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【11】新生活(5)
しおりを挟む暫くの間、メリッサの家で療養させてもらうことになった。酷かった頭痛は睡眠をとると落ち着いたが、長年監禁されていたフラミーニアは圧倒的に体力がなかった。
フラミーニアは、生活していくための営みが如何に大変なのかを痛感した。
身支度を整えるための生活水は川へ行って水を汲み、飲料水は森の中にある湧き水を使用すること。
食糧はその日その日に森へ行って食べられるものを収穫すること。時には川へ釣りに行くこともあるのだそう。
フラミーニアはそんな当たり前のことすら何も知らなかった。水を得ることすら、こんなに大変なことだなんて。
「どうやったら知らないまま生活出来るのよ。とんでもないお嬢様だったの?」
「一応公爵家の娘だから」
「えっ!」
「デレッダ公爵家」
「かなり名門家じゃないの……。でも確かあそこのご令嬢の名前はクラリーチェじゃなかったかしら?」
「それは多分異母姉、かな? 会ったことないからよく分からないけど。私は存在しないことになっていると思う」
「デレッダ公爵の隠し子、ね……。【魔力転移】を持っていたら、確かに有力貴族であれば利用したいと思うのは当然ね」
少ない情報ですぐに正解に辿り着くメリッサの勘が鋭くて「凄いねメリッサ!」と感銘の声を上げる。
「森に住んでいるのに、貴族のこと詳しいんだね」
「まぁ一応王都には住んでいたからね。……あ、この果実は瑞々しくて食感が良いわよ。多めに取っておきましょ」
家周辺の森を散策しながら食糧や薬草を採集する。
いっぱいになった籠を抱え、一度家に戻ることにした。
「それにしても、フランは生活力がなさすぎるわ。体力も知識も少なすぎるし。これから町へ出て一人で暮らすなんて……」
「うん、出来ない」
「はぁ……なんて不出来な子を拾ってしまったの……」
頭を抱えて表情を歪めるメリッサの手を取り、瞳を輝かせた。
「私、自分の為にもメリッサの為にも沢山勉強する! 食べられるものの選定も、生活の知恵も、料理も掃除も! 最初は時間がかかるかもしれないけど……私頑張るから! メリッサの役に立つから!」
「私別にお手伝いさんなんて要らないわ」
「体も鍛える! 熊が来ても槍が降ってもメリッサを守ってみせるから!」
「だからお願い……っ」と藁にもすがる思いで懇願する。
メリッサは諦念し、肺の空気を押し出し視線を逸らしながらポソと呟いた。
「そんな頭じゃあどっちにしろ町にも行けないじゃない。髪が伸びるまでだからね!」
「うん! 大好きメリッサっ!」
「あーだからもうくっつかないで、暑苦しいっ!」
ぎゅうっと抱きついて頬をスリスリと擦り付ける。面倒見が良くて凛としたメリッサが大好きだ。公爵家を飛び出した先でメリッサに出会えた自分はなんて幸運なんだろう。
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