めてしまいました。

 今まで何とか戦線を支えていたブリンテルト王国軍でしたが、恐慌状態に落ちいったブリンテルト王国軍は一気に瓦解して、組織だった抵抗がなにも出来なくなってしまった。

 
 そんな混戦の中、私達は前線に留まっていました。
 
「アンネマリー、リーゼ、一人でも多く撤退させる為、私達が殿を務めます」

 この部隊の中でもは私達が一番高レベル。アンネマリーやリーゼには申し訳ないけど、ここは私達が支えるしかないです。

「クラウディア様は、先にお逃げ下さい!!」

「そうです。ここは私達に任せて、クラウディア様を先に撤退して下さい」

「アンネマリー、リーゼ。貴方たち言葉は嬉しいけど、貴方たちを残してリーダーである私が逃げる訳に行かないわ」

 それに殿を務めると言ったのが私なのに、貴方たちを残して逃げる訳にはいけないもの……

「クラウディア様……」


「アンネマリー、リーゼ。いくわよ」

「「はい、クラウディア様!!」」

 こうして私達は邪神軍に戦いを挑んだのです。




 あれからどれほど時間が経ったでしょうか……

 私の周りには多くのブリンテルト王国軍の兵が屍を晒しています。

 何とか1人でも多く撤退出来るよう奮戦していましたが、押し寄せる邪神軍に乱戦状態になり、多くの兵が命を失ってしまいました。


「クラウディア様、もう限界です。撤退下さい」

 アンネマリーが私に撤退を促してきた。

 確かにもう、これ以上ここに留まるのは自殺行為でしょう。

「分かりました。全員で後方に火力を集中し、一気に突破します。ついて来てください!!」

 撤退を決断した私は、この場で生き残っている、全てのブリンテルト王国軍兵に聞こえるように声を張り上げ、皆を鼓舞し、最後の撤退戦に移った。


 だが、それはすぐに失敗に終わってしまった。

 何故なら、瘴気を放出してから、あまり動きを見せていなかったレッサーデーモン達が急に動き始めたからです。その数15体。その15体ものレッサーデーモンが私達の前に立ちはだかったのです。

 3体程度までなら私達だけでも何とかレッサーデーモンを牽制しつつ撤退する事も可能だったかもしれませんが、だけど15体のもの数となると、正直為す術がありません……

 その光景を見た周りにいる兵達は、絶望に打ちひしがれ、呆然と立ち尽くしている。

 それは私達も同じで、唯々呆然と立ち尽くす事しか出来なくなってしまいした。

 そこにトドメとばかりに押し寄せる邪神軍。

 そして私の眼前にも……



 目に映るオーガロードは、返り血にまみれ狂気に狂ったように嗤い、巨大なハンマーを振り上げていた。

 その巨大なハンマーには、多くの人間の命を奪って来た事を証明するかのように、血や肉片がこびり付いている。

 私はそのハンマーを唯々見つめる事しか出来ないでいた。あれが振り下ろされたら全てが終わるんだ……、そんな事を思いながら……





 それは突然起きた。

 視界一杯に広がる白く暖かい光。優しく私達を包み込むように光は広がる。

 その光を浴びた眼前のオーガロードは巨大なハンマーを振り上げた体勢のまま動きを止める。

 その光景を見た私は、何が起きているのか分からないにも関わらず、何故か助かった事を確信した。



 私達を包む光は更に強くなる。

 体に負っていた傷は消え、疲れも癒され、魔力までもが回復していく。それとは反対に、邪神軍たちは、まるで彫像のようにピクリとも動かなくなり、やがて、砂のように崩れ去る。

 
 光りが収まると、そこには私を中心に半径100メートルほどの範囲にいたレッサーデーモンを初めとした邪神軍は全て消え去り、逆にブリンテルト王国軍兵は、瀕死の重傷を負っていた者までもが、傷が癒え、まるで何事も無かったように回復していた。

「これは一体……」

 私は状況が飲み込めず、唯々周りの様子を見渡す。ただ、助かった事を実感しながら。



「ギリギリ何とか間に合ったみたいですね」

 突如掛けられた言葉に後ろを振り向くと、そこには純白の鎧に身を包んだ亜麻色の髪の少年が立っていた。

 自信なさげで、困ったような表情。それでいて、優しく周りを包み込みかのような柔らかな表情。

 かつて共に迷宮に潜り大蛇やエメラルドヒドラを倒す為一緒に戦った人。多くの戦場で邪神軍を撃破した英雄。そして単身邪神と戦い命を失ったはずの人……

 懐かしくも愛おしい顔がそこにはあった。

「クラウド様!!」

 私はその少年の名を叫び、彼の胸に飛び込んだ。


「ただいま。クラウディアさん」

 そして少年は私を優しく受け止め、私の名を呼んでくれたのでした。
************************************************
完成間近にWordデータが壊れファイルが読み出せなくなるという悲劇。
77話を打ち直してみたけど、大筋は同じはずなのに何故か最初に書いたモノの方がよく思えてしまう。やっぱり打ち直しだと色々に意味でテンションが下がっているからなのだろうか……
ファイルが壊れたのこれで2度目だし、今度からは面倒だけど打ちながらバックアップ取るか……


 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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