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《42》ほんの少しの自信(2)大和視点
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清澄大和は倭の国きもの会社の御曹司として生を受け、厳しい教育のもと育った。
有名大学を卒業してからは国家資格である着付け技術士を取得し、元々交流のあったファッションECサイトを運営する今の会社に就職した。
昔と比べ着物の需要はあまり高くなく、ECサイトを活用して販路を広げたい思惑があったのだ。そのノウハウを学ぶ目的で今の会社に入社した。
企画部という会社の核となる部署で働き、定時後は着付け師範として働く日々をもう何年も続けている。
第一印象は『素朴なひと』だった。
「はじめまして。深谷瑛美と申します。これといった特技はありませんが……精一杯努めますのでよろしくお願いいたします」
入社したばかりの瑛美は特出して目立つ女性ではなかったが、見ているだけで落ち着くような……不思議な魅力を持つ女性だった。
この会社は私服勤務であり、ファッションを取り扱う事業でもあるからかおしゃれ好きな社員が多い。流行のアイテムをいち早く身に着けて派手に着飾るものが多い中、瑛美はいつも似たような服装をしていつも同じ髪型、同じメイクだった。
「深谷さん、せっかく私服出勤なんだから、もっといろいろおしゃれしたら良いのに~」
「いえ、私なんて……何を着ても大して変わりませんし。それに自分が着るよりも着飾っている人を見るほうが好きです」
そういって控えめに輪の中に溶け込んでいく瑛美を、いつからか目が離せなくなっていた。
いつも通り十八時に仕事を切り上げて、着付けの仕事へ向かう。着付け教室への入会希望の名簿を見て、『深谷瑛美』の文字を見つけたときは血が燃えるように熱くなった。
「この新しく入会する瑛美さんは俺が担当します」
他の講師が担当することに決まりかけていたところを、半ば強引に奪った。
会社内では周囲の目もあり、なかなか近づくことができなかったけれど、この着付け教室でなら……。
大和は膨れ上がる想いを押さえこんだ。
瑛美からは落ち着く匂いがして、そばにいるだけで癒された。
瑛美のどこが? どうして? と聞かれても、うまく説明できない。例えるならば、幼子がお気に入りのブランケットがないとどうしても眠れない感覚と似通っていると思う。放したくないものに明確な理由なんてない。ただ、それでなければ駄目なのだ。代わりなんてない。
いつまでも変わらない、まるで味噌汁のように心の芯を溶かしていくような温かな存在を、手放したくなかった。もっとそばにいて欲しくなった。
有名大学を卒業してからは国家資格である着付け技術士を取得し、元々交流のあったファッションECサイトを運営する今の会社に就職した。
昔と比べ着物の需要はあまり高くなく、ECサイトを活用して販路を広げたい思惑があったのだ。そのノウハウを学ぶ目的で今の会社に入社した。
企画部という会社の核となる部署で働き、定時後は着付け師範として働く日々をもう何年も続けている。
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「はじめまして。深谷瑛美と申します。これといった特技はありませんが……精一杯努めますのでよろしくお願いいたします」
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「深谷さん、せっかく私服出勤なんだから、もっといろいろおしゃれしたら良いのに~」
「いえ、私なんて……何を着ても大して変わりませんし。それに自分が着るよりも着飾っている人を見るほうが好きです」
そういって控えめに輪の中に溶け込んでいく瑛美を、いつからか目が離せなくなっていた。
いつも通り十八時に仕事を切り上げて、着付けの仕事へ向かう。着付け教室への入会希望の名簿を見て、『深谷瑛美』の文字を見つけたときは血が燃えるように熱くなった。
「この新しく入会する瑛美さんは俺が担当します」
他の講師が担当することに決まりかけていたところを、半ば強引に奪った。
会社内では周囲の目もあり、なかなか近づくことができなかったけれど、この着付け教室でなら……。
大和は膨れ上がる想いを押さえこんだ。
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瑛美のどこが? どうして? と聞かれても、うまく説明できない。例えるならば、幼子がお気に入りのブランケットがないとどうしても眠れない感覚と似通っていると思う。放したくないものに明確な理由なんてない。ただ、それでなければ駄目なのだ。代わりなんてない。
いつまでも変わらない、まるで味噌汁のように心の芯を溶かしていくような温かな存在を、手放したくなかった。もっとそばにいて欲しくなった。
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