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第七章

第82話 敵に本拠地を見下ろそう

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 眼下に広がるのは巨大な街だ。

 街を護る街壁も今まで見て来たどの街のそれよりの高く分厚い。鬱蒼と生い茂る森の中に存在するその街は、ブリンテルト王国の王都を凌駕する広大な街であり、街を行き交う人々もまた王都のそれより多くいるように見える。

 ここは、かつて僕とレヴィ達が出会った、あのS級迷宮から更に2百キロ程北に向かった森の中だ。

深い森の中に突如現れた異様なまでの巨大な街。それを恐ろしく不自然に感じてしまうのは僕だけなのだろうか?


 クラウディアさんと別れてから僕は、邪神の気配を探り、現在邪神軍の拠点と思われる地に転移して来ていた。

 隠密能力最大限に発動して見下ろす邪神軍の拠点は、まさに都市だった。それも人間の都市なんかよりも遥かに巨大な都市だ。当然この街の住民は人間などでは無く、魔族やゴブリン、オーク、オーガなどの亜人が中心のようだ。その総数100万を超えるんじゃないだろうか。

 更に街の周辺の森には強力な力持った魔獣たちが、飼いならされているのか街を護るように徘徊している。こちらの数も数えるのが馬鹿らしくなって来るほどウジャウジャいる。

『人類未踏の地にこんな大きな街があったんだね』
 
 流石にレヴィも驚いている様子だ。

「人類最北地の街とも言えるノーステールから更に北へ千二百キロだからね。しかも、ノーステールとここまでの間にある瘴気の森と魔瘴の森を越えて来なきゃいけないから、正直人族には踏破不可能な場所だよ。ここのなら人族にこの街の存在がバレる事は無いだろうね。まあ、バレたとしても此処まで誰もこられないだろうし」

 しかし、これ程の遠地からどうやって僕らが住む場所まで大軍を動かして来たんだろう。転移にしても、精々百人程度が限度だろうし、数万単位で長距離移動させるには、半神人デミゴッド化した僕でも流石に無理だしな……よし、こういった時は物知りセバス先生に聞いてみよう。

「セバスさん、邪神軍はここからどうやって攻めて来ているんでしょうか?」

『前回邪神が復活した際は、邪神は【ゲート】と言われる魔法を使っておりました』

「ゲートですか?」

『はい。【ゲート】とは、二つの地点を門で繋ぎ、誰でも行き来する事を可能にする魔法です。門を創る際はかなりの魔力を消費するようですが、一度創ってしまえば維持自体はさほど魔力を消費しないようで、数万単位の兵を移動させる事も可能かと』

「それはまた、凄い魔法ですね」

『術式さえ分かればクラウド様も使用できますよ。ただ、その為にも使っている所を一度は見ないといけませんが』

「セバスさんは見た事ないんですか?」

「残念ながら発動後の【ゲート】しか見た事御座いません」

 流石のセバスさんでも起動時を見ないと術式が読み取れないんだな。邪神が使う魔法なだけにかなり複雑な術式なんだろうな。

「まあ、分からないものはしかないですね。どうせ使う機会は少ないから、気にしないで行きましょう」

 さてと、【ゲート】の事は置いておくとして、問題はこれからだ。

 現状、僕は邪神軍の拠点の上空に居る。眼下に広がる魔族の都市には100万を超える魔族や亜人が住んでいる。それが全て戦闘員という訳では無いだろうが、その非戦闘員も人間の非戦闘員よりは強いだろう。とはいっても、正直邪神と最上位魔族以外は何人いても余り関係無い気がするけど…… 

『雑兵でも数が多ければ、倒すのにそれ相応に消耗するでしょう。そうなってくると、のちに控える邪神との戦いに影響が出て来るやもしれません』

 僕の考えを読んでなのか、セバスさんがアドバンスを言ってきた。流石はセバスさんである。

「現状、僕と邪神の実力差はどれくらいあると思いますか?」

『正直分かりかねます。クラウド様も、邪神も既に人の理から逸脱した存在で御座います。私の能力では、超越者でられる神の力を読み取る事は出来ないのです。唯一分かる事といえば、お二人の発する神気にはさほど大きな差は無いように思えるという事でしょうか』

「だとすると、消耗は出来るだけ避けた方がいいですね」

「それがよろしいかと」

 そうなってくると、また天使達を呼び出して雑兵の相手をさせたいところだけど、それをやっちゃうと折角、隠密系の能力を駆使してここに居る意味が無くなっちゃうんだよね。一気に邪神に近づく為にも、ここは素直に潜入する方向で行こうかな。よし!

「これから街に潜入するので、みんなも出来るだけ、神気を抑えておいて下さい」
「「「「「了解」」」」」


 こうして僕はいよいよ決戦の地ともいえる敵の本拠地に潜入したのだった。
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