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第七章 君が多々良さんで、僕は
答え合わせの美少女(2)
しおりを挟む「一つずつ、答え合わせをしましょう、小椿さん」
「―――どうぞ?」
穏やかな、声音。
手元にあった本を閉じた小椿さんは、僕の方に向き直った。
「あなたは、人の目が嫌いです」
「それは小手毬が、あなたに言った情報ね。答え合わせというより確認だわ」
「人の目が嫌いすぎて、刺してしまいたいほどなんですよね」
「ええ。今も、あなたのそのどこも見えてそうにない目を潰したいと思ってるわ」
「だけどあなたは優しいから―――人の目じゃなく、自分の目を刺した」
シャープペンで、片方だけ。そう、左目だけが空洞の彼女。
多々良さん。
屋上で初めて多々良さんを見た時、彼女は横を向いていた。左目は見えていなかった。
涙を流していたのは、ただ右目だけ。
僕は、人間の顔を認識できず、パーツを認識できたとしても、個性的な部品まで認識するのは難しい。それが、『完璧』だと思い込んでいた彼女の顔だったらなおさらである。
彼女がしているはずの眼帯は、僕にとって無いに等しい。
「それが、『この町であなたが起こした事件』です」
至って小規模な、だけど、彼女の周りでは大きな事件。
自分で自分の目玉を刺す、女子高校生というのは、一体どんな目で見られるのだろうか。
僕は知らない。
「その事件が僕の耳に入らなかったのは、ただ単にこの町全てに広まるほどの事件じゃなかったからだ。加害者
と被害者が一緒、死人もけが人もゼロな事件。けれど―――あなたの周りはそう見ないでしょう」
聞いただけで脳内に鮮烈な印象を与える小椿さんの事件。
彼女の顔を見れば、一目で事件を起こした人間だと解る。
「周りの人間たちは、あなたことを、見るでしょう。じわじわと噂は伝わり、この町の全員に伝わるほどでなくとも、この町を歩きにくくなる程度には事件の事は広まってしまった」
噂の波及は、早い。
噂の本体を見てしまえば、なお早い。
「人の目が嫌いなあなたは、それが苦痛になり、自殺を思い立った」
「そうね、大正解。話は終わり?」
「いいえ、まだです。あなたは他人に見られることが嫌だから、眼球を刺した。合っていますよね」
高い角度から、小椿さんは僕を見下ろしている。
「可笑しいわね。あなたの良いようだと、順番が違うわよ? 眼を刺して、だから人に見られるのが嫌になって、自殺未遂をしたんしょう? 『人に見られることが嫌だから』が『目を刺した』が理由になるのは可笑しいわ」
頭を横に振り、否定をする。
「貴方は、最初から、人に見られるのが嫌で。完璧な、自分が嫌いだったんだ」
前提としての完璧が、彼女にはあった。
「完璧が、あなたのコンプレックスだった」
次郎丸が、身長。僕がこの目だとすれば、小椿さんは完璧が自身の欠点。
誰にも、見て欲しくないのに、否応なしに、人の眼は、彼女の全身に突き刺さる。外見的なもの、内面的なもの、すべての完璧に向けて。
次郎丸三郎と、小椿さんは、少しだけ似ている。
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