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弟の彼女
2.弟の彼女⑧
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「ん……ふぅ…、ん…っ」
すっかり暗くなった室内。
深く口付けを交わしながら、俺のベッドに弟を横たわらせる。彼は顔をいつもより赤らめて、必死にしがみつきながら俺のキスを受け入れていた。
彼とキスをするのは何日振りだろう。
先程の俺の強引な接吻はともかく、久々のキスに記憶の中の唇の感触と、心の内の燻っていた熱が蘇るのを感じる。
(まるで恋人みたいだな)
そう自分の脳内で笑ってみるが、これから実際にそうなるのだと思って襟を正した。
「兄ちゃん……」
彼の口内を存分に犯して口を離すと、息を荒げて赤い舌を覗かせる淫靡な顔の男がいた。
赤いチェックのネルシャツと、その下の白いTシャツがはだけて、奴の腹が少し覗く。
弟の瞳にはまだ迷いが残っていて、俺との行為をこのまま続けて良いのか疑問を感じているみたいだった。
そんな彼の表情に、俺はまだ孝行に認められていないのだと複雑な気持ちになった。
そんな弟の様子を眺めてると、彼の腕がゆるりと伸びて、
「……兄ちゃんの、おっきくなってる」
そう言われて俺の少し隆起したソレを、布越しに柔く触られる。
自分がいつもよりも興奮している事を自覚して、恥ずかしさを覚えた。
いつもだったら自分の恥ずかしさを誤魔化すように、弟を揶揄ったり、自分の手管で煙に撒いていた。
けれど、弟はこの行為で、俺の愛を証明したがっている。
どうしたらいいか分からず戸惑っていると、弟は黙って身を起こした。
そしてそのまま俺をベッドに押し倒して、ベルトを緩々とほどき始めた。
「…今日は、俺が動く」
覚束ない手元とは対照的に、言葉に滲む意志は固く、弟はゆっくりと俺の下半身を露出させていく。
弟は、緩く勃ち上がった俺のペニスを、ウットリと眺めて、思い出したように自分の口の中に誘った。迎え舌で俺のペニスを頬張る弟に、食卓で同じように食事をする弟を思い出し、下半身に血が巡る。
質量を増した俺のペニスを必死に頬張り、俺を高みへと向かわせる。
彼との行為の中でフェラをさせたことは数えるほどしかなかったが、それでも弟は少しずつコツを掴んだようで、不慣れながらも舌を懸命に動かした。
十分に勃ち上がったので、弟の頭を撫でて、離すように伝える。
ここからは俺が動くつもりだったが、彼はまだ主導権を俺に渡すことはしなかった。
力を込めた手で肩を掴まれ、俺に言外にまだ横になって、と伝えてきた。
弟は顔を赤らめながら、ジーンズとパンツを脱ぎ捨て、下半身を露出させて俺の上に跨った。
彼のペニスも興奮で上向いていて、それをじっと見つめると、弟は恥ずかしそうに眼を逸らした。
そのままいきなり挿れようとしてきたので、流石に「おい」と声を掛けた。
「まだ慣らしてないだろ。ゴムもつけてないし」
弟は、あっと小さく声を上げて、その後ウロウロと視線を動かした。
どうやらローションとコンドームを探しているらしかった。抜けているところが弟らしいと思いつつ、「机の2番目の引き出し」と探し物の在り処を伝える。
弟は、慣れない手付きでローションを指につけて、自分のアナルへ手を動かす。
その間に俺は、コンドームを開封して自分のペニスにゴムを被せた。
「孝行、いいよ」
続きを促すと、弟も準備が出来たようで、俺のペニスをゆっくりと自身のアナルに誘い込む。
挿入する角度が分からないらしく、何度か腰を動かしながら、ペニスの先端を入口に挿れた。
だが、自分から挿入することに恐怖を感じているらしく、弟の顔が段々引きつってくる。
助けを求めるように目で縋ってくるので、彼の腰を掴んで誘導するように尻を下げさせる。
「ん……んんぅ……」
弟は、顔を真っ赤にして、汗を噴き出しながらゆっくりと腰を落としていく。
無造作に切りそろえられた彼の黒い前髪が、汗で額に貼りつく。
最後までようやく挿入出来たところで、弟は浅く呼吸を繰り返してたので、落ち着かせるために深呼吸を促した。
もしかすると二度と相見えなかったかもしれない、弟を抱く光景に、俺自身も体全体に血流がドクドクと流れていくのが分かる。
俺の着ているシャツとセーターが汗で肌に密着している。普段はこの感触を不快に感じてたが、今は何故か心地が良かった。
熱い息を吐いて、上半身に服を着たままの弟が、欲に浮かされた瞳でこちらを向く。
「兄ちゃん……」
動いて、と口元で促されたので、弟の腰を緩く掴んで、自身の腰を上下に揺らした。
最初は緩やかな刺激を受け取っていた弟だったが、段々と明確な快感を得ているようで、恥ずかしそうに顔を背けだした。
普段は俺が、弟を揶揄ったり、翻弄して、彼を絶頂へ向かわせることが殆どだった。
こんなにも緩やかに、じっくりとした愛撫で高みへ向かうのが気恥ずかしいのだろう。
かく言う俺も、気恥ずかしさを誤魔化すために、皮肉を言う性格なので、こんな風に弟と真正面から向き合ってセックスをするのは……とても恥じらいがあった。
恥ずかしさに我慢できなくなったのか、弟は上半身を屈めて俺にキスをした。
何度も繰り返したキスは手慣れたもののようで、俺の口内に滑らかに舌を差し入れてくる。
そんな弟の愛撫に、俺も応える。
俺と弟の唇の間から、どちらとも付かない嬌声が溢れる。
弟が口を離す。恋慕と情欲で浸された彼の瞳が、今一番美しいと思った。
たかゆき、と唾液で濡れた口元を動かし、声を掛ける。
「…動いていいか?」
そんな俺の問いかけに、弟は顔を高揚させながらゆっくり頷いた。
お互い服を脱いで、裸のまま抱き合った。
俺と孝行の肌の感触、汗の湿り気、皮脂の匂いが混ざりあう。
俺たちは兄弟なのに、恋人みたいなことをしている。でもこうなることが、俺が、弟が望んだことなのだ。
深くキスをしながら、ペニスをあてがって弟の内部にゆっくりと入り込む。そのまま腰を動かしてゆるく抽挿した。
中を掠める度に弟の身体がびくりと跳ねるのが、愛おしかった。弟も俺に応えるかのように、必死に舌を絡めてくる。
口を離し、俺の下に横たわる弟の様子を眺める。
顔を真っ赤にしながら、胸を上下させて俺を見つめてくる弟は、腕を俺の首に絡めて引き寄せた。
「兄ちゃん、はやく…」
あまりにも焦れったい愛撫に、待ちきれない様子で俺に続きを促してくる。
なるほど。今までは弟を翻弄して絶頂へ向かわせることで、快感を得ていた。
けれど、彼をこうやって焦らすことで、弟の意志主張をハッキリ浮かび上がらせるのも、中々欲情するな。と、一人勝手に合点をした。
腰を奥へ進め、彼の中の熱をかき混ぜるように挿入を繰り返す。ぐちぐちとローションが掻き乱され、泡立つ卑猥な音が鼓膜を揺らす。
弟は、しばらく荒く細い呼吸を繰り返したかと思うと、ぐっと息を詰めて、それから身体を痙攣させて脱力した。
俺の首に腕を絡めたまま呼吸を整える弟を見やると、いつも絶頂した時と同じ、熱を内包してぼんやりとした目をしていた。
そんな弟の姿を見て、自身の呼吸も荒く浅くなるのを感じる。彼の腰を掴んで強く自身を打ち付けた。弟は、あられもない声を上げて、身を捩った。
俺の名を呼びながら、俺の下で嬌声をあげ続ける孝行の様子に、自身の下腹部に熱が集まるのが分かる。
弟は、俺に腕を絡めながら、息も絶え絶えに言葉を零す。
「好き」
「…俺、兄ちゃんが好きだ……!!」
汗と涙で濡れた顔で、俺を見上げて愛を伝えてくる弟。
そうか。弟はあの日からずっと。
これだけの想いを俺に伝えてきていたのだ。
それは俺と弟が、関係を持った日からではなくとも。
弟が俺の後ろをついてきている事。
俺を意識して、音楽の影響を受けている事。
羨望と嫉妬と尊敬。
その言葉だけでは括れない、大きな感情をあいつは、ずっと俺に伝えていたんだ。
胸のあたりに何かがこみ上げて、その熱を目の前の男に伝えた。
「……俺も、孝行が好きだよ」
そう応えると、弟は目を開いて、それから嬉しそうに微笑んだ。
恥ずかしそうに俺の腰に脚を絡めて、俺に愛おしそうにキスをした。
――許されない場所に足を踏み入れてる。
でも、もうそれは今更なのかもしれない。
俺たちが恋人同士であろうが、そうでなかろうが、純愛であろうが、爛れてようが、
世間から見たら、弟を抱いた時点で指を差されることに変わりはない。
だから、周りの目はもはや関係がなかった。
俺らの中で、お互い気持ちが通じ合えばいい。そのことを自分たちだけが喜べばいい。
世間一般的な祝福の言葉など、俺たち兄弟には最早必要ではないのだ。
そんな祈りを頭の中で木霊させながら、熱い彼の内部に熱を放出した。
部屋の電気を点け、床に散らばった自分の服を着る。
まだベッドに横たわったままの弟にも、彼の服を拾って寄越してやる。
俺も弟の身体も汗と体液でぐしょぐしょなので、両親が帰ってくる前にシャワーを浴びておきたい。
そう考えてると、背後から暖かみが抱きついてきた。
「母さん達帰ってくるよ」
「…まだこうしてたい」
甘えたように俺の身体にすり寄る弟を、素直に可愛い奴だと思う。
女を抱いた事がないまま、俺に骨をうずめて良かったのだろうかと思ったが、心底嬉しそうに俺に抱きつく弟を見て、そんな心配は杞憂なのだと感じた。
「……一緒にシャワー浴びるか?」
そんな俺の誘いに、弟は目を輝かせて頷いた。
幼少期から変わらない、素朴で童顔な弟の顔。
彼の恋慕が乗った瞳が変わらずに俺に向けられていることに、とても安心し嬉しく思った。
弟の頬をゆるく撫で、慈しむようにキスを落とした。
兄の彼女/弟の彼女
完
すっかり暗くなった室内。
深く口付けを交わしながら、俺のベッドに弟を横たわらせる。彼は顔をいつもより赤らめて、必死にしがみつきながら俺のキスを受け入れていた。
彼とキスをするのは何日振りだろう。
先程の俺の強引な接吻はともかく、久々のキスに記憶の中の唇の感触と、心の内の燻っていた熱が蘇るのを感じる。
(まるで恋人みたいだな)
そう自分の脳内で笑ってみるが、これから実際にそうなるのだと思って襟を正した。
「兄ちゃん……」
彼の口内を存分に犯して口を離すと、息を荒げて赤い舌を覗かせる淫靡な顔の男がいた。
赤いチェックのネルシャツと、その下の白いTシャツがはだけて、奴の腹が少し覗く。
弟の瞳にはまだ迷いが残っていて、俺との行為をこのまま続けて良いのか疑問を感じているみたいだった。
そんな彼の表情に、俺はまだ孝行に認められていないのだと複雑な気持ちになった。
そんな弟の様子を眺めてると、彼の腕がゆるりと伸びて、
「……兄ちゃんの、おっきくなってる」
そう言われて俺の少し隆起したソレを、布越しに柔く触られる。
自分がいつもよりも興奮している事を自覚して、恥ずかしさを覚えた。
いつもだったら自分の恥ずかしさを誤魔化すように、弟を揶揄ったり、自分の手管で煙に撒いていた。
けれど、弟はこの行為で、俺の愛を証明したがっている。
どうしたらいいか分からず戸惑っていると、弟は黙って身を起こした。
そしてそのまま俺をベッドに押し倒して、ベルトを緩々とほどき始めた。
「…今日は、俺が動く」
覚束ない手元とは対照的に、言葉に滲む意志は固く、弟はゆっくりと俺の下半身を露出させていく。
弟は、緩く勃ち上がった俺のペニスを、ウットリと眺めて、思い出したように自分の口の中に誘った。迎え舌で俺のペニスを頬張る弟に、食卓で同じように食事をする弟を思い出し、下半身に血が巡る。
質量を増した俺のペニスを必死に頬張り、俺を高みへと向かわせる。
彼との行為の中でフェラをさせたことは数えるほどしかなかったが、それでも弟は少しずつコツを掴んだようで、不慣れながらも舌を懸命に動かした。
十分に勃ち上がったので、弟の頭を撫でて、離すように伝える。
ここからは俺が動くつもりだったが、彼はまだ主導権を俺に渡すことはしなかった。
力を込めた手で肩を掴まれ、俺に言外にまだ横になって、と伝えてきた。
弟は顔を赤らめながら、ジーンズとパンツを脱ぎ捨て、下半身を露出させて俺の上に跨った。
彼のペニスも興奮で上向いていて、それをじっと見つめると、弟は恥ずかしそうに眼を逸らした。
そのままいきなり挿れようとしてきたので、流石に「おい」と声を掛けた。
「まだ慣らしてないだろ。ゴムもつけてないし」
弟は、あっと小さく声を上げて、その後ウロウロと視線を動かした。
どうやらローションとコンドームを探しているらしかった。抜けているところが弟らしいと思いつつ、「机の2番目の引き出し」と探し物の在り処を伝える。
弟は、慣れない手付きでローションを指につけて、自分のアナルへ手を動かす。
その間に俺は、コンドームを開封して自分のペニスにゴムを被せた。
「孝行、いいよ」
続きを促すと、弟も準備が出来たようで、俺のペニスをゆっくりと自身のアナルに誘い込む。
挿入する角度が分からないらしく、何度か腰を動かしながら、ペニスの先端を入口に挿れた。
だが、自分から挿入することに恐怖を感じているらしく、弟の顔が段々引きつってくる。
助けを求めるように目で縋ってくるので、彼の腰を掴んで誘導するように尻を下げさせる。
「ん……んんぅ……」
弟は、顔を真っ赤にして、汗を噴き出しながらゆっくりと腰を落としていく。
無造作に切りそろえられた彼の黒い前髪が、汗で額に貼りつく。
最後までようやく挿入出来たところで、弟は浅く呼吸を繰り返してたので、落ち着かせるために深呼吸を促した。
もしかすると二度と相見えなかったかもしれない、弟を抱く光景に、俺自身も体全体に血流がドクドクと流れていくのが分かる。
俺の着ているシャツとセーターが汗で肌に密着している。普段はこの感触を不快に感じてたが、今は何故か心地が良かった。
熱い息を吐いて、上半身に服を着たままの弟が、欲に浮かされた瞳でこちらを向く。
「兄ちゃん……」
動いて、と口元で促されたので、弟の腰を緩く掴んで、自身の腰を上下に揺らした。
最初は緩やかな刺激を受け取っていた弟だったが、段々と明確な快感を得ているようで、恥ずかしそうに顔を背けだした。
普段は俺が、弟を揶揄ったり、翻弄して、彼を絶頂へ向かわせることが殆どだった。
こんなにも緩やかに、じっくりとした愛撫で高みへ向かうのが気恥ずかしいのだろう。
かく言う俺も、気恥ずかしさを誤魔化すために、皮肉を言う性格なので、こんな風に弟と真正面から向き合ってセックスをするのは……とても恥じらいがあった。
恥ずかしさに我慢できなくなったのか、弟は上半身を屈めて俺にキスをした。
何度も繰り返したキスは手慣れたもののようで、俺の口内に滑らかに舌を差し入れてくる。
そんな弟の愛撫に、俺も応える。
俺と弟の唇の間から、どちらとも付かない嬌声が溢れる。
弟が口を離す。恋慕と情欲で浸された彼の瞳が、今一番美しいと思った。
たかゆき、と唾液で濡れた口元を動かし、声を掛ける。
「…動いていいか?」
そんな俺の問いかけに、弟は顔を高揚させながらゆっくり頷いた。
お互い服を脱いで、裸のまま抱き合った。
俺と孝行の肌の感触、汗の湿り気、皮脂の匂いが混ざりあう。
俺たちは兄弟なのに、恋人みたいなことをしている。でもこうなることが、俺が、弟が望んだことなのだ。
深くキスをしながら、ペニスをあてがって弟の内部にゆっくりと入り込む。そのまま腰を動かしてゆるく抽挿した。
中を掠める度に弟の身体がびくりと跳ねるのが、愛おしかった。弟も俺に応えるかのように、必死に舌を絡めてくる。
口を離し、俺の下に横たわる弟の様子を眺める。
顔を真っ赤にしながら、胸を上下させて俺を見つめてくる弟は、腕を俺の首に絡めて引き寄せた。
「兄ちゃん、はやく…」
あまりにも焦れったい愛撫に、待ちきれない様子で俺に続きを促してくる。
なるほど。今までは弟を翻弄して絶頂へ向かわせることで、快感を得ていた。
けれど、彼をこうやって焦らすことで、弟の意志主張をハッキリ浮かび上がらせるのも、中々欲情するな。と、一人勝手に合点をした。
腰を奥へ進め、彼の中の熱をかき混ぜるように挿入を繰り返す。ぐちぐちとローションが掻き乱され、泡立つ卑猥な音が鼓膜を揺らす。
弟は、しばらく荒く細い呼吸を繰り返したかと思うと、ぐっと息を詰めて、それから身体を痙攣させて脱力した。
俺の首に腕を絡めたまま呼吸を整える弟を見やると、いつも絶頂した時と同じ、熱を内包してぼんやりとした目をしていた。
そんな弟の姿を見て、自身の呼吸も荒く浅くなるのを感じる。彼の腰を掴んで強く自身を打ち付けた。弟は、あられもない声を上げて、身を捩った。
俺の名を呼びながら、俺の下で嬌声をあげ続ける孝行の様子に、自身の下腹部に熱が集まるのが分かる。
弟は、俺に腕を絡めながら、息も絶え絶えに言葉を零す。
「好き」
「…俺、兄ちゃんが好きだ……!!」
汗と涙で濡れた顔で、俺を見上げて愛を伝えてくる弟。
そうか。弟はあの日からずっと。
これだけの想いを俺に伝えてきていたのだ。
それは俺と弟が、関係を持った日からではなくとも。
弟が俺の後ろをついてきている事。
俺を意識して、音楽の影響を受けている事。
羨望と嫉妬と尊敬。
その言葉だけでは括れない、大きな感情をあいつは、ずっと俺に伝えていたんだ。
胸のあたりに何かがこみ上げて、その熱を目の前の男に伝えた。
「……俺も、孝行が好きだよ」
そう応えると、弟は目を開いて、それから嬉しそうに微笑んだ。
恥ずかしそうに俺の腰に脚を絡めて、俺に愛おしそうにキスをした。
――許されない場所に足を踏み入れてる。
でも、もうそれは今更なのかもしれない。
俺たちが恋人同士であろうが、そうでなかろうが、純愛であろうが、爛れてようが、
世間から見たら、弟を抱いた時点で指を差されることに変わりはない。
だから、周りの目はもはや関係がなかった。
俺らの中で、お互い気持ちが通じ合えばいい。そのことを自分たちだけが喜べばいい。
世間一般的な祝福の言葉など、俺たち兄弟には最早必要ではないのだ。
そんな祈りを頭の中で木霊させながら、熱い彼の内部に熱を放出した。
部屋の電気を点け、床に散らばった自分の服を着る。
まだベッドに横たわったままの弟にも、彼の服を拾って寄越してやる。
俺も弟の身体も汗と体液でぐしょぐしょなので、両親が帰ってくる前にシャワーを浴びておきたい。
そう考えてると、背後から暖かみが抱きついてきた。
「母さん達帰ってくるよ」
「…まだこうしてたい」
甘えたように俺の身体にすり寄る弟を、素直に可愛い奴だと思う。
女を抱いた事がないまま、俺に骨をうずめて良かったのだろうかと思ったが、心底嬉しそうに俺に抱きつく弟を見て、そんな心配は杞憂なのだと感じた。
「……一緒にシャワー浴びるか?」
そんな俺の誘いに、弟は目を輝かせて頷いた。
幼少期から変わらない、素朴で童顔な弟の顔。
彼の恋慕が乗った瞳が変わらずに俺に向けられていることに、とても安心し嬉しく思った。
弟の頬をゆるく撫で、慈しむようにキスを落とした。
兄の彼女/弟の彼女
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