余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる 〜お嬢を蝕む毒はすべて、俺のレベルアップの糧でした〜

もふもふ隊

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ご機嫌よう、クソ……失礼。お清らかな学院の生徒諸君

第9話:『影の伝声(シャドウ・ウィスパー)――初めて重なる二人の鼓動』

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「……ここが私の部屋ね。素敵だわ」

公爵令嬢に与えられた個室は、天井のシャンデリアが眩いばかりの豪華さだった。 だが、その光が強ければ強いほど、俺の居場所である「影」はより深く、色濃く床に刻まれる。

「セレナ様。失礼いたします」

完璧な所作で入ってきたのは執事ジーク。背後には十数個のトランクが、まるで見えない糸で操られる操り人形のように浮遊してついてくる。

「荷運び完了です。隣室に私を配置してくれた公爵への恩返しだと思えば、この程度の『重力制御(グラビティ・コントロール)』、安い御用ですな」

ジークは片眼鏡(モノクル)を直し、鋭い視線を俺(影)に投げた。 

(……頼むぞ、呪いの残滓(相棒)) 

視線だけでそう語るおっさんの顔は、相変わらず無駄にキマっている。

「あ、今日は動いてくれるのね」

お嬢が、ベッドに置いてあった熊のぬいぐるみに微笑む。 俺は影をぬいぐるみに流し込み、ボタンの目を隠すジェスチャーをした。

(違うんだ! お嬢、気づいてくれ。あいつはヤバいんだ!)

俺は鞄の中の歴史書を影の触手でめくり、「初代皇帝:アルカディア」の文字をなぞり、挿絵の王冠を指差した。

「……あ。……カイル殿下のこと?」

お嬢が顎に手を当て、何かを深く考え込む。そして、ふっと柔らかく微笑んだ。

「……ありがとう。私に、警告してくれてるのね」

その言葉が「確信」として俺に届いた瞬間、お嬢の心臓の鼓動が、俺の核と激しく共鳴した。

【同調率上昇:30%→38%】 【新スキル解放:影の伝声(シャドウ・ウィスパー)】 ※主の脳内へ直接、意志を届けることが可能になりました。

(お嬢……ああ、そうだ。あいつはヤベェ。絶対に近づくな)

「――っ!?」

影の底から響く、初めて聞くはずの「誰か」の声。 セレナはおののいて目を見開いたが、すぐに懐かしい温かさを感じたのか、愛おしそうに自分の影を撫でた。

「やっぱり……あなただったのね」

(ああ、そうだ。だが、話の続きは夜食を済ませてからにしようぜ…ところであの陰険執事、マジでおっかねぇよ。色んな意味で)
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