わたしの王子の願いごと

高橋央り

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35.幸せになって欲しい人がいるんだよ!!

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薄暗い病室に入ると、痩せた憲斗の姿があった。

サラサラの黒髪がかなり伸びて、少し痩せていたが、憲斗だった。

ただ、憲斗の体は、幾つもの管を繋げられていた。

深刻な病であることを、美菜は改めて知った。


美菜は、静かに眠っている憲斗を見て、未来予測シミュレーションで見た、治療法も薬もない現実を思い起こす。

ゆっくりと足を進めながら、「憲…斗……」と美菜は言った。

憲斗は静かに眠っている。

美菜はやっと会えた嬉しさと、さらに遠く感じるような、複雑な思いを感じた。



ブオォォォォォォ――――

激しく飛ばしている皇真の車が高速道路を進む。

車内では、皇真が携帯電話に叫んでいる。

「だから、その薬も当然やるから!こっちのも準備をしておいてくれ!儲からないのは分かってる!でも、そこを考えなければもうできるだろ!俺がまた徹夜3週間でやるから!!」

皇真は大きな声で叫ぶ。

「助けたい人がいるんだ!幸せになって欲しい人がいるんだ!!そういう思いでこの会社は…う…」

叫んだ後、皇真は胸に変な感覚を覚えた。

「またか、胃が…」

そう言った瞬間、皇真は一瞬意識が飛ぶ。


「はっ」

意識を戻した皇真は、車の前方に、鹿がいることに気付く。

「うおっ」

ハンドルを切った皇真だったが、胸がまた痛んだ。

「し、心臓か…これ」

キュキュキュィィィィィィィィ―――――――――

ガッゴッゴッ


皇真の車は、鹿を避けた後、ひっくり返った。

ボッ

逆さになった車のガソリンが燃える。

ドォォォォ―――――――――――ーン!!!!

皇真の車は、爆発し炎に包まれた。




病室で泣き崩れる美菜が、憲斗の手に触れると、彼の手が少し動いた。

美菜が顔を上げると、憲斗の目がゆっくりと開く。
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