悪戯

逢波弦

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悪戯⑵

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孝行にベッドに膝立ちになって壁に手を付くように指示をする。
弟は俺の挿れやすい角度に腰をしならせ、尻を突き上げてきた。無意識なのか、それとも挿れる角度を覚えているからそうしてるのか分からないが、どちらにしろその姿を見て更に煽られる。

自身の屹立を、ゆっくりと彼のアナルに挿し入れた。
弟は背中を弓なりに曲げて、後ろから迫る肉塊と快感を必死に受け止めようとする。壁にもたれるように姿勢を崩して、息を溢しながら俺の名前を微かに呼んだ。

彼の腰を強く掴み、自分のペニスを前後に動かし始める。
内部で臓器を掻き出されるような動きに耐えられないのか、弟は断続的に声を漏らして自分のペニスから精液の残りを吐き出し続けた。
「あ、あっ、う…あっ…」
髪を緩く揺らして肩を震わせながら、感じ入っている弟の姿を見て更に情欲を掻き立てられ、律動が速くなる。

孝行が俺のを後ろで受け入れながら、こちらをチラリと見るようになってきた。
一先ず律動を止め、自身を抜き出し、彼の身体をひっくり返してベッドへ横たわらせる。
弟のすっかり情欲に濡れた瞳とかち合う。
俺の顔が見たいならそう言えばいいのに。

弟に深く口づけ、そのまま自身のペニスを再度彼のアナルに挿し入れる。
彼は口元からくぐもった声を出しながら、いやらしく腰を蠢かして更に奥へと誘う。
今度はすぐには動かず、内部を楽しむようにじっくりと蹂躙する。
同時に彼の舌を絡め、吸い上げてやって離すと、先程の悪戯を覚えたばかりの子供のような顔は欠片もなくなった、淫靡な顔の男がそこにいた。


「孝行くんってかわいいよね」
俺たち兄弟を知る知人や、友達はこぞって孝行をそう褒める。
それは女性以外も、野郎でさえも孝行のことを可愛いと評していた。
物心ついた頃から近くにいて、奴の存在が当たり前だった俺は、その感覚がいまいちピンと来ず、身内以外からはどうやらそう見えるらしい。そう感じていた。

けれど、今。

目の前にいる男は確かに可愛らしかった。
俺の手つきに素直に反応し、善がる孝行が純粋に愛おしかった。
眉を下げて顔を蒸気させながら、欲で濡れた瞳で俺に恋慕を伝えるかのように見つめてくる。

こんな孝行の顔、俺以外、誰も知らない。
誰にも見せたくない。
俺だけが知っている孝行。


緩やかな蹂躙を止め、自身が彼のアナルから抜けるほどに引き、そこから中の肉壁を刮ぐようにペニスで押し入った。
「は、あぁっ…!!!にいちゃ……!!」
そう叫んで反射的に俺を押し返す孝行の手を掴みとり、ベッドの上に押し付ける。
奴の顔をじっとりと見ると、汗を散らして、快楽と情欲で蕩けていた。
触れたら壊れてしまいそうな程に危うく熱で揺れていて、輪郭を無くしてしまいそうな弟の姿を存分に眺めた。

優越感で脳を焼かれながら、更に腰を打ちつける。悲鳴にも似た嬌声が上がり、中が強くうねった。
いつの間にこんなにいやらしくなったんだ?と思うと同時に、自分が弟をこんな風にしたという支配欲にゾクゾクと背中を震わせる。
我ながら性格が悪いと思いながら、口を歪めるのをやめられなかった。

俺の頼みを断れずに関係を持った危うい弟。
決して意思が弱いわけでもなく、ただ兄ちゃんの頼みならと許してしまうその危うさが愛しかった。
頼みだなんて、その場の口実でしか過ぎないのに。

期待で尖りを見せている彼の乳首を、戯れに片手で揉んでやる。
すると弟は身体を捩って、喉元から熱い息のかかった嬌声を引っ張り出した。
孝行が俺の手つきに素直に悦んでいる、そんな弟の様子を見て殊更に愛おしさを感じた。

何度か奥を突いてやると、一際大きく身体を震わせて弟は自身のペニスから透明な液体を吐き出した。その液体が自分の腹にかかったのを眺めながら、ほくそ笑む。
「孝行、相変わらず潮吹くの上手いね」
「……う…あ、あ………にいちゃ……」

未だ痙攣を繰り返す彼の肉壁に構わず、陰茎で内部をえぐる。
声にならない声を上げながら、必死に快感を受け止めようとする彼にこの上ない愛おしさを感じ、腰を動かしながら触れるだけのキスをする。

「好きだよ、孝行」
もう言葉すらも受け取れないほどに乱れている弟に向かって、愛を送る。
俺はつくづく狡い男だなと苦笑いしながら、彼の中に吐精した。





体液で汚れたシーツを洗面台に持っていき、軽く水洗いして洗濯機に放り込む。
振り返るとマットレスの上で横たわりながら、自分を見つめる男と目が合った。

「起きたんだ」
そう声をかけると、弟は少しきまりの悪そうな顔をして、んーとハッキリしない返事をした。
恐らく途中から俺に主導権を渡してしまった事に、恥ずかしさを覚えているのだろう。

この俺らの行為は何度も繰り返されてるというのに、弟は未だに新鮮にそんなそぶりを見せる。
彼の照れた顔に自分の意地の悪さが頭を出して、「昨日凄かったもんな」と更に煽るような言葉をかける。
そんな俺の言葉に弟は眉を寄せて不服そうな顔をしたが、直ぐに素朴な口元から反論の言葉を溢した。

「兄ちゃんも、結構分かりやすいよね」
捻くれてるけど、と付け足して弟はニヤリと笑った。

分かりやすい?と言葉を返すと、弟は「何でもない」と上機嫌にマットレスの上で転がった。
もしかして乗せられていたのは俺のほうだったのか。
彼のささやかな悪戯にまんまと煽られて、必死に腰を振っている自分を想像して苦笑いした。

お気に入りの洋楽を鼻歌で歌う弟の横に腰を下ろし、触れるだけの愛を送った。
 
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