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第15話 揺らぎ始める真実
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リディアに話した事で、彼らは更に動き出した。
ジュリアンは表立たぬよう学園全体を見渡し、さりげなく生徒たちの言動を観察する。
オーリスは昼休みや放課後、談笑の輪に混じりながら噂の発信源を突き止め、軽い冗談を交えてそれとなく警告を入れる。
クラリッサは授業の合間や図書室で、ミレイユの発言や行動を細かく記録し、矛盾をリスト化していった。
一方のオスカーは、表向きは執事としての立場を崩さず、裏ではまるで参謀員のように影のごとき動きで必要な情報を的確に三人へと流していた。
数日もすると、学園の空気は先日以上に、目に見えて変わり始めた。
かつては廊下ですれ違うたびに向けられた嘲笑や好奇の視線が、いまでははっきりと無くなっている。
中には、私に向けてそっと会釈をする者さえいた。
ミレイユは依然として、天真爛漫な笑みを浮かべながら人々の中心にいる。
だが、笑顔の下で見せる一瞬の苛立ちは、以前よりも増えていた。
「リディア、進展があった」
放課後の空き教室。ジュリアンが小声で切り出した。
机の上には、クラリッサがまとめたメモと、オーリスが聞き出した証言の断片が並んでいる。
それらをオスカーが手早く分類し、重要度ごとに振り分けていった。
「この発言と、この出来事の日付が一致しない。嘘をついているか、記憶を改ざんしている可能性が高い」
「それに、噂を流していた生徒のうち二人が、最近はミレイユ嬢に近づかなくなった」
「ミレイユ嬢のでっち上げた作り話しに綻びが出ている」
ジュリアンの言葉に、私は小さく頷いた。
心の中で、少しずつ重たい鎖が外れていく感覚があった。
(もう一人ではない。そう思っていいのかもしれない)
その瞬間、私はジュリアンを真正面から見た。
彼の瞳には、迷いのない確かな光が宿っていた。
その頃。
セドリックは自室で机に向かっていた。
ふと、学園で耳にした噂が脳裏をかすめる。
(ミレイユ嬢が、リディア嬢を妬んで嘘の噂を流した? まさか⋯そうなのか?)
以前なら即座に否定し、ミレイユを守るため憤りを覚えたはずだった。
だが、最近は妙な引っかかりを覚えることが増えていた。
昨日、ミレイユとお茶を飲んでいる時も、最近の様子を尋ねると、ミレイユはか細く声を落とし、長い睫毛を伏せた。
「廊下でリディア様に肩をぶつけられて。とても驚いてしまいました」
セドリックは眉を寄せた。
「肩を? この前は『本を奪われた』と言っていなかったか」
「ああ、それは別の日ですね。殿下、ちゃんと覚えて下さっているのですね。」
ミレイユは柔らかく笑い、そっと彼の手に触れた。
「大丈夫です。わたくし、殿下がそばにいてくだされば」
その瞬間、ほんのわずか、ミレイユの瞳が冷ややかに細められた。
それは、甘える声色とあまりに釣り合わない冷たさだった。
セドリックは言葉を返さず、ただカップの中の紅茶を見つめた。
揺れる琥珀色の水面が、妙に落ち着かない心を映している気がした。
さらに今日。顔見知りの若い貴族から、さりげなくこう告げられた。
「殿下、申し上げにくいのですが学園でのことは、少しご自身の目で確かめられた方がよろしいかと」
その場では取り合わなかったが、言葉は胸の奥に残ったままだ。
夜、ミレイユと短く言葉を交わしたときも、その違和感は薄れなかった。
天真爛漫な笑顔。可憐な声色。
けれどその瞳がほんの一瞬、冷たく細められるのを見逃さなかった。
(俺は何を見落としているんだ?)
セドリックは窓の外を見やった。
月明かりが、静かに彼の迷いを照らしていた。
ジュリアンは表立たぬよう学園全体を見渡し、さりげなく生徒たちの言動を観察する。
オーリスは昼休みや放課後、談笑の輪に混じりながら噂の発信源を突き止め、軽い冗談を交えてそれとなく警告を入れる。
クラリッサは授業の合間や図書室で、ミレイユの発言や行動を細かく記録し、矛盾をリスト化していった。
一方のオスカーは、表向きは執事としての立場を崩さず、裏ではまるで参謀員のように影のごとき動きで必要な情報を的確に三人へと流していた。
数日もすると、学園の空気は先日以上に、目に見えて変わり始めた。
かつては廊下ですれ違うたびに向けられた嘲笑や好奇の視線が、いまでははっきりと無くなっている。
中には、私に向けてそっと会釈をする者さえいた。
ミレイユは依然として、天真爛漫な笑みを浮かべながら人々の中心にいる。
だが、笑顔の下で見せる一瞬の苛立ちは、以前よりも増えていた。
「リディア、進展があった」
放課後の空き教室。ジュリアンが小声で切り出した。
机の上には、クラリッサがまとめたメモと、オーリスが聞き出した証言の断片が並んでいる。
それらをオスカーが手早く分類し、重要度ごとに振り分けていった。
「この発言と、この出来事の日付が一致しない。嘘をついているか、記憶を改ざんしている可能性が高い」
「それに、噂を流していた生徒のうち二人が、最近はミレイユ嬢に近づかなくなった」
「ミレイユ嬢のでっち上げた作り話しに綻びが出ている」
ジュリアンの言葉に、私は小さく頷いた。
心の中で、少しずつ重たい鎖が外れていく感覚があった。
(もう一人ではない。そう思っていいのかもしれない)
その瞬間、私はジュリアンを真正面から見た。
彼の瞳には、迷いのない確かな光が宿っていた。
その頃。
セドリックは自室で机に向かっていた。
ふと、学園で耳にした噂が脳裏をかすめる。
(ミレイユ嬢が、リディア嬢を妬んで嘘の噂を流した? まさか⋯そうなのか?)
以前なら即座に否定し、ミレイユを守るため憤りを覚えたはずだった。
だが、最近は妙な引っかかりを覚えることが増えていた。
昨日、ミレイユとお茶を飲んでいる時も、最近の様子を尋ねると、ミレイユはか細く声を落とし、長い睫毛を伏せた。
「廊下でリディア様に肩をぶつけられて。とても驚いてしまいました」
セドリックは眉を寄せた。
「肩を? この前は『本を奪われた』と言っていなかったか」
「ああ、それは別の日ですね。殿下、ちゃんと覚えて下さっているのですね。」
ミレイユは柔らかく笑い、そっと彼の手に触れた。
「大丈夫です。わたくし、殿下がそばにいてくだされば」
その瞬間、ほんのわずか、ミレイユの瞳が冷ややかに細められた。
それは、甘える声色とあまりに釣り合わない冷たさだった。
セドリックは言葉を返さず、ただカップの中の紅茶を見つめた。
揺れる琥珀色の水面が、妙に落ち着かない心を映している気がした。
さらに今日。顔見知りの若い貴族から、さりげなくこう告げられた。
「殿下、申し上げにくいのですが学園でのことは、少しご自身の目で確かめられた方がよろしいかと」
その場では取り合わなかったが、言葉は胸の奥に残ったままだ。
夜、ミレイユと短く言葉を交わしたときも、その違和感は薄れなかった。
天真爛漫な笑顔。可憐な声色。
けれどその瞳がほんの一瞬、冷たく細められるのを見逃さなかった。
(俺は何を見落としているんだ?)
セドリックは窓の外を見やった。
月明かりが、静かに彼の迷いを照らしていた。
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