余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる 〜お嬢を蝕む毒はすべて、俺のレベルアップの糧でした〜

もふもふ隊

文字の大きさ
5 / 18
第一部:俺(影の大精霊)爆誕

第5話:天命鑑定(ギャンブラーズ・チェック)と影のハッタリ

しおりを挟む
アリスが去って数日。 我が主(お嬢)は、毒をデトックスされたことでみるみる健康を取り戻していた。

「ステータスオープン!」

好奇心に目を輝かせ、セレナが空中に指を走らせる。

セレナ・フォルテス(10歳)

状態: 健康 / 【※大精霊の加護:幼体】 HP: 120 (※生命力微増中) MP: 1,500 (※影の捕食により爆増中)

【固有スキル】

※影の揺り籠(シャドウ・クレイドル): 影の中にいる間、あらゆる状態異常を無効化する。

影の縫い糸(シャドウ・バインド): 対象の影を床に縫い付け、動きを封じる。

「MPが1,500……? お父様は『一般人は2,000くらいあれば超一流だ』って言ってたわ。私、もしかして魔法の天才なのかしら!」

ヤッホー! と両手を上げて喜ぶお嬢。 

(……お嬢、おめでてーな。お前の本来のMPはまだ200そこらだ。残りの1,300は、俺が昨日アリスの影から『お裾分け(捕食)』してもらった余剰分なんだよ……)

お嬢に見えていない「※影の真実」はこうだ。

(影の大精霊:幼体)

レベル: 5 / 同調率: 12% MP: 2,400 保有スキル: 毒素捕食、影渡り、捕食、鑑定、偽装、隠密、影操、魔力還流(MPドレイン・シェア)
 
(……魔力還流。夜、お嬢が寝ている間にこの『余剰分』を吸い取って、俺のMPに変換させてもらうぜ。それがお嬢の体を守る『武装』になるんだからな)

平和な朝。だが、そんな俺のドヤ顔(影だけど)を打ち砕く来客が現れた。

「セレナ。今日からお前に、最高の家庭教師をつけることにしたよ」

親バカ全開の笑顔でグレン公爵が連れてきたのは、いかにも「切れ者」といった風貌の男だった。 元王宮魔導師団、ジーク・バルド。贅肉を削ぎ落としたような、鋭い顎のライン。鉄紺色(アイアンブルー)の髪を一糸乱れぬ七三分けに固め、左目には銀縁のモノクルを装着している。白手袋に包まれた手には、カミソリのような神経質さが漂っていた。

「……こんにちは、お嬢様」

ジークが片眼鏡(モノクル)を光らせ、セレナを見据える。 
 
「こんにちは……」
 
その視線は、グレンの背中に逃げ込むお嬢を通り越し、足元の俺――影の深淵をじりじりと焼くように覗き込んできた。

(…待て、こいつ。鑑定の「質」がそこらの奴らとは違うぞ……!)

「では公爵。僭越ながら、教育方針を決めるため『鑑定』させていただきます。……『真理の片眼鏡(モノクル)』起動」

(……マズい。スキャンされてたまるか!)

俺は咄嗟に【鑑定(アナライズ)】をカウンター気味にぶち込んだ。

ジーク・バルド(45歳)

レベル:52 称号: 真理を穿つ青い瞳 

スキル: 【天命鑑定(ギャンブラーズ・チェック)】 

その他のスキルはレベル格差があり、鑑定できません。
 
備考: 非常に疑り深く、理論に基づかない「違和感」を絶対に無視しない。

(――Lv.52!? ふざけんな、こっちはLv.5だぞ! 誤差なんてレベルじゃねぇ、秒で丸裸にされる!それにこの称号絶対ヤバいやつだ!)

「お嬢様、真理とは常に揺らぐもの…さあ、天命を問いましょう」 ジークのモノクルの中で、ダイスが激しく回転する。

(1だ…それか2よ、来い)

ジークの瞳の中でダイスが高速回転を始める。 俺は死に物狂いで、MPを湯水のように注ぎ込んだ。

【隠密(ステルス)】+【偽装(フェイク)】――二重発動! (情報の表層を塗りつぶせ! 「精霊」を消して、「ゴミ」を被せろ!)

「……公爵。お嬢様の魔力回路は極めて清浄です。それに見たことのないスキルだ。影の縫い糸(シャドウ・バインド): 対象の影を床に縫い付け、動きを封じる」

グレンが影と聞いて、片眉を上げる。
 
「一つしかないスキルですが、素晴らしい才能だ……ですが」

ジークの声が低くなる。モノクルの奥の瞳が、俺の「核心」にピントを合わせ始めた。

「足元の影に……妙な『厚み』を感じますな。おい、もっと光(ランプ)を持ってこい。影の輪郭を鑑定する」

執事がランプを近づけ、セレナの影が色濃く、くっきりと床に映し出される。 ジークの視線と、影の中に潜む俺の「目」が、わずか数センチの距離で重なった。

(……心臓が止まる。お嬢、頼むから一歩も動かないでくれ……!)

その時だった。

「あ、おじちゃん。頭の上に鳥さんが……」

セレナがポツリと呟く。 直後、空から放たれた白い一撃――「鳥のフン」が、ジークの完璧な七三分けのど真ん中に直撃した。

「……っ!? ……チッ!!」

ジークが激しい舌打ちと共にハンカチを取り出し、頭を拭う。 その一瞬。 コンマ数秒、ジークの【深淵鑑定】のピントが、俺の心臓部からズレた。

(――今だっ!! 情報を上書き完了(オーバーライト)!)

【ジークに見せている偽りのステータス】 状態: 『アリスの呪いの残滓』。 時間経過により消滅する無害な魔力の澱(カス)

「……ふぅ。失礼した。……む、影の『厚み』の正体はこれか」

モノクルを拭き直したジークが、安堵したように眉を落とした。 

「呪いの名残ですか。先日の暗殺未遂の影響がまだ残っているようですな。……まあ、お嬢様の体に害はないようです」

「そうか、良かった!」と胸をなでおろす公爵。 

だが、ジークは最後にもう一度だけ、床にべったりと張り付く俺をジロリと睨んだ。

「……『ただのゴミ』にしては、妙に意思があるように感じたが…気のせいですかな」

(……このおっさん、勘が鋭すぎるだろ! 早くどっか行ってくれ!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...