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過ぎ去る、秋
第二章 ①
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「ぐっ……」
ガシャンと、机の上のコップが倒れた。
けれど、秋人にはそれを気にしている余裕などなかった。
体を苛む痛み。あの不快な男の声が、頭に響く。
『哀れだね。どれだけ抗おうと、意味ないのに』
「黙れっ……」
息荒く、秋人は机の上の物を、片手で薙ぎ払って落とした。
ガシャンガシャンと、音が響く。
割れた破片が、床を覆い尽くした。
『くくく、どこまで、抗えるかな』
楽しそうな男の、あの不気味な笑い声が、頭の中で響く。
いつから、あの男は自分の中に入り込んだ?
秋人は考えるが、思い出せない。
そもそも、思考をあの男に乗っ取られている。
どういうことだ?
『教えてあげるよ。君がもう少し大人しく、僕に従うようになったらね』
声は響く。
だが、あの男が目の前にいるわけでもない。
自分の中に、いるのだ。
精神体?
『あっはっはっは、察しが良い子は嫌いじゃないよ』
だからさっさと、体を明け渡せ。そう告げる声。
「誰がっ……」
抗って、声を上げるものの、その声すら自分の物ではないかのようで。
痛みに汗が、額に滲む。
体を明け渡してしまえば、この痛みはなくなるだろう。わかっているが、そうそう簡単に自分の体を、良いように使われたくはない。
天野という男に、体を明け渡せば、仲間が、章が傷付けられる。
そのくらいの思考はまだ、秋人に残っている。
だが、いつの間にか変わっている居場所。何日間もの間の記憶がない。
多分、勝手に体を使われている。
『抗うだけ、辛いだけなのにね。まぁ、良いよ。君の気が済むまで、抗えば良い』
声はそう告げて、痛みも引いた。
記憶にない部屋。
あの簡素な部屋とは違う。
食事の形跡。
突然浮上した自分の意識に、付いていけずに秋人自身が困惑する。
あの男が自分の体に入ってから、自分自身が浮上したのは、これが初めてなのだろう。けれど、男は別段焦った様子もなかった。
秋人自身の心が残ることは、計算済み。その上で、やっている。
ゾッとした。
これから先、あの男に乗っ取られた自分が起こすことを、自分の中で見ることになるかもしれない。
※
ははははは
コレの体はなかなかに、使い心地が良い。
だが、少し計算外だったな。思いの外、早くコレの意識が取り戻されてしまった。
まぁ、意識が残ることは、これまでの経験上、計算済みだ。
特に焦ることもない。
ゆっくりと、ゆっくりとこの体を、僕に合うようにしていけば良いだけ。
くくくくく
コレは、考えて、焦っている。
自分がどうなるか、この先を知って、焦っている。
焦りは僕に、付け込まれやすくなるだけ。それをコレはわかっていない。
意識を残されたまま、仲間を傷付ける道具にされる。
それをわかって、コレはどうするんだろうか。
抗う手立てを考える?無意味だよ。
もう僕は、コレの中に根を張っている。
僕がコレから出て行くことはない。
コレと僕の力の関係では、僕の方が上だ。だから、抗うことは無意味なのにね。
どのくらい、抗って、暴れて、僕を楽しませてくれるのかな。
ふふふふふふ
無理だよ。僕がコレの中にいることで、コレは誰にも助けを叫べない。
今の現状を、仲間とやらに知らせる手立てなんて、どこにもないんだ。
さっさと自分の無力を知って、僕に抗うのを止めたら良い。
次に僕が表に出たら、もうコレ自身の意識は心の底に封じようか。
心の中で、暴れるだろう。
だが、もう表には出れない。
絶望の中で、僕に体を明け渡せ。
今は自由にしてあげた。でも、本当に自由ではない。
僕の思う通りに、動くしかないんだ。
コレ自身が、仲間から隠れ、逃げる。
あははははは
面白いね。楽しいね。
こんなこと、なかなか無かったから、今は復讐よりも、それを楽しんでしまうよ。
復讐は、コレの体が本当に僕の物になってから、行えば良い。
その間、僕を楽しませるのは、コレ自身なのだから。
今まで、器にこれほど抵抗されたことは、あったかな?なかったかな?
もう思い出せないほど、器を使い捨ててきた。
思い出せないってことは、それほど抵抗もされなかったんだろう。
だからかな、こんなに高揚しているのは。
久しぶりだよ。この高揚感は。
田村に復讐を思い付いて、それを実行した以来だ。
あぁ、でもそれは本当にここ最近だな。
そうだなぁ……。
僕が、初めて器を手にした以来かもしれないね。こんなに楽しいことが待ち受けているのは。
僕は、死期を悟っても、普通に死ぬなんてしなかった。
僕の子どもを、器にして、生きた。
生きて生きて生きて。
あぁ、あんなにも、生きることを望んだのに、つまらない日々を過ごしたものだ。
もっと早く、こういうことが起きていたら、ずっと楽しい日々だったろうに。
でも、生きることを止めなかった。
止める意味がないよ。
僕は自分の意志で、生きて生きて生きたんだから。
そうそう、初めて器にした、僕の子ども。
アレも、僕に無駄な抵抗をしたなぁ。初めから、僕の器にする為に、女に子どもを産ませたのだというのに。
血族であれば、簡単に手にできるだろう、と思ってしただけ。
けど、まぁ。そうだね。血族とかは関係なしに、器は手に入ると気付いてからは、さっさとアレを殺したね。
いらないんだよ。僕に従わない器なんて。
力ある者を器にした方が、僕の力は最大限に引き出せる。
僕との相性なんかも、長い年月でわかるようになった。
力ある者は、無駄に抵抗するけれどね。
それが面白いんだ。自分の力が、自分の意思関係なく使われることに、絶望して、結局は僕に体を明け渡す。
ふふ、あはははは、
ガシャンと、机の上のコップが倒れた。
けれど、秋人にはそれを気にしている余裕などなかった。
体を苛む痛み。あの不快な男の声が、頭に響く。
『哀れだね。どれだけ抗おうと、意味ないのに』
「黙れっ……」
息荒く、秋人は机の上の物を、片手で薙ぎ払って落とした。
ガシャンガシャンと、音が響く。
割れた破片が、床を覆い尽くした。
『くくく、どこまで、抗えるかな』
楽しそうな男の、あの不気味な笑い声が、頭の中で響く。
いつから、あの男は自分の中に入り込んだ?
秋人は考えるが、思い出せない。
そもそも、思考をあの男に乗っ取られている。
どういうことだ?
『教えてあげるよ。君がもう少し大人しく、僕に従うようになったらね』
声は響く。
だが、あの男が目の前にいるわけでもない。
自分の中に、いるのだ。
精神体?
『あっはっはっは、察しが良い子は嫌いじゃないよ』
だからさっさと、体を明け渡せ。そう告げる声。
「誰がっ……」
抗って、声を上げるものの、その声すら自分の物ではないかのようで。
痛みに汗が、額に滲む。
体を明け渡してしまえば、この痛みはなくなるだろう。わかっているが、そうそう簡単に自分の体を、良いように使われたくはない。
天野という男に、体を明け渡せば、仲間が、章が傷付けられる。
そのくらいの思考はまだ、秋人に残っている。
だが、いつの間にか変わっている居場所。何日間もの間の記憶がない。
多分、勝手に体を使われている。
『抗うだけ、辛いだけなのにね。まぁ、良いよ。君の気が済むまで、抗えば良い』
声はそう告げて、痛みも引いた。
記憶にない部屋。
あの簡素な部屋とは違う。
食事の形跡。
突然浮上した自分の意識に、付いていけずに秋人自身が困惑する。
あの男が自分の体に入ってから、自分自身が浮上したのは、これが初めてなのだろう。けれど、男は別段焦った様子もなかった。
秋人自身の心が残ることは、計算済み。その上で、やっている。
ゾッとした。
これから先、あの男に乗っ取られた自分が起こすことを、自分の中で見ることになるかもしれない。
※
ははははは
コレの体はなかなかに、使い心地が良い。
だが、少し計算外だったな。思いの外、早くコレの意識が取り戻されてしまった。
まぁ、意識が残ることは、これまでの経験上、計算済みだ。
特に焦ることもない。
ゆっくりと、ゆっくりとこの体を、僕に合うようにしていけば良いだけ。
くくくくく
コレは、考えて、焦っている。
自分がどうなるか、この先を知って、焦っている。
焦りは僕に、付け込まれやすくなるだけ。それをコレはわかっていない。
意識を残されたまま、仲間を傷付ける道具にされる。
それをわかって、コレはどうするんだろうか。
抗う手立てを考える?無意味だよ。
もう僕は、コレの中に根を張っている。
僕がコレから出て行くことはない。
コレと僕の力の関係では、僕の方が上だ。だから、抗うことは無意味なのにね。
どのくらい、抗って、暴れて、僕を楽しませてくれるのかな。
ふふふふふふ
無理だよ。僕がコレの中にいることで、コレは誰にも助けを叫べない。
今の現状を、仲間とやらに知らせる手立てなんて、どこにもないんだ。
さっさと自分の無力を知って、僕に抗うのを止めたら良い。
次に僕が表に出たら、もうコレ自身の意識は心の底に封じようか。
心の中で、暴れるだろう。
だが、もう表には出れない。
絶望の中で、僕に体を明け渡せ。
今は自由にしてあげた。でも、本当に自由ではない。
僕の思う通りに、動くしかないんだ。
コレ自身が、仲間から隠れ、逃げる。
あははははは
面白いね。楽しいね。
こんなこと、なかなか無かったから、今は復讐よりも、それを楽しんでしまうよ。
復讐は、コレの体が本当に僕の物になってから、行えば良い。
その間、僕を楽しませるのは、コレ自身なのだから。
今まで、器にこれほど抵抗されたことは、あったかな?なかったかな?
もう思い出せないほど、器を使い捨ててきた。
思い出せないってことは、それほど抵抗もされなかったんだろう。
だからかな、こんなに高揚しているのは。
久しぶりだよ。この高揚感は。
田村に復讐を思い付いて、それを実行した以来だ。
あぁ、でもそれは本当にここ最近だな。
そうだなぁ……。
僕が、初めて器を手にした以来かもしれないね。こんなに楽しいことが待ち受けているのは。
僕は、死期を悟っても、普通に死ぬなんてしなかった。
僕の子どもを、器にして、生きた。
生きて生きて生きて。
あぁ、あんなにも、生きることを望んだのに、つまらない日々を過ごしたものだ。
もっと早く、こういうことが起きていたら、ずっと楽しい日々だったろうに。
でも、生きることを止めなかった。
止める意味がないよ。
僕は自分の意志で、生きて生きて生きたんだから。
そうそう、初めて器にした、僕の子ども。
アレも、僕に無駄な抵抗をしたなぁ。初めから、僕の器にする為に、女に子どもを産ませたのだというのに。
血族であれば、簡単に手にできるだろう、と思ってしただけ。
けど、まぁ。そうだね。血族とかは関係なしに、器は手に入ると気付いてからは、さっさとアレを殺したね。
いらないんだよ。僕に従わない器なんて。
力ある者を器にした方が、僕の力は最大限に引き出せる。
僕との相性なんかも、長い年月でわかるようになった。
力ある者は、無駄に抵抗するけれどね。
それが面白いんだ。自分の力が、自分の意思関係なく使われることに、絶望して、結局は僕に体を明け渡す。
ふふ、あはははは、
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