【R18】御曹司とスパルタ稽古ののち、蜜夜でとろける

鶴れり

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《38》おめかしは女の武器(2)

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 到着したのは誰もが耳にしたことのある有名なホテルだった。
 流石企業の開催するパーティーだ。規模も費用も桁違いである。

 ひかりとともに支度部屋へと移動する。
 ドレスと着物、どちらが良いかと聞かれて、迷いなく着物を選んだ。流石にのっぺりした地味顔に派手なドレスは似合う自信がない。

 ひかりも和装を選び、二人してプロの着付け師に着物を着付けてもらう。
 未婚女性の第一礼装である振袖を着る。成人式以来の装いに心躍らせた。

 瑛美は茜色に檜扇の文様が入った古風で艶やかな着物。ひかりは淡い菜の花色に、色とりどりの小葵文様が入ったカラフルな振袖を着用した。
 瑛美は髪をスッキリとまとめ、ひかりはハーフアップにして可愛らしい印象になった。

「お偉いさんが長々とお話ししているけれど、無視で良いから。あんなつまらない話、誰も聞いちゃいないのだからやめてくれれば良いのに」
「ひかり、そんなこと言っちゃだめだよ。どこで誰が聞いているかわからないのだから」

 顔を見合わせて微笑みながら、会場へと入る。

 いくつものシャンデリアが輝く、おとぎ話の舞踏会のような会場に足を踏み入れる。食事はビュッフェ形式で、一角には豪華な食事が用意されていた。中央には座って食事が出来るように円卓の机と椅子が等間隔で並べられている。
 スーツを着こなした重鎮の風格漂う紳士たちがたくさん集まっていた。

(わぁ……私、振袖を着ていなければ完全に迷い込んだ小娘だったわ……)

 着物とは不思議で、着ているだけで背筋が伸びてピンと胸を張ることができる。あまりにも場違いな状況だったが、気後れせず会場を歩けるのはもはや振袖のお陰といっても過言ではない。

 会場に入るなり、きょろきょろとあたりを見回していたひかりは、目的の人物を見つけたようで、頬を赤らめていた。

(女の私ですら見惚れてしまうくらい、可愛い……っ!)

 好きな人を前にしたひかりはまるで白兎のような可憐さがあって、いじらしく可愛かった。

「くぅ……私がひかりの彼氏になりたいっ!」
「もう、瑛美は何を言ってるの」

 まだパーティーは始まっていないようなので、とりあえず給仕係に飲み物を注文して空いていた席に腰掛ける。

 複数の企業の幹部らが集まったこの催しで、人脈を広げようと皆挨拶まわりに精を出していた。

「ひかりは社長と一緒にいなくても良いの?」
「良いのよ。私が居ても居なくても同じだし、話はつまらないし。義理で参加しているみたいなところもあるしね。昔は結婚相手探しも兼ねていたようだけれど、好きな人としか結婚しないと言ったら諦めてくれたわ」
「社長の娘も大変だね」

 ごくごく一般的な家庭に生まれた瑛美にはわからない悩みだ。
 社長令嬢であるひかりにしかわからない苦労もきっとたくさんあるのだろう。

 ノンアルコールのスパークリングワインでひかりと乾杯をする。ひかりはアルコールの力を借りたいからとシャンパンを飲んでいた。

「ところで、ひかりの好きな人ってどの人?」
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