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1章

第11話:魔獣対策会議・後編

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「その騎士を呼んだのは私です」
 俺が何か言う前に、白衣の男が言った。

「なんで呼んだの?ここってムズカシ~話をする場所なのに」

(俺もそう思います)

 その辺りについてはイングリッド女史も知らないらしく、俺も事情を把握していなかった。

「ま、華があっていーけどねぇ」

(……鼻?)

 何を言われているのかわからず、値踏みするような女性の視線を静かに見返した。


「そこの男の部隊が、〈魔獣〉を討伐した部隊のひとつであり、最も武功を掲げた個人でもあるからです」
 白衣の男はさらりと言ってのけた。

 最も武功を掲げた?

(え、マジ?)


「武功とは……ああ、アレか」
 皇帝がすぐに思い当たったらしく、発言を止めてしまった。

(どれだよ!)

 戦闘中は転生直後ということもあって、テンションが上がったり下がったり、頭痛がしたりで大変だったからあんまり覚えていない。

「はい、陛下。10メートルクラスの巨大な〈魔獣〉は、あらゆる武器と魔法を弾き返しました。……この男の攻撃を除いて」


(あー!ね!)
 俺の「武功」とやらをようやく思い出せたはいいが、その話はマズい。

 それは、魔剣の話に直結する。


「レオ少佐、だったな?」
 皇帝陛下が、俺を見据えて、言った。

「はい、陛下」
 それだけ応えるのが精一杯だった。

「今回の働き、見事だった」

「はい、陛下。恐縮です」

「どうやって、あの巨大な化け物を倒して見せたのだ?」

(ぐっ……)

 ど、どうしよう。
 なんて答えればいい?

 正直に言うしか、ないよな?

「それは……」


「陛下、そこの騎士は何もわかっておりません」
 白衣の男性は、ずばりと言った。

(……な)


「なに?」
 皇帝が、白衣の男性を見た。


 なぜ、俺が何もわかっていないことを知ってるんだ?


「そこの騎士は……〈コスモ・プロジェクト〉の一員ですから」


 ズキリと頭が痛む。


『君は誰もが羨む、英雄ということだ。お前という成果は、私たちの正当性を――』



 あいつは。
 あの白衣は。
 まさか。


「なるほど……どおりで強いわけだ」

「はい、陛下」

 皇帝と白衣の男性が、会話を続けている。


「今後の対策についてどうするつもりだ。ノーマン?」

「ええ。こうなれば、『彼』にはこれからぜひともにご協力願おうかと……」

 研究所?協力?
 嫌な予感がする。

 だが、舌が凍り付いたように動かない。
 頭も混乱していた。
 理性的な判断ができない。


「そのお話、ちょーっと待ってもらえませんかねぇ、ノーマンさん?」
 イングリッド女史が口を開いた。

「……なんだ?」

「実はこれから、彼とは打ち合わせの予定があるんですよー。試験段階の新技術について、レビューをもらおうと思ってまして」

「後日でもよいだろう」

「残念ながら、私一人だけじゃなく、プロジェクト全体が停止しちゃうんでねー。そんなワケで、彼と私はこれで失礼しまーす」

「……わかった、いいだろう。本日は解散とする。よろしいですか、陛下?」

「ああ」
 皇帝はどうでもよさそうに応じた。

 イングリッド女史は俺に目配せし、共に会議場を後にした。
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