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第八章 すれ違い三角関係勃発
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俺が眉間に皺を寄せて、怒りの顔で報告書を読んでいるのに対して、高城は飄々としている。
「それについては、婚約が決定したときに散々調べ尽くしたじゃないですか。不愛想で仕事に厳しいところがあっただけで、佐伯さん本人に落ち度はなかったって。しかも捺美さんは佐伯さんの下で働いて良かったって上司に報告していたそうですし」
「じゃあ、なんで密室に入った。パワハラだろ、捺美の仕事に文句を言っていたのではないのか?」
怒っている俺を見て、高城は呆れたように言う。
「仕事の注意なら別にいいでしょう。社長夫人だからって全てが許されるような環境はいかがなものかと俺は思いますけどね」
正論すぎてなにも言い返せない。
過保護で過干渉すぎている自覚はあるのでなおさらだ。
「佐伯って男に関していうと、気にするところはそこじゃないと思いますよ?」
「どういうことだ?」
「不愛想で仕事に厳しいけれど、女性社員の評価は高いのですよ。なんでだと思います?」
「イケメンだからか?」
佐伯の顔はもちろん確認済みだ。たしかに男前だが、顔なら俺だって負けていない。
「顔がいいだけじゃないそうですよ。案外優しいところもあるのだとか」
「優しいなら部署異動願い出ないだろ」
「それが、彼女たちが異動を願い出た本当の理由は、佐伯さんに振られたからだそうですよ」
高城は意地の悪そうな微笑みを浮かべた。
「は? そんな報告なかっただろ」
「最近新たに得た情報です」
「どうして俺に報告しない⁉」
「捺美さんに直接関わるような情報じゃないですからね。そこまで社長の耳には入れないですよ」
まあ、たしかに、これは捺美とは関係のないことだ。佐伯という男が、モテすぎるがあまり不利益を被っていたことなんて不憫だなとは思うが、それが仕事に直接影響している様子はないので、俺が関わるようなことでもない。
「それだけ人気な男性と密室で二人きり。社長、強力なライバルの登場かもしれないっすね」
高城は片目を閉じてとびきりの笑顔を見せたので、俺は口を開けたまま青ざめた。
「……お前、頭いいけど性格悪いよ」
「よく言われます」
高城は飄々とした笑顔で言った。
生意気でムカつくけど憎めない、クソ。
報告書の内容が気になってしまった俺は、捺美が仕事するフロアに行ってみることにした。
なるべく目立たないように、捺美の仕事の邪魔にならないように、そっと仕事ぶりを覗き込もうとするも、すぐに周囲に見つかりざわつき始めた。
必死に静かにしろと、唇に人差し指を当ててジェスチャーで指示する。
そのフロアにいる多くの従業員は俺の存在に気がついたようだが、捺美は仕事に集中しているようで、まだ俺の存在に気がついていない。
遠くから見ても、すごい集中力というのがわかる。完全に周囲に壁を作り、自分の世界に入っている。
それにしても、遠くから見ても捺美は美人だな。
大人びた美人ではなくて、可愛さもある美人だから、万人受けする顔だ。
白い肌に抜群の透明感。昔から人気があったけれど、恋人がいなかったことを考えると、高嶺の花すぎて声がかけられなかったのだろうなと思う。
まあ、これだけ分厚い壁を周囲に作ってきたのなら当然か。俺も声をかけられなかったくらいだしな。
「あの、すみません」
壁からこっそり愛しの妻を見てニヤニヤしていた俺は、急に後ろから話しかけられたので、驚いて振り返った。
背は俺より少し低いくらいで、体格もいい男がそこにいた。地味で朴訥とした雰囲気だが、顔が抜群にいい。目力ある奥二重の瞳で見つめられると、男同士だというのに息を飲む迫力だ。
このイケメンは……。
「佐伯哲治」
俺が小さい声で呟くと、佐伯は軽く頭を下げた。
「社長に名前を覚えていただいていたとは光栄です」
「俺は全社員の顔とフルネームを覚えている」
「さすがです」
なんだ、この男。どうして俺に声をかけた?
高城の言葉が脳裏に浮かび、必要以上に警戒してしまう。
「なんの用だ、俺は可愛い妻を盗み見するのに忙しい」
高城が側にいれば『うわ、キモ』と言われそうだが、あいにく誰も俺にツッコミをできる者はいない。
「ああ、そうですね。工藤さんはずっと見ていたくなる魅力がありますよね」
佐伯は苦笑いするどころか、俺の発言に乗っかってきた。
これは冗談で乗っかってきているのか、天然で言っているのか、どっちだ⁉
「君は捺美の直属の上司だよな?」
「はい、サポートしていただいています」
「ずっと一緒に仕事ができていいな」
思わず本音が漏れる。すると……。
「はい、癒しです」
佐伯は、遠くにいる捺美の姿を、目を細めて見つめながら言った。
まてまてまて。なんだ、これはマウントか⁉
新婚だぞ、俺たち。しかも社長であり、夫である俺にマウントをとるっておかしいだろ。
よし、お前がそうくるなら俺も盛大にマウントをとってやろう。コテンパンにしてやる!
「まあ俺はプライベートの捺美の顔も知っているからな。あいつは素顔も可愛い、凄いだろ」
「元々、化粧薄いですしね」
「捺美は料理も上手い! 肉じゃがなんて絶品だったぞ!」
佐伯は少し悔しそうな表情を浮かべるも、すぐに真顔になった。
「義務で作ってもらってもね。愛があれば別ですが」
佐伯の言葉には棘があった。明らかに俺を攻撃している。
「俺たち夫婦に愛がないって言いたいのか?」
佐伯を睨みつけながら言うと、佐伯は一切臆することなく言い放った。
「はい。逆に聞きますが、あなたたち夫婦に愛はあるのですか?」
「それについては、婚約が決定したときに散々調べ尽くしたじゃないですか。不愛想で仕事に厳しいところがあっただけで、佐伯さん本人に落ち度はなかったって。しかも捺美さんは佐伯さんの下で働いて良かったって上司に報告していたそうですし」
「じゃあ、なんで密室に入った。パワハラだろ、捺美の仕事に文句を言っていたのではないのか?」
怒っている俺を見て、高城は呆れたように言う。
「仕事の注意なら別にいいでしょう。社長夫人だからって全てが許されるような環境はいかがなものかと俺は思いますけどね」
正論すぎてなにも言い返せない。
過保護で過干渉すぎている自覚はあるのでなおさらだ。
「佐伯って男に関していうと、気にするところはそこじゃないと思いますよ?」
「どういうことだ?」
「不愛想で仕事に厳しいけれど、女性社員の評価は高いのですよ。なんでだと思います?」
「イケメンだからか?」
佐伯の顔はもちろん確認済みだ。たしかに男前だが、顔なら俺だって負けていない。
「顔がいいだけじゃないそうですよ。案外優しいところもあるのだとか」
「優しいなら部署異動願い出ないだろ」
「それが、彼女たちが異動を願い出た本当の理由は、佐伯さんに振られたからだそうですよ」
高城は意地の悪そうな微笑みを浮かべた。
「は? そんな報告なかっただろ」
「最近新たに得た情報です」
「どうして俺に報告しない⁉」
「捺美さんに直接関わるような情報じゃないですからね。そこまで社長の耳には入れないですよ」
まあ、たしかに、これは捺美とは関係のないことだ。佐伯という男が、モテすぎるがあまり不利益を被っていたことなんて不憫だなとは思うが、それが仕事に直接影響している様子はないので、俺が関わるようなことでもない。
「それだけ人気な男性と密室で二人きり。社長、強力なライバルの登場かもしれないっすね」
高城は片目を閉じてとびきりの笑顔を見せたので、俺は口を開けたまま青ざめた。
「……お前、頭いいけど性格悪いよ」
「よく言われます」
高城は飄々とした笑顔で言った。
生意気でムカつくけど憎めない、クソ。
報告書の内容が気になってしまった俺は、捺美が仕事するフロアに行ってみることにした。
なるべく目立たないように、捺美の仕事の邪魔にならないように、そっと仕事ぶりを覗き込もうとするも、すぐに周囲に見つかりざわつき始めた。
必死に静かにしろと、唇に人差し指を当ててジェスチャーで指示する。
そのフロアにいる多くの従業員は俺の存在に気がついたようだが、捺美は仕事に集中しているようで、まだ俺の存在に気がついていない。
遠くから見ても、すごい集中力というのがわかる。完全に周囲に壁を作り、自分の世界に入っている。
それにしても、遠くから見ても捺美は美人だな。
大人びた美人ではなくて、可愛さもある美人だから、万人受けする顔だ。
白い肌に抜群の透明感。昔から人気があったけれど、恋人がいなかったことを考えると、高嶺の花すぎて声がかけられなかったのだろうなと思う。
まあ、これだけ分厚い壁を周囲に作ってきたのなら当然か。俺も声をかけられなかったくらいだしな。
「あの、すみません」
壁からこっそり愛しの妻を見てニヤニヤしていた俺は、急に後ろから話しかけられたので、驚いて振り返った。
背は俺より少し低いくらいで、体格もいい男がそこにいた。地味で朴訥とした雰囲気だが、顔が抜群にいい。目力ある奥二重の瞳で見つめられると、男同士だというのに息を飲む迫力だ。
このイケメンは……。
「佐伯哲治」
俺が小さい声で呟くと、佐伯は軽く頭を下げた。
「社長に名前を覚えていただいていたとは光栄です」
「俺は全社員の顔とフルネームを覚えている」
「さすがです」
なんだ、この男。どうして俺に声をかけた?
高城の言葉が脳裏に浮かび、必要以上に警戒してしまう。
「なんの用だ、俺は可愛い妻を盗み見するのに忙しい」
高城が側にいれば『うわ、キモ』と言われそうだが、あいにく誰も俺にツッコミをできる者はいない。
「ああ、そうですね。工藤さんはずっと見ていたくなる魅力がありますよね」
佐伯は苦笑いするどころか、俺の発言に乗っかってきた。
これは冗談で乗っかってきているのか、天然で言っているのか、どっちだ⁉
「君は捺美の直属の上司だよな?」
「はい、サポートしていただいています」
「ずっと一緒に仕事ができていいな」
思わず本音が漏れる。すると……。
「はい、癒しです」
佐伯は、遠くにいる捺美の姿を、目を細めて見つめながら言った。
まてまてまて。なんだ、これはマウントか⁉
新婚だぞ、俺たち。しかも社長であり、夫である俺にマウントをとるっておかしいだろ。
よし、お前がそうくるなら俺も盛大にマウントをとってやろう。コテンパンにしてやる!
「まあ俺はプライベートの捺美の顔も知っているからな。あいつは素顔も可愛い、凄いだろ」
「元々、化粧薄いですしね」
「捺美は料理も上手い! 肉じゃがなんて絶品だったぞ!」
佐伯は少し悔しそうな表情を浮かべるも、すぐに真顔になった。
「義務で作ってもらってもね。愛があれば別ですが」
佐伯の言葉には棘があった。明らかに俺を攻撃している。
「俺たち夫婦に愛がないって言いたいのか?」
佐伯を睨みつけながら言うと、佐伯は一切臆することなく言い放った。
「はい。逆に聞きますが、あなたたち夫婦に愛はあるのですか?」
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