5 / 7
第一部
ご覧あれ! 電撃アトラクション!(2)
しおりを挟む
俺は肩の関節をコキコキと鳴らしながら、C-4をリュックから取り出した。
「はい皆さんご存知プラスチック爆弾でございます。今日はこれを使ってフィナーレを迎えたい所存であります」
俺はフリフリとC-4の起爆スイッチを押そうとした。
「いやちょっと待ってくださいや!」
しかし終焉を飾るべく準備を整える俺を阻止しようと、テレポートのPが現れた。彼は勝山先輩。俺の一個上でたしか鬼頭くんと同じく幼稚園児の救護にあたっていたはずだが……?
「テメェの器物破損額は毎回毎回えらい額になってんですわ! これ以上の破壊活動は見過ごせないね!」
そう言って勝山くんは俺からC-4を取り上げた。なるほど? これ以上損害賠償を公安局に払わせるのを阻止させるべく、上司から俺のストッパーをするように命令された、というところか。
「邪魔しないでくれ勝山先輩。ガイアが俺に囁いているんだよ……『壊せ』ってな」
「ダセェし到底理解できんわ! 諦めて足止めに徹しろ! あとは影本がやるだろ」
と、勝山先輩は憤慨している。しかし、しかしだ、誰ももう止められないのだ。
「勝山先輩、爆弾見てみて」
俺はちょいちょいと指先を振ってC-4に注意を促した。勝山先輩は「あ゛あん?」とドスの効いた声で爆弾に目をやる。
ピッ、ピッ、ピッ。
爆弾のスイッチはしっかりと入っていた。起爆まであと40秒。
「は、はぁあぁぁぁ!? 寝子山テメェいつスイッチ入れたぁ!?」
「濡れ衣ですよ。先輩が俺からぶんどるときに誤って押してましたよ? いけないなぁ注意散漫~」
「うぜぇ! じゃなくて、あ、やべ、どうしよ!?」
勝山先輩は想定外の出来事に弱い。例えば出社中に捨て猫に出会ったとか、例えばおばあさんが車椅子のGに乗って爆走していたとか、例えば今とか。俺はそんなチャーミングな勝山先輩が大好きだが、今は仕事中なので心のうちにしまっておいて、勝山先輩からC-4を奪い取る。
「先輩、4番地でお孫さんが助けを求めてましたよ! 早く行ってあげてください!」
「マジか!」
勝山先輩は「こうしちゃおれん!」とテレポートした。だが俺の発言は全てデタラメだ。勝山先輩はまだ36歳だし一人娘さんは9歳だ。孫がいるわけない。
なぜ信じてしまうのか。なぜ疑問に思わないのか。勝山先輩が出世できない原因はここにある。
俺は残り7秒のC-4を電信柱(G)に投げつけた。Gは俺の猛攻により、すでに息絶え絶えと言った様子だが、トドメはしっかりと刺さなければいけない。なぜなら彼奴等は生命力のしぶとさがゴキブリよりも凄まじいのだ。寄生された欠片を一片でも処分し損ねれば、いくらでも再生する。
──Gを1体見たら100体いると思いなさい。世の常識である。
なだらかな曲線を描いて宙を舞うC-4は、電信柱(G)の上半身(?)にコツンと当たり、閃光と共に弾けた。
どぉぉん! 地震のような振動が俺の身体に襲いくる。下から巻き上がる爆風と閃光に目を細めていた俺は、突如、全身が凍りついた感覚に襲われた。
電信柱の破片が真っ直ぐにこちらに向かって飛んでくるのが見えたのだ。
(やばい! 避けるには間に合わない! しかも勝山先輩4番地に移動させちゃったからテレポートしてもらえないぃ!)
俺は咄嗟に思考を巡らせて、己の殉職を悟った。この間わずか0.1秒。なんてことだ。俺が賢いばかりに、最後の最後まで脳は働き続けやがる。
「アデュー」
俺は爆速で眼前に接近する1メートルほどの破片に別れの言葉を吐いて、そっと目を閉じた。
──しかし、いつまで経っても衝撃が身体を襲うことはなかった。
「……ありゃ?」
不審に思って目を開けてみると、俺の目と鼻の先、ちょうど接触する直前の位置で、ふよふよと電信柱の破片が浮いていた。これは……。
「はぁ、はぁぁぁ……、せんぺえマジで後先考えないクズっすわ」
俺はへにゃりと尻餅をついた。そして首を回して背後を振り返る。そこには影本くんがいた。クールな面持ちはどこへやら、汗まみれの汚い顔で、両手を前に突き出すダサいポーズをとって、そこにいた。桜色の髪はボッサボサだし、シャツもジャケットも乱れまくってる。
──でも、カッコいいなぁ。
影本くんは手をゆっくりと下ろす。それに伴い破片もゆっくりと屋上の床にドスンッと音を立てて落ちた。俺も背中のリュックを下ろしてその場にあぐらをかき、へにゃりと影本くんに笑いかけた。
「信じてたぜバディ」
影本くんはゼェゼェと荒い息を吐きながら膝に両手をついて呼吸を整える。そしていくばくか落ち着いてから、背筋を伸ばして俺に人差し指を突き立てた。
「マジでアンタのバディ疲れるわ!」
「はい皆さんご存知プラスチック爆弾でございます。今日はこれを使ってフィナーレを迎えたい所存であります」
俺はフリフリとC-4の起爆スイッチを押そうとした。
「いやちょっと待ってくださいや!」
しかし終焉を飾るべく準備を整える俺を阻止しようと、テレポートのPが現れた。彼は勝山先輩。俺の一個上でたしか鬼頭くんと同じく幼稚園児の救護にあたっていたはずだが……?
「テメェの器物破損額は毎回毎回えらい額になってんですわ! これ以上の破壊活動は見過ごせないね!」
そう言って勝山くんは俺からC-4を取り上げた。なるほど? これ以上損害賠償を公安局に払わせるのを阻止させるべく、上司から俺のストッパーをするように命令された、というところか。
「邪魔しないでくれ勝山先輩。ガイアが俺に囁いているんだよ……『壊せ』ってな」
「ダセェし到底理解できんわ! 諦めて足止めに徹しろ! あとは影本がやるだろ」
と、勝山先輩は憤慨している。しかし、しかしだ、誰ももう止められないのだ。
「勝山先輩、爆弾見てみて」
俺はちょいちょいと指先を振ってC-4に注意を促した。勝山先輩は「あ゛あん?」とドスの効いた声で爆弾に目をやる。
ピッ、ピッ、ピッ。
爆弾のスイッチはしっかりと入っていた。起爆まであと40秒。
「は、はぁあぁぁぁ!? 寝子山テメェいつスイッチ入れたぁ!?」
「濡れ衣ですよ。先輩が俺からぶんどるときに誤って押してましたよ? いけないなぁ注意散漫~」
「うぜぇ! じゃなくて、あ、やべ、どうしよ!?」
勝山先輩は想定外の出来事に弱い。例えば出社中に捨て猫に出会ったとか、例えばおばあさんが車椅子のGに乗って爆走していたとか、例えば今とか。俺はそんなチャーミングな勝山先輩が大好きだが、今は仕事中なので心のうちにしまっておいて、勝山先輩からC-4を奪い取る。
「先輩、4番地でお孫さんが助けを求めてましたよ! 早く行ってあげてください!」
「マジか!」
勝山先輩は「こうしちゃおれん!」とテレポートした。だが俺の発言は全てデタラメだ。勝山先輩はまだ36歳だし一人娘さんは9歳だ。孫がいるわけない。
なぜ信じてしまうのか。なぜ疑問に思わないのか。勝山先輩が出世できない原因はここにある。
俺は残り7秒のC-4を電信柱(G)に投げつけた。Gは俺の猛攻により、すでに息絶え絶えと言った様子だが、トドメはしっかりと刺さなければいけない。なぜなら彼奴等は生命力のしぶとさがゴキブリよりも凄まじいのだ。寄生された欠片を一片でも処分し損ねれば、いくらでも再生する。
──Gを1体見たら100体いると思いなさい。世の常識である。
なだらかな曲線を描いて宙を舞うC-4は、電信柱(G)の上半身(?)にコツンと当たり、閃光と共に弾けた。
どぉぉん! 地震のような振動が俺の身体に襲いくる。下から巻き上がる爆風と閃光に目を細めていた俺は、突如、全身が凍りついた感覚に襲われた。
電信柱の破片が真っ直ぐにこちらに向かって飛んでくるのが見えたのだ。
(やばい! 避けるには間に合わない! しかも勝山先輩4番地に移動させちゃったからテレポートしてもらえないぃ!)
俺は咄嗟に思考を巡らせて、己の殉職を悟った。この間わずか0.1秒。なんてことだ。俺が賢いばかりに、最後の最後まで脳は働き続けやがる。
「アデュー」
俺は爆速で眼前に接近する1メートルほどの破片に別れの言葉を吐いて、そっと目を閉じた。
──しかし、いつまで経っても衝撃が身体を襲うことはなかった。
「……ありゃ?」
不審に思って目を開けてみると、俺の目と鼻の先、ちょうど接触する直前の位置で、ふよふよと電信柱の破片が浮いていた。これは……。
「はぁ、はぁぁぁ……、せんぺえマジで後先考えないクズっすわ」
俺はへにゃりと尻餅をついた。そして首を回して背後を振り返る。そこには影本くんがいた。クールな面持ちはどこへやら、汗まみれの汚い顔で、両手を前に突き出すダサいポーズをとって、そこにいた。桜色の髪はボッサボサだし、シャツもジャケットも乱れまくってる。
──でも、カッコいいなぁ。
影本くんは手をゆっくりと下ろす。それに伴い破片もゆっくりと屋上の床にドスンッと音を立てて落ちた。俺も背中のリュックを下ろしてその場にあぐらをかき、へにゃりと影本くんに笑いかけた。
「信じてたぜバディ」
影本くんはゼェゼェと荒い息を吐きながら膝に両手をついて呼吸を整える。そしていくばくか落ち着いてから、背筋を伸ばして俺に人差し指を突き立てた。
「マジでアンタのバディ疲れるわ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる