星天の守護者~男女比2:8の世界に転生して魔神の力と魔導バイクで戦うことになりました~

七条慶

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1章

第2話:ホンモノ

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 俺の眼前には、体長2メートル程度もある、黒っぽい二足歩行するトカゲのようなモンスター……としか形容できない、不可思議な生物がいた。

 なにが起きているのか理解できない。
 状況を整理する暇もなかった。

 幸い、鈍い思考とは裏腹に、身体は俊敏だった。
 背中に携えていたらしい大剣を両手でつかみ、一気に抜刀し、その勢いのままトカゲのモンスターの頭上に打ち下ろす。

 剣から伝わってくる、金属的なまでに硬質な感触に奇妙さを感じた。


「グギャッ!?」
 トカゲモンスターはこれまた奇怪な声を口から出すと、そのまま倒れ伏した。


「なんだ、こいつは……」
 あらためて、反射的に俺が倒してしまったトカゲのモンスターを眺める。

 黒く、鈍く光っている皮膚は、ところどころが攻撃的に尖った流線形をしている。
 こんなやつが、自然界に存在するわけない。

 それに、なんだこの大剣。
 シンプルな鋼鉄の大剣は、しっかりした厚みの刀身を持ち、ずっしりとした重量がある。
 刃の煌めきと重さが、を物語っている。

 そんな鉄のカタマリを、俺が両手で軽々と扱っているというのもどういうわけだ?
 マウスとキーボードと会社用の鞄以外持たないせいで、俺の腕はもっと貧弱なはずだ。

 俺の着ている、この服もなんだ?
 黒い軍服だが、随所が金属で補強された――ファンタジックな服装。

 周りも……なんか、都会っぽいけど、まったく知らない風景だ。
 周囲にはめちゃめちゃ人がいるが……大騒ぎになっている。


「レオ隊長!どうされました!?」


 俺に呼びかける女性は、俺の事を「レオ」と呼んでいた。

 レオ?誰だ?

 ……いや、知っている。
 そして、今この場でどうするかも、分かっている。


 俺はここで、皇帝陛下が参加する大式典の警備をしていて、モンスターが襲撃したのだ。


 高層ビルのように巨大な剣状の建物が、夜天を貫くかのようにそびえたっている。
 これが、皇帝が誇示したがった一大事業の〈コスモフォージ〉。

 その、竣工式典に、俺は警備として参加していた……気がする。


「……いや、なんでもない。状況は……どうなってる?」

「皇帝陛下はご無事!私たちはモンスターを鎮圧しろとの事です!」

「……わかった、すまない」


 正直、何もわかっていない。
 ただ、周囲には逃げ惑っている市民らしき人達と、正体不明のモンスター達、それと戦っている兵士達がいるのは事実だ。

 とても現実とは思えない。
 夢かもしれない。

 いや、夢なら――夢でも別に構わない。
 危険な状況で考え事ができるほど悠長でもない。

 剣を構え直し、俺の背後にいる兵士達に号令をかける。


「全員、戦闘態勢!目標、前方の敵モンスター!突撃ィ!」


 号令をかけると同時に、モンスター達の方からこちらに突っ走ってきた。
 俺も剣を振りかぶり、突進した。

 目が六つある戦士……のような、3メートル程の巨躯を持つ、黒い人型のモンスターが正面から走ってくる。

「フンッ!」
 モンスターは刃の長い槍を薙ぎ払った。
 豪快だが、こちらを正確に捉えている一撃だった。

 こんな攻撃を普通に受けられるはずはない。

「ぐっ!」
 とっさに身体ごと回転して大剣を振るい槍に当て、防御する。

 甲高い衝突音が間近で鳴り響き、手から振動が伝わってくる。

「――嘗めるな!」
 回転の勢いをそのままに、踏み込みと同時にもう一回転し、身体に打ち込む。

 体重を乗せた一撃を叩き込み、肩口から胴にかけて剣がめりこんだ。


 一連の戦闘は、気を抜けば即死であろう一瞬、その連続だった。
 だが、こういう戦闘は悪くない。余計なことを考えずに済む。

 モンスターはまだまだいた。

 最初斬ったトカゲのようなモンスターの集団を率いるように、戦士型のモンスターがこちらに走り寄ってくる。

 その光景に闘志が湧き出てくるのは、どうしてなんだろうか?

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